第十三話 照れん子
周りを見渡すと、浴場にはもう他の女性はいなくなっていた。
まあ、もう夜だしな。それも結構深い時間だ。
この世界だと女性が夜一人で出歩いてもなんとかなる場面は多いけど、それでもこんなに遅けりゃ普通は寝ている。
俺は結構寝ていたから目が冴えているけど。
「ねぇ、アンタってすっごく綺麗だよね。でも、胸の方は少し足りてないんじゃない?」
「なんだそれは。喧嘩でも売っているのか?」
ドキドキしているのを隠しつつ、返した。
世の貧乳女性が聞けばブチギレ間違いなしだろうし、返答としては間違ってないだろう。
俺としてはなんとも思わない。
巨乳は嫌いじゃないが、自分につくとしたら面倒臭そうだと思っているからなのか?
それとも、将来巨乳に育つことが確定しているからか?
そもそも今の時点で年齢の割にはそんなに小さいわけではないからだろうか?
よくわからない。
そして、言うだけあってミメレルの胸は相当大きかった。
正直、意識するだけでぶっ飛びそうなほどドキドキしてしまう。
「……というわけで、私が揉んでおっきくしてあげるわ!感謝しなさい!」
「そ、それは迷信……んっ、ひっ……」
ミメレルの突然の行動に脳の理解が追いつかない。
女の子になって、女の子に胸揉まれるとか、異常事態過ぎて混乱してしまう!
「いや〜、女の子ってこういうスキンシップするじゃない?でも、私は触られたくないし触りたくもなかったのよね〜」
漫画やラノベなんかではよくある展開だったが、現実でもあるものなのか……!
衝撃の新事実!
「生まれつき好きになれないから男は嫌いだけど、なんでもないことでキャーキャー喚く、やっぱりよくわからない女という生き物もちょっと嫌いだったの。男よりはかなりマシってだけで。でも、なんかアンタの反応見てるとなんか面白くって触りたくなっちゃったわ。不思議ね」
「不思議ね、じゃ……んうっ!?」
しかし、そろそろやめさせないと、まじで取り返しのつかないことになる。
ミメレルのことは多分好きではある。
イセテン4プレイ時からこの子かわいいな〜とは思っていたし、この世界でも寝起きに顔を近づけられた瞬間にドキドキしてしまった。
そこらの女性にドキドキは抱かないのに。
しかしやっぱりこういうのはもっと段階を踏んでからというか……。
とにかく、本気でやめさせないと……。
「ほんとに、やめて……!」
「またまたぁ、良いではないか、ってやつじゃないの?」
取り合ってくれない!ここは少し傷つけるかもしれないが、この手を使わせてもらおう。
「そういうのじゃないの、なんか怖い……!」
今言っているのは嘘じゃない。頭がチカチカして恐怖感が湧いて出てくる。
「……あ、ごめんね。こういうスキンシップは初めてだからってやりすぎた。……気持ち悪かったよね。本当、ごめんなさい」
急にしゅんっとなって、謝られた。この子は少し人嫌いな面があったから、他人との距離感がわかっていないんだろう。
かなり罪悪感が残る結果になった。
いや本当、気持ち悪いだなんて思ってないです。むしろ、嬉しかったです。
「いいや、気持ち悪いなどとは思っていない。むしろ、少し嬉しかった。……こんなに他人と仲良くなったのは初めてだから」
思わず顔が赤くなる。特に最後の言葉はスラスラと出てきた。
前世には、少ないものの特に仲の良い友人はいたはずなのに。
……あいつ、元気にしてるかな。
しかし、思ってみればキルヒフィード・メルロンディアとしての俺には仲の良い人はいなかった。
もちろん、前回の周回の話だ。
贈り物攻勢によって、一方的に好かれてはいたが、こっちからの他人への好感度ゲージは高くなかった。
ゲーム中では大して気にする要素でもない。
強いて言えば、恋愛するときには自キャラが恋人を愛していないみたいになるのはなんか嫌なので、贈り物の他に時間をかけて仲良くなるくらいだ。
……多分、今の俺の言葉は本音なのだろう。
理解して、一層赤くなった。
「……じゃあ私達、やっぱり同類なのね」
ミメレルの顔も赤くなっていた。
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