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目を覚ますとそこは異世界でした。
私は異世界のメルロー国の王様の5番目の妻として召喚されたらしい。
「…というわけでですね、我々としても誠に恐縮ではあるのですが、王がやれって言うものですから、まあやってみるかと異世界人召喚というものに手を出したわけです。いやーまさか成功するとは思ってもおらず、はっはっは。ああ、何も心配なさらなくて大丈夫ですよ。召喚したら最後まで面倒見ると王とは約束しましたからね。」
白髭のいかにも魔法使いって感じの爺さん。
「一応、条件付けはきっちりやったのですよ。異世界なんて連れ去られたら可哀想でしょう?ですから、連れ去ってほしいとその時その瞬間願う者の中で、連れ去られて悲しむ他者がいない者っていう…」
きっちりと七三分けにした若者がそう言った瞬間、爺さんは七三の頭をポカリとはたいた。
「こらっ、そんな風に言ったら傷つくでしょうがっ、」
こそっと言ってるみたいだけど、耳はいい方でしっかり聞こえてしまった。
爺さんに怒られてハッとした顔の七三。
決まり悪そうに言い直した。
「あー、つまりこちらに来たらハッピーになれる人を呼んだってわけですので、あなたの幸せは保証されています。」
まじで?
「まじまじ。大丈夫ですよ。」
爺さんの優しい笑顔と七三の決まり悪そうな顔を私は全面的に信じることにした。
人を信じることが私なりの幸せになるためのルールだ。
あれよあれよと連れていかれ、専属の侍従までつけられた。侍従はギレという名の紅顔の美少年だった。美少年に世話をされるなんて、と若干腰が引けたが、ギレは紅顔というより厚顔の美少年だったので大丈夫そうだった。
異世界の生活は実に快適だった。
異世界なんていったら、困りそうなことはいっぱいあるだろう。言葉に食事に文化にエトセトラ。
しかしなんと、それらは今のところ無問題。
まず言葉だけど、最初から話が通じてたところから察するにそういう魔法があるらしい。読むのも書くのも聞くのも全然問題ない。次に食事。これも問題ない。見たことない料理でスンゴイ色してるけど味は美味しい。何味って聞かれたら難しいけどとりあえず美味しい。そして服とか建物。中国王朝のような日本の平安時代のようなそんな感じ。建物とか和風な感じで服装は中国の歴史ものに出てくるような感じ。皆さんの顔立ちは西洋っぽい人も東洋っぽい人もごちゃ混ぜにいる。あ、あと1つ。この世界は子供は神様からの贈り物で、魔法によって妊娠する。男でも女でも妊娠できる。だから男同士とか女同士とかでも結婚したりする。そう。重要なのが魔法ですよ。魔法がある世界なのだ。なんと私も魔法を使えるかもしれないそうだ。召喚されたときに身体がなんか作り替えられてるらしい。ただ実際に使えるかどうかは別物だってさ。