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「お兄さま、大きくなったら私と結婚してくださいね。」
無邪気に微笑む可愛いクリスタ。
何よりも大切だった。
「クリスタ様、」
「お兄さまったら、もうっ。二人のときはクリスタって呼んでって約束したのに。」
頬を膨らませるクリスタが可愛くてわざと呼んだって言ったらどんな顔するだろう。
「ごめん、クリスタ。大きくなったらお嫁さんに来てくれる?」
「うんっ」
叶わない約束だと分かっていたけれど、願わずにはいられなかった。
クリスタはこの国有数の名家のお姫さまだ。年が近いということでクリスタの遊び相手に選ばれた傍系の自分とは流れている血が違う。いつかクリスタはクリスタに相応しい人物の元へ嫁ぎ幸せになるのだ。なるはずだった。
しかし、王が乱心し全てが変わってしまった。王は弑され新たな王が立った。前王を擁立していたナウリツ家当主であるクリスタのお父上は処刑され、お母上は自決した。クリスタの行く末など考えたくもない。
「クリスタっ!」
お母上の亡骸を抱き締めて呆然としているクリスタを連れて逃げ出した。
新王はクリスタを見逃すつもりはないようで次々に追っ手がかけられた。
武に自信はあったが、所詮多勢に無勢。
いよいよ捕まってしまった。
間近で見る新王は随分若い男だった。
「…どうか、クリスタだけは」
額付いて頼み込む。
「…散々部下を殺されているんだ。何故お前の頼みを聞いてやらねばならん?」
絶望したが、王は言葉を続けた。
「だがまあ、ナウリツ家の血は惜しい。余程尊いらしいしな。…クリスタ・デュ・ナウリツ。お前に選択肢を与えよう。お前が俺の元へ来るならこの小僧を今は見逃してやろう。拒むなら二人とも殺す。どうする?」
クリスタは俺が口を挟む間もなく、平伏した。
「王様、寛大なお心感謝いたします。誠心誠意お仕えいたします。」
「クリスタっ、」
「お兄さま。クリスタはお兄さまが生きていてくれるだけで幸せなのです。」
微笑むクリスタ。
小さくて可愛かったクリスタ。
いつの間にそんな風に笑うようになった。
「…ふん。どこかの国を落としてきたら褒美くらい考えてやる。」
王の言葉に縋り付いた。
「…っていうようなことがあったと思うんだよねー。」
ギレに鈴蘭の君が下賜されることを伝えたついでにこうだったんじゃないかっていう妄想話を伝えたところ、
「千里眼ももってるんですか…。」
と呆気にとられた様子だった。
なかなかいい線いってるみたい。
呆けてるギレが面白いので、否定しないでいたら次の日から千里眼持ちになってた。やべ。