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 アザミは朝が弱いみたい。

 私はいつもギレが来る前に目が覚めるけど、アザミはギレに起こされるまでずっと寝てる。

 寝ている時のアザミは幼くなる。見た目が、とかじゃなくて物理的に。起きている時のアザミは牡丹くらいだけど、寝ている時は私と同じ年くらいになる。

 最初に気付いたときびっくりしすぎて叫んじゃった。声に驚いたアザミは起きた瞬間元通りのアザミになった。

 あたふたしている私にギレがこっそり教えてくれた。アザミは自覚してないんだって。


 本人に自覚のない魔法は大抵心の病気が原因だって言われてる。だいたい生活に支障が出て自覚して治療をしたりしなかったりするんだけど、アザミの場合寝ている時だから本人は気づかないみたい。

 最初ギレは心配して王様に相談したらしい。王様はギレに少しだけアザミのことを教えてくれた。

「…彼女がこちらに来れたのは本人の意思だけでなく、アザミがいなくなったら悲しむ人が1人もいなかったからだ。それが関係あるのかもしれん。」

 これは私とギレの二人だけの秘密だけど、二人で言い合った。もしアザミがまたどこかに呼ばれたとしても絶対失敗するねって。


 しばらくしてギレがやって来たので、ベッドから降りた。

 ギレのアザミの起こし方は豪快。シーツごとアザミをベッドの上から引き摺り降ろす。

 本当は抱き起こしてあげたいんだけど、腕力がないから仕方ないんだって言ってた。ほんとかな。

「おはよう、百合、ギレ。」

 目をこするアザミはいつもの大人のアザミだ。

「おはよう、アザミ!」

 飛び付くとアザミは危ないなぁって言いながら抱き止めてくれる。


 ある日、アザミは王様に国中回って雨乞い行脚してきなさいって言われたんだって。付いていっていい?って聞いたらアザミは目を輝かせた。「百合と一緒なら楽しいね」だって。うれしい。

 二人でわくわくしながら旅支度をしてたら薔薇ねえさまも牡丹にいさまもやって来て、四人で行くことになった。

 私とアザミだけだったら護衛の人が必要だったんだけど、薔薇ねえさまも牡丹にいさまも行くって分かったら護衛の人は行かなくて大丈夫になったからって本当に四人だけで行くことになった。

  道中、全然危ないことはなかった。何でも牡丹にいさまがそういう魔法を使ってるんだって。さすがにいさま。


 アザミの雨乞いはいつみても面白い。笑っちゃいけないって思うと余計に面白くって宝石がいっぱいできた。持ち運ぶのに荷物になっちゃったからちょっと怒られた。でもだって面白いんだもん。


 ある村で雨乞いが終わると村長さんに引き留められた。面倒ごとの予感がするってアザミが呟く。

 話を聞きにいっていた薔薇ねえさまは戻ってきた時、手に剣を持ってた。

 何でも村長に近くのダンジョンの奥に剣を戻してきてほしいって頼まれたんだって。よく分かんないけどカベルネ国のマッチポンプ祭りでつかうんだって。マッチポンプ祭りってなんだろう。


「薔薇って押しに弱い」

 牡丹にいさまの呟きにアザミもうんうん言ってた。薔薇ねえさま優しいもんね。


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