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急遽歓迎会の日程が決まったと、その日のお茶会で教えてもらった。
歓迎会は妻5人揃ってから、ということだったけど、薔薇の君や鈴蘭の君とはちょくちょくお茶会をしてる。薔薇の君も鈴蘭の君も私に随分気を使ってくれてるのが分かる。ちょっぴり申し訳ないと思いつつも気にかけてくれる人がいるのはとっても嬉しい。
歓迎会の日程が決まったのは、四妃が帰って来たかららしい。四妃は妻でありながら諸国を巡る旅人で、ふらふらしててちっとも捕まらないと鈴蘭の君がプリプリ怒っていた。そんな鈴蘭の君を薔薇の君が宥めるのがお決まりだ。
「四妃はどんな方なんですか?」
「この国はもちろん、周辺国でも有数な商家の出身でな、なかなかに面白い子じゃ。」
薔薇の君はおっとり微笑んで教えてくれた。
「悪い子じゃないんだけど、マイペースというか変わっているというか…。牡丹は私たちの中で1番若くってついつい甘やかしてしまうのよね。アザミくらいかしら?」
鈴蘭の君がため息をつく。
四妃は牡丹の君というらしい。
「へえ…。ところで皆さんおいくつなんです?」
重大な齟齬がありそうなので、年齢を尋ねた。牡丹の君が1番若くて私と同年代なんて、まさか、ね。
薔薇の君も鈴蘭の君も年齢不詳系美女だ。落ち着いてるから年上に感じるけど、肌とか見ると年下に見える。
二人の年齢を聞いてカルチャーショックを受けたわけだけど、二人は私の年齢を聞いて私以上にカルチャーショックを受けていた。異世界の神秘らしい。
ちなみに私が最年長でしたよ。
この場合、若々しいというよりは幼い、とか、年相応の落ち着きがないとか、とにかく悪い意味だとちゃんと分かってるんで。
年齢の話は薔薇の君と鈴蘭の君と私の三人だけの秘密になった。二人のカルチャーショックがいかほどかお分かりいただけるエピソードだ。
歓迎会当日。
そわそわしている私にギレがお土産を持たせてくれた。城下町で1番人気お茶菓子だって。さすが。気が利く。そういうことが頭から抜けていたので本当に助かります。
ありったけの感謝の気持ちを伝えると、ギレは照れ臭そうに鼻の下を擦った。なんだそれ可愛い。
鈴蘭の君が部屋まで迎えに来てくれて、連れ出してくれたのは薔薇の君と会った東屋だった。かの有名ななんとか姫の愛した庭だ。
薔薇の君が手ずからお茶を入れてくれた。
「すまぬな。菫はちと仕事が立て込んでおるらしく、遅れてくると。楽しみにしておったから待っててくれな。」
薔薇の君が眉を下げて微笑む。あまりに綺麗で見惚れてしまった。
クスクスと鈴蘭の君が笑う。
「アザミは可愛いわね。牡丹は、貴方へのプレゼントを取りに行くとどこかへ消えてしまったわ。多分はそのうち来るでしょうから。」
手土産は二人とも喜んでくれた。ギレが用意してくれたことを伝えると、二人ともギレのことを褒めていた。やはりギレはできる侍従らしい。さすがだ。