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 鈴蘭の君は、つい数日前お城を去った。

 幸せそうに笑う鈴蘭の君は、見ているこちらまで幸せにしてくれた。

「アザミ、貴方と会えて本当に良かった。」

 鈴蘭の君にそう言ってもらえるほどの何かをした覚えがないので少々居心地が悪い。

 そんな私に鈴蘭の君はコロコロと笑う。

「ふふふ、それを教えてあげられるのは私じゃなかったけれど。リリー姫のこと、よろしくね。」

 姉貴分の鈴蘭の君にまで頼まれちゃ、やるしかない。

「もちろん。鈴蘭の君もお元気で。」

 ちなみに鈴蘭の名前を贈ったのは王様なんだって。洒落臭い。


 リリー姫と過ごすうちに、リリー姫は少しずつ笑ってくれるようになった。笑うっていっても口端をあげるだけのガチガチのやつだけど。

 日々リリー姫は気を張りつめて頑張っている。一緒にいるとこっちまで息苦しくなるようなそんな頑張り方だ。それでもリリー姫の側に居るのは苦じゃなかった。それに、この子にとっては私が藁な気がした。

 リリー姫のダブルスコア(どころか下手すればトリプル)いっている大人としてはなんとかしてあげたいところだけど、何をしたらいいのかさっぱりわからない。頼りになる薔薇の君も菫の君も戦後処理が忙しいらしく、しばらく会っていない。牡丹の君はまた旅に出た。


 ギレに聞いてみた。ギレはためらいつつも教えてくれた。

「…六妃様は眠れていないみたいです。魘されているようだと侍従が心配しておりました。」

 眠れないのか。

 悪夢とか?ストレス?

「どうしたらいいかな。ギレだったらどうする?どうされたい?」

「…私が幼い頃、怖い夢を見ると母が一緒に寝てくれました。」

「なるほど。」

 そういう経験がないので分からなかった。

 私が眠ろうが眠れなかろうが気にかけてくれる人なんていなかったしな。


「リリー、一緒に寝よー。」

 夕食を食べ終わったあと、いつもだったら解散するところリリー姫に話しかける。

 少し驚いた顔をしつつもこっくりと頷くリリー姫。

 心なしか嬉しそうな気がする。可愛い。


 ギレから聞いていた通り、夜中リリー姫はずっとうなされていた。

 小さな子供が声もあげずに泣いているようで可哀想で仕方なかった。

 抱き寄せるとリリー姫は恐る恐る私の服を掴んだ。

 私の服の端の端を遠慮がちに、それでも手放すまいとしがみ付く。

 せめて私が浮き輪だったらなぁ。ごめんねリリー姫。


 何日か続いた頃、リリー姫は話をしてくれた。

 リリー姫自身の話だ。


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