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 鈴蘭の君がお城を出てお嫁に行くのはちょっぴり寂しいけどそれ以上に嬉しい。鈴蘭の君が幸せそうに笑うから。何かお祝いにプレゼントをあげたいな。その話を牡丹の君にすると、リリー姫と一緒に街へ連れていってくれた。旅人の牡丹の君はさすがよく慣れている。

 城下町は思ったよりも貧しい様子で、少しびっくりしたが、それでも人々の顔は明るくて良い雰囲気だった。

「この国は生まれ変わったところだからな。」

 牡丹の君の言葉が意味深だ。

 鈴蘭の君が好きだと言っていたお菓子と綺麗なブローチを見つけた。ちなみにお金は王様が出してくれた。王様は今でも苦手だけど嫌な人じゃないことはもう分かってる。

 リリー姫は私の手をしっかりと掴み、それでもキョロキョロと辺りを見回している。可愛いなぁ。牡丹の君もリリー姫を妹のように可愛がっている。


 ぶらぶらと街を歩いていると、人だかりが出来ていた。何やら劇が始まるみたい。

「行ってみるか?」

 牡丹の君はリリー姫に問いかける。

 リリー姫はしばらく戸惑った後、それから意を決したように頷いた。

 劇を見るくらいで何をそんな構えることがあるんだろうか。


 劇の内容はこうだ。

 1人の奴隷少年が花街に売られた幼馴染みの女の子にもう一度会うために立身出世を目指し、やがて悲惨な境遇におかれているその女の子を助けるために世の中の腐敗と戦い、最中で味方を得て、やがて腐敗の根元である王を討ち平和をもたらすという話だ。奴隷だったけれど実は建国王の血をひいていたことが判明するあたりがちょっと笑えた。そこで笑ってるのは自分だけだったけど。


「ね、今の話ってさ、」

 牡丹の君に聞くと教えてくれた。

「ああ、王様の話だ。幼馴染みの女の子が薔薇の君。あの二人にあんなロマンスがあったとは思えないがな。」

「少し前まで、この国は内乱状態だった。それを抑え込んだ王様は国内の不満を反らすために戦争を吹っ掛けた。その一つがリリー姫の国だ。」


 そうか。だからリリー姫は。

 小さな身体でどれだけ背負い込んでいるんだろうか。

 リリー姫が可哀想で仕方なかった。


 それから牡丹の君は町の中心部に連れていってくれた。

 そこには王様そっくりの銅像があった。てっきり王様本人かと思ったけど「偉大なるフラン王」と書いてあった。

「フラン王って?」

「建国王だ。王様にそっくりだろ。だから王様は建国王の血をひいている、と言われてる。」

 なるほど。

「それに、王様はフラン王と同じく神様に愛されているんだ。」

「へえ?」

「王様のやることなすこと全て上手くいく。じゃなければ奴隷の少年が王にまでなれるわけないだろう。」

 そういうこと。ご都合主義には根拠があるらしい。根拠が神様っていうのは私にはあんまりピンとこないけど。

「だから、アザミがこの世界に来たのもきっと意味がある。リリー姫がこの国へ来たことも。」

 牡丹の君の言葉にリリー姫は弾かれたように顔をあげた。

「…だから、あまり思い詰めるな。」

 リリー姫は小さく頷いた。

 私がリリー姫と繋いでる手にそっと力をこめると、リリー姫も握り返してくれた。



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