7.初めての社交界
前話投稿から結構日にちが経ってしまいました。
これからも更新頻度は遅いかもしれませんがよろしくお願いいたします。読んでくださっている方、ありがとうございます!
今日は若い者達ばかりが集まるパーティーだ。
私はイダとカレルと馬車で別れると一人会場に向かっていった。
入り口で名乗り会場に入ろうとしたが、その入り口で止められてしまう。
「失礼ですが招待状はお持ちですか」
真顔で問いかけられて笑ってしまう。
だって他の人は特に何も見せずに名乗るだけで会場に入っているから。
周りからもくすくすと声が聞こえる。
綺麗な服を頑張って着ても髪の毛があれじゃあバレてしまうに決まってるじゃない、と。
そう、私の赤茶の髪色は平民の色と言われている。
しかし私は優雅に微笑んで招待状を男に渡す。
男は手紙を見ると、恭しく礼をした。
「失礼いたしました。ようこそいらっしゃいました、クライシュテルス侯爵家御令嬢様」
私は胸を張って会場に足を踏み入れる。
先程嗤いながら私を見ていた御令嬢が目を丸くしているから微笑みかけると、その人は顔を赤くして隣の人と話し出した。
中には色とりどり服装の人達で溢れていた。
はあ、凄いわね。でも怯んじゃ駄目。友達を見つけるのが今日のミッションよ。
私は一先ずサンドイッチと飲み物を確保して椅子に座りながら周りを見回す。
最初は繋がりを求めて頑張った方がいいのかと思ったが、お義父様にそんなことは気にしなくて大丈夫だと言われたので本当に気にしないことにした。
てっきり私に喧嘩を売ってくる子息令嬢がいると思い警戒していたが、遠巻きにチラチラ見てくるだけで突っかかってくる人はいなかった。
多分入り口での一悶着から私が誰かが伝わったのだろう。
視線が気にはなるが、嫌ってもいない髪の色をどうしようとも思わないので隠す気はない。
そんなことを思いながら再び周りを見ていると、急に大きな声が会場に響き渡った。
「ちょっと、これラズベリージュースじゃない! 私はクランベリージュースを持ってきてと言ったわよね!」
「申し訳ありません!」
金髪の令嬢がグレーのふわふわ髪の令嬢にジュースをかけていた。
その令嬢は薄いピンクのドレスだったのでジュースの赤が目立ってしまう。
「あら、濃い色になって素敵なドレスになったわよ! 感謝してちょうだい」
「ありっ……ありがとう……っ……ございます……」
鼻を啜りながらお礼を言うとその令嬢は走り去ってしまう。
その光景を金髪令嬢は笑いながら見ていた。
何だあいつ! そんなラズベリーとかクランベリーとか分かるわけないだろ! 嫌なやつだな!
私は最後のサンドイッチを一口で食べ終えると走り去った女の子を追いかけた。
令嬢はトイレに入ったようだ。
中から泣き声が聞こえる。
ドアを開けるとハッと泣いていた女の子が振り返る。目が髪の毛で隠れていてどんな顔かは分からない。
「申し訳ありません、出ていきます……」
本当に出ていこうとするので慌てて引き留める。
「ちょっと待って。そのままじゃ困るでしょ?」
女の子は自分のドレスを見て躊躇い勝ちに頷いた。
「うーん。替えとかがあれば代わりに取ってくるけど……」
女の子は首を横に振る。
「あなたと私体型は似てるわよね? ちょっと待ってて。私替えのドレスが馬車にあるの。取ってくるわ」
「えっ……」
女の子が驚いた声を出したが、早いに越したことはない。
トイレを出るとおかしく思われない中での最速で歩く。
馬車に乗り込むとイダとカレルが驚いている。
「あれ、お嬢様もうパーティーは終わりですか?」
「誰かに何かされたんですか? 俺が行きますよ!」
「ちょっとちょっと待って。私じゃないのよ。ジュースをかけられた子がいてね、替えのドレスを持っていこうと思って取りに来たの」
「えー、酷いですね。こちらでいいですか?」
シンプルなドレスだが汚れているものよりは良いだろう。
「うん、ありがとう」
私はドレスを持ってトイレに戻る。
しかし中には人がおらず、首を傾げる。
「あれ、やっぱり不審者だと思われたのかしら」
思わず独り言を言ってしまうと、その声が聞こえたのかトイレの個室のドアが開いた。
「本当に……持ってきてくださったんですか」
「当たり前じゃない!」
女の子は再び泣き出してしまう。
え、強く言い過ぎた? 怒ってないよー。
「ちょっと泣かないでよ。これ持ってきたよ。着れる?」
女の子は涙を流しながら頷く。
着替えを手伝ってあげ、ドレスがピッタリだったのを見て満足する。
「良かった。ちょうどいいね」
「あの……ありがとうございます」
ガバッと頭を下げる女の子に驚く。貴族の子女はそんな風に誰かにお礼をしないから。
「あ、大丈夫。私ルイーゼ。あなたは?」
「私はエステラ・アフレックと申します。あの、ルイーゼ様はどちらの?」
「ああ、クライシュテルス侯爵家の者です」
「し、失礼しました。そんな方に……私……」
え、急に顔が真っ青に。私何しちゃったのよ。
「えっと、落ち着いて……私何かしちゃった?」
「いえ、いえ。私のような者に慈悲をかけていただきありがとうございます」
「そんなに畏まらないで。ありがとう、あなたいい人ね」
女の子は訳がわからない様で首を傾げている。
私の髪を気にしないでくれるこの子は良い子なんだろう。この子と友達になりたいと思った。
「ねえ、お友達になってくれない?」
「え? お友達……?」
「やっぱり元平民の友達なんて嫌かしら」
「そんなことありません! 私もルイーゼ様とお友達になりたいです」
勢いが凄くて笑ってしまう。
「ありがとう。そうだわ、あなたのドレスにジュースをかけた人は誰なの?」
「あ、あの方はカロリーナ・ヴィンケルマン侯爵令嬢です」
「へー。怖そうだったわね」
「えっと、その、お気の強い方……ですね」
苦笑いする姿にあれ? と思うが問いかける。
「何かやり返した方が良い?」
「いえ! そんなことなさらないでください」
「分かった。じゃあ何もしないわ。ねえ、今度家に遊びに来てよ」
「よろしいんですか?」
「うん。楽しみにしてるわ」
その後は少しエステラとお話しして会場に戻ったら、カロリーナが驚いた顔をしていたが、何も言ってこなかったので無視した。