新たな仲間
四人での生活にもなれた頃、一人町を歩いていた。最近は他の子たちもご飯を手に入れられるようになったので効率重視でバラバラに探している。ただ、まだイダは心配だからカレルと組ませているが。
いつものパン屋に向かう橋に差し掛かったとき、女の人の叫び声が聞こえた。また誰か襲われているのかと目を細めると女の人が子どもの首を絞めていた。
「ちょっと! 何やってるんだよ!」
慌てて女の人の手を掴むが、女の人の力は強い。
「煩い煩い煩い煩い煩いこいつさえいなければ私は幸せになれたのに、こいつさえいなければっ!」
女の人の目は焦点が合っていない。男の子の顔は真っ青で意識を失いかけている。
このままでは時間がないと少し距離を取って飛び蹴りをする。やっと女の人が手を話して男の子が地面に落ちる。
男の子は咳き込んで息も絶え絶えだ。でも生きてることに安堵したとき、女の人の叫びが聞こえた。
「違う! 私はこの子を愛してた! ちゃんと愛してた! 何てことを……! ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」
そして女の人は止める間もなく橋から飛び降りてしまった。
男の子はやっと少し落ち着いたのか、ふらふらと立ち上がると下を覗きこむ。
私はその子までもが飛び降りてしまうのではないかと腕を掴むが、男の子はそのまま立ち尽くすだけだった。
「ねえ、行くところはある?」
男の子は私を見ると無表情で首を横に振った。
男の子は銀色の髪をしていた。瞳は黒く、そこから感情は見えなかった。
隠れ家に連れて帰り、三人に紹介するとリダとカレルは歓迎して「弟分だ!」と喜んでいた。しかしジルだけは不満な顔をする。
「お前、簡単に拾ってくるといつか守りきれなくなるぞ」
「分かってるよ。でも放っておくなんてできないだろ」
ジルはそれには何も言わず寝てしまう。
その日から暫くは男の子は一切喋らなかった。
だから一方的に自分のことを話した。イダやカレルもこの町での生き方を教えている。
そして、ある日二人でいたときにやっと少しだけ話した。
「アレク」
「えっと、お前の名前?」
アレクは頷いてまた黙る。
「ふーん。いいんじゃない? 格好いいじゃん」
アレクは反応しないが少しだけ耳が赤くなったのを見て微笑ましくなる。
良かった。まだ感情はあるな。
この町ではよく子どもが絶望して何も感じずに道端に座っていることがある。最初のうちは助けようとしていたが、そこまでいってしまった子を引っ張り戻すことはできなかった。
親に殺されかけて、そして目の前で自殺する姿を見た彼はどれほど心に傷を負っただろう。だけど少しでも心が戻ってきているならアレクは大丈夫だ。このままいけばきっと笑ったり怒ったり泣いたりできるようになるだろう。