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4.出会い

 

 あれから二年が経った。

 俺はあの日から新しく仲間を増やすことが怖くなってしまった。

 ジルはそれを喜んでいたが、イダとカレルは寂しそうだった。


 俺はあの後アレクの行方を知る人はいないか探したが手がかりは無かった。


 それでも諦めきれず食料を探しながらアレクを探した。



「ルイ?」


 食料を探し終えて帰ろうとしたとき、急に名前を呼ばれて驚いて振り返る。そこには高そうな服を着た中年の男女が立っていた。


「ルイ!」


 女性が私に抱きついてくる。男性も涙ぐんでいる。


「あんたら誰だよ」


 こんな怪しげな夫婦信用ならない。女性を突き飛ばすと距離を取る。女性が転びそうになったが男性がすぐ支える。


「ごめんなさい。私は貴方の本当の親です。ずっと探していました」


 その言葉に唖然とするが怒りが溢れてきた。


「嘘をつくならもっとマシな嘘にしなよ。俺はあんたらみたいな嘘つきは大嫌いなんだ!」


 去ろうとすると腕を捕まれる。その感触に恐怖が蘇り体が震える。


「すまない。確かに私たちは嘘をついた。だが君を迎えたいというのは本当だ……震えてどうしたんだい?」


 男が手を離すと震えが止まる。男を睨み付けるが気にした素振りは見せない。


「実は私達は娘を亡くしてしまってね。娘に似ている子がいると聞いて是非迎えたいと思ったんだ。……まあ、すぐに信用しろと言っても無理だろう。でももし良ければ我が家を訪ねてきてくれ」


 そう言うと男性は地図とサインを書いた紙を握らせてきた。


 その紙を捨てようとするが男性がとめる。


「今は必要でなくても、いつか必要になるかもしれない。感情で可能性の一つを捨ててはいけないよ」


 そう言うと二人は去っていってしまった。



 俺は仲間のもとに戻った後もその話は誰にもしなかった。俺は別に貴族になんてなりたくない。娘が死んだからって身代わりを求める親の気持ちも分からない。それに本当の話かも分からないし。どんな思惑があるか分からないのに簡単についていくわけがない。だけど何があるか分からないというのは事実だ。

 俺は貰った紙は肌身離さず持っていた。










 俺には神はいないらしい。それから数日後、イダが高熱で起き上がれなくなった。


 今まで軽い熱くらいはあったが、ここまでのは初めてだ。

 俺は母親を思い出して震える体を叱咤した。


 俺が最年長なんだ。俺が何とかしないと。


 カレルやジルは食べ物を探しに言った。だけどイダは今のままでは食事が喉を通らないだろう。


 だから水だけは少しずつ口に含ませる。


 夜になるとイダは虚ろな目をし始めた。カレルはその姿に泣き出してしまい、ジルは黙っている。


 俺は何となくポケットに手を入れた。すると何かカサっという音がした。そこには貴族から貰った紙が入っていた。


 これだ! 何でもっと早く気付かなかったんだよ!


 俺は立ち上がると無我夢中で走り出した。後ろから何か言う声が聞こえるが返事をする時間はない。


 辺りは暗く、人気はない。自分の荒い呼吸音だけが聞こえる。


 そしてどのくらい走っただろう。やっと大きな屋敷の前に着く。

 門を叩いて叫ぶ。


「早く開けてくれ! 話を聞いてくれよ!」


 中から人が出てくるが俺を見ると手を振る。


「汚ないガキだな。早く去ることだな」


 そのまま戻ろうとするので、服を引っ張って紙を見せる。


「これをみろよ! 俺はここの夫婦に言われて来たんだ! 勝手に追い出してみろ、お前首になるぞ」


 男は俺の出した紙を見ると「少し待て」と言って慌てて屋敷に戻っていった。

 時間が惜しくてその場を無意味に歩き続ける。

 暫くすると先程の男より上品な男が来た。


「失礼いたしました。ルイ様ですね? 主人がお待ちです」


 歩いて先導しようとするので舌打ちをする。


「俺は急いでるんだ。先に行くぞ!」


 走り出すと、その男はそれより速くドアまで行きドアを開けた。


 中に飛び入るとそこにはこの前会った夫婦がいた。夫婦が何か言おうとする前に床に手を着く。


「お願いだ。娘でも何でもなるから仲間を助けてくれ! 熱が……すごい熱くて下がらないんだ! 死んじまう!」


「その話は後でしよう。案内できるかい?」


 頷くと、男は周りに馬車の準備と医師を呼ぶように指示した。


 そして俺は使用人とメイドと共に隠れ家に戻った。


「どこ行ってたんだよ!」


 ジルが怒りながら近づいてきて固まる。


「そいつらは誰だよ?」


「イダを助けてもらうんだよ」


 二人がイダに近付こうとするとカレルが立ち塞がる。


「イダをどこに連れてくつもり!? 僕も一緒に行けないならお前らなんかに連れていかせないぞ!」


 カレルを止めようと思ったが、使用人が微笑んで「もちろんご一緒にどうぞ」と言ったため、カレルも大人しく下がった。


 六人とイダで二台の馬車に乗る。


 屋敷に着くとすぐイダは綺麗な部屋に運ばれて医師の診察を受けた。


「うん、薬を飲めば数日で熱は下がると思うよ」


 その言葉を聞いた途端力が抜けて地面に座り込む。


「良かった……」


 カレルはイダの手を握りながら泣いている。ジルは部屋を見回して怪訝な顔をする。


「おい、ルイ。お前何で貴族の知り合いなんているんだよ」



すみません、まだ暫く王子様は出て来なそうです……。

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