30話ver.Dark Side 早くおうち帰りたい
前回のあらすじ:
(一時的に)さらば、異世界。そしてただいま...ここどこ?
「どこだここーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
辺りをいくら見回しても英語!英語!英語! どう考えても日本じゃない!
車もほとんど黄色い! タクシーだ!
と、いうことは、アメリカだーーーーーーー!!!!
どうすればいいかな......よし! ミャクドニャルドに行くぞ!
困ったらあそこのハンバーガーを食べればよし。・・・どこにある?
―ハロー、インサン。オコマリノヨウダネ。タスケテアゲマショウカ?
何でカタコトなんだよ。
―だって外国だし? 私この世界に来るの初めてだし?
はぁ。まあいいか。
―そうそう。それでいいのよ。
んじゃ、助けてもらえます?
―はいよー。じゃあ今から案内する場所に行ってね。
了解。
注文を済ませて待っているのだが、注文はとても苦戦した。
ドリンクの種類もたくさんあってめっちゃ迷った。
結局コーラにしたけれども。
「Next number is 17」
あ、俺だ。
「Thank you」
「No problem」
「Have a nice day!」
「You too!」
基本的な英会話を身に着けておいて助かった。
逆に言えば基本的な英語しかわからない。
ちなみにお会計はなぜか持っていた財布に何故かドルが入っていたからそれで払った。
ふむ、少しパティが分厚いね。おいしそう。
席を探して歩いていると何やら見たことある人が.....
「やっぱり本場のハンバーガーは格別だな。いくらでも食える。おや? あそこにいるのは」
やっぱりカシさんだ。
「インじゃないか。ここにいれば合流できると思っていたが本当にできるとはな」
「カシさんもここに転送されたんですか?」
「私はみんなが転送された後、タイミングをずらしていく予定だったのだが、何やらちょっとした手違いでインがアメリカに飛ばされたと聞いたから私もこっちに来たんだよ。あ、私がやらかしてこうなったわけではないから私を責めるなよ」
あっちの手違いか。
「政府に伝えてあっちに渡る許可を申請しているのだが、どうも長引くらしくてな」
「はぁ」
「だから今日一日は観光をしよう。準備が整い次第、あっちに渡るぞ。とりあえず座れ」
「あ、はい。失礼します」
「食べないのか? インもハンバーガー買ったのだろう。冷めないうちに食べないと損だぞ?」
「・・・そうですね。いただきます」
もうこの時点で波乱の展開だ。
・・・美味しい。「どこだここーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
辺りをいくら見回しても英語!英語!英語! どう考えても日本じゃない!
車もほとんど黄色い! タクシーだ!
と、いうことは、アメリカだーーーーーーー!!!!
どうすればいいかな......よし! ミャクドニャルドに行くぞ!
困ったらあそこのハンバーガーを食べればよし。・・・どこにある?
―ハロー、インサン。オコマリノヨウダネ。タスケテアゲマショウカ?
何でカタコトなんだよ。
―だって外国だし? 私この世界に来るの初めてだし?
はぁ。まあいいか。
―そうそう。それでいいのよ。
んじゃ、助けてもらえます?
―はいよー。じゃあ今から案内する場所に行ってね。
了解。
注文を済ませて待っているのだが、注文はとても苦戦した。
ドリンクの種類もたくさんあってめっちゃ迷った。
結局コーラにしたけれども。
「Next number is 17」
あ、俺だ。
「Thank you」
「No problem」
「Have a nice day!」
「You too!」
基本的な英会話を身に着けておいて助かった。
逆に言えば基本的な英語しかわからない。
ちなみにお会計はなぜか持っていた財布に何故かドルが入っていたからそれで払った。
ふむ、少しパティが分厚いね。おいしそう。
席を探して歩いていると何やら見たことある人が.....
「やっぱり本場のハンバーガーは格別だな。いくらでも食える。おや? あそこにいるのは」
やっぱりカシさんだ。
「インじゃないか。ここにいれば合流できると思っていたが本当にできるとはな」
「カシさんもここに転送されたんですか?」
「私はみんなが転送された後、タイミングをずらしていく予定だったのだが、何やらちょっとした手違いでインがアメリカに飛ばされたと聞いたから私もこっちに来たんだよ。あ、私がやらかしてこうなったわけではないから私を責めるなよ」
あっちの手違いか。
「政府に伝えてあっちに渡る許可を申請しているのだが、どうも長引くらしくてな」
「はぁ」
「だから今日一日は観光をしよう。準備が整い次第、あっちに渡るぞ。とりあえず座れ」
「あ、はい。失礼します」
「食べないのか? インもハンバーガー買ったのだろう。冷めないうちに食べないと損だぞ?」
「・・・そうですね。いただきます」
もうこの時点で波乱の展開だ。
・・・美味しい。でも、LLセットにするんじゃなかったな...多すぎる。
そのあとは、アメリカの各地の観光スポットを巡りまくってお土産もたくさん買った。
幸い、スキルが封印されていなかったので荷物はかさばらなかった。
「次どこ行きます」
「あっちの滝に行こう。すごくきれいらしいぞ」
~夕方ごろ~
「いやー、一通りめぐって疲れたな」
「ですね」
「ん? 電話だ。少し待っていてくれ」
「はい」
何の電話なんだろう?
まあいいや。コーヒー買ってきたからのんびり飲んで待ってようっと。
「もしもし。・・・はいはい。了解です。どこか経由してほしい場所はありますか? ・・・了解です。失礼します」
お、終わった。
「イン。わたる準備が整ったらしい。行くぞ」
「は、はい」
突然だこと。楽しかったなー。
「ミャウ」
「ん?」
足にすりすりしている猫が。いつの間に?
「おや、猫になつかれたか。・・・ほう。イン、連れて帰ってくれ」
「へ? 大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。むしろ連れて帰らないとこやつがかわいそうだ」
「?」
どういうことだ?
『兄さん』
お、闇。
『今そっちに車行かせてるから待ってて』
くるま?
『この付近に大きな駅あるでしょ』
あるね。
『そこに行って三番線で待ってて』
りょ、了解。
「ねえ猫。君は俺たちについていきたいの?」
「コク」
言葉がわかってる?
「おいで」
そういった瞬間、猫が飛び込んできて体勢を崩した。
あまりにも勢いがすごかった。
そして理由はわからないけど自力で起き上がれない。いくら体を起こそうとしても起きない。
「ははは。相当好かれたようだな。ほら、行くぞ」
「行くのはいいですけど、まずは助けてもらえます?」
「ガンバレ!」
「カシさん!?」
グランド・セントラル駅にきて指定された112番線で待っていると、
「まもなく、三番線に列車が参ります。一般のお客様はご乗車になれませんのでご注意ください」
なぜ日本語?
「。p@、」;:@@@”#$&’$%#$%”#。@。:。:」;「@”#$”&%#$%23.・:」」:。」・。:」。・@p;。・:。5”#%$#=)=&)%=#$6365」
しっかり英語が流れた。何言ってるかわからん。
と言って、来たのはまさかの風爽。なんでやねん。
うすうす感づいてはいたけれども。
「やっほー、陰」
「・・・なぜ????」
おっと、思わず口から出てしまった。
「私が来たらいけなかった?」
「いや、そういう意味ではなくてですね。あまりにも〔風爽=闇〕ていうイメージが染みついていてですね」
列車から出てきたのはまさかの陽だった。
お土産全部出す羽目になりそう.....
「あら? 猫? この子どうしたの?」
「なんか懐いてたから連れて行こうかなって」
「大丈夫なんですか?」
「ああ、もし何かあっても私じゃなくてジャーラが何とかしてくれるだろ」
「まさかの丸投げ」
「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ」
長い長い。
これ発車ベルか。早く乗らなきゃ。
『ドア閉めちゃいますよー』
風爽に取り付けられていたスピーカーからアランの声が。運転はアランが担当しているのか。
風爽は完全自動ではない。誰かしらが操作に入らなければいけない。人である必要はなく、シスたちは専用の制御装置とリンクして運転することができる。
そしていろんな場所にスピーカーが設置されており、そこからしゃべることができたりもちろんマスターと会話することもできる。マスター以外ともまあ喋れる。見知らぬ人に話しかけると大変なことになる。なぜかは察してください。
それはいいとして車内に乗り込んで俺は個室にダッシュした。
荷物を全て置き、疲れて汗をかいたので着替えを持ってシャワー室に駆け込んだ。
駆け込む際、俺は重要なものを持って行き忘れた。
「ふう、やっぱりシャワーはスッキリするね。あれ、スマホどこにやったっけ? 部屋に忘れたか。もう戻るしいいや。あ、その前にトイレよろっと」
トイレに寄った後、部屋に戻ると目を疑うような光景があった。
「What!?」
なんと、拾った猫がスマホのパスワードを突破して猫カフェの動画を見ていた。
なぜパスワードを突破できた? そもそもなぜスマホを完璧に扱ってるんだ?
「ミャ? ミャウ! ニャーニャー」
俺が入ってきたことに気が付くとこっちに来て足に頬をスリスリしてきた。
んーーーーーーーーーーーーー???????????
本当に猫なのか?
猫になったスパイなのでは?
と思って創造魔法でありとあらゆるスキャンをしたけれど結局は猫だった。
本当に猫だった。偽装している気配もない。猫。
助けてくれ。魔法学的には何の変哲もない。
・・・まあいいやぁ。
それからいつもの山盛り定食を食べたりみんな(陰&陽&カシ&シス)で麻雀をしたりしていた。
「ロン!」
「むー、陰強い~」
「ドラ6!? しかも親!? お、恐ろしい」
少し経つとアメリカを抜け出し太平洋を走行し始めた。海面スレスレを走っていると窓から入ってくる風がとても心地よい。
太平洋を走り始めてから数分後、速度をどんどん上げていった。
アメリカ内では最高で300km/hしか出せなかったからアランも退屈だったんでしょう。
300で退屈は感覚狂ってる気がするけど。
『こんにちはー』
・・・だれ? 突然話しかけてきて何事?
『紹介してなかったんかい。まあいいわ。私は女神サーよ。呼び捨てしてもらって構わないわ』
女神サーか。なんかリーナと語呂が似ているような。
『そんなの私の名前とリーナの名前を付けた人が同じだからしょうがないね』
あ、そうなんだ。
『そうよ。もう少しネーミングセンスを鍛えてほしいところだけれど、それは今関係ないから置いておくよ』
それで何の御用で?
『深い意味はないわ。ただ喋りたかっただけ。それと謝罪もしないといけないからね』
謝罪?
『転送位置を間違えてしまって申し訳ありませんでしたってね。私がやったわけじゃないし悪いのはジャーラなんだけどね。なんで私が伝言しなきゃなのかしら』
お辛そうですね。
『辛いわよ。まあ私としては一度は話したかったからいいのだけれども』
さようですか。
『じゃあそんな感じで。じゃーね!』
・・・神出鬼没とはこのことか。神だし。鬼da
『なんか言った?』
いえ、何も?
『あっそう。なんかバカにされた気がしたけど気のせい?』
気のせい気のせい。
・・・(´・ω・)=3 フゥ~
―お人好しが悪いこと。
何をいまさら。
―それはそうだけれども。
同意するんかい。否定してくれると嬉しかったんだが。
―しーらない。
ひどいなぁ。んで、後どのくらいで着くの?
―うーん、あと六時間くらいかな?
それ着くの日付超えるじゃん。
―しょうがない。それか速度上げてもらう?
それはちょっとな〜。まあいいか。
そういえばこの列車ってパソコン積んでたっけ?
―積んではいるけど...何をする気?
暇だからFPSでもしようかなと。
―現代っ子だねぇ。
君はそもそも世界が違うんです。
―それもそうだけど知識はしっかり学んでるし。
経験が足りないよ経験が。
―しーらない。まあいいや。陰の部屋にもう持っていってあるからセッティング頑張って。
えー、セッティングもやってよ〜。
―自分でやりなさい。それに私はあなたのお母さんではないんだよ?
・・・嗚呼、母の温もりを久しぶりに味わいたいよ。
―あ。・・・そう、だったね。思い出させちゃった?
体調が悪くなるほど気にする訳では無いから大丈夫だけれどもあんまり思い出したくはなかったね。
―ごめんね。
別にいいよ。
―・・・なにかしてあげようか?
じゃあ美味しい味噌汁を作ってもらおうかな。
―分かった。行ってきます。
よろしく。
・・・何も出来なかった。
その場にいなかったので何もできなかったのは当然かもしれないが未練はやっぱり感じる。
むしろその場にいたら、今の生活にはなってないだろう。
もしかすると今俺は存在すらしていないのかもしれない。
一部の人の記憶にだけ存在していたのかもしれない。
目の前で親の死を目撃する。そんなことがあったら理性を保てるはずがない。
異世界に飛んでから相手の運転手に恨みはなくなった。異世界は不思議だな。
親の死を聞いたのは事故があってから一週間後だった。
二週間旅行に行ってくると聞いていたので家に帰ってこないのは何の不思議もなかった。
警察が突然家に訪問してきて驚いた。何か犯罪を犯したのかと思ったね。
でも警察の口から出た言葉は親の死だった。
事故からなぜ一週間もたったのかというと事故があまりにもひどくて身元の特定に時間がかかったそうだ。
二週間くらい家から出られなかった。食事もまともに取れなかった。辛うじて栄養バーは食べられたが体重はごっそり減った。
光は必死に俺を慰めてくれた。家事も光がやってくれていた。
光も本当は辛かっただろう。
それから陽が来てここで初めて陽の両親も同じく事故にあって亡くなってしまったことを知った。
それまで知らなかったのだ。なぜ警察は陽たちの家に行かなかったのか。
その日は少しでも気を紛らわせるために焼肉食べ放題のお店に行った。
ちょうど冬休みの時期だったので学校は心配いらなかった。
それからおばあちゃんがうちに来て、成長して時がたち、今に至る。
・・・はぁ。
「お待たせ。味噌汁できたよ」
優しい声でシスが話してくれた。
たとえ離れていてもシスは俺が拒否しない限り考えを読める。
だからさっき考えていたことはすべて伝わっただろう。
俺は別に聞かれていても別にいい。本当に嫌な時は拒否する。
「ありがとう」
いただきます。
・・・うん、おいしい。ちょうどいい味噌の濃さ。ホッとする。
「何かあったら頼っていいんだからね」
「急にどうしたの?」
「急でもないでしょ。私は陰専属のお世話係なんだからさ」
温い。ぬくぬく~。
「・・・。ありがとう。でもお世話係なのか?」
「それ以外なんて言えばいいの?」
確かに。メイドはゼーシャとかなら当てはまるけどシスはなんか違う気がするんだよなー。
メイド。執事。案内ni...それだ!
「案内人?」
「それはなんか意味合いが違くない?」
OMG。言われてみれば。
「じゃあお世話係でいいか」
『ピーンポーンパーンポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。まもなく日本に上陸しまーす。東京駅23番線に到着する予定です』
もう上陸なのか。早いな。
『福島県内の新幹線の線路に上陸し、東京を目指しまーす』
なんか放送軽くない?
―軽いね。
軽いよね?
―軽いね。
『なんとなく線路上では360km/hで走行します』
なんとなくで出す速度ではない。
通過駅のホームの人はどうなるんだ。ホームドアが最近整備されたとはいえ吹っ飛ぶんじゃないか。
人間が吹っ飛ぶさまなんて見たくないぞ。
『なお東京駅で国内メディアと海外メディアと鉄オタと防衛大臣の出現が予想されます』
防衛大臣!? ナンデボウエイダイジンサンガ?
でもなぜ人が集結するんだ? 情報漏洩した?
どれだけ人おるん?
―なぜなまったの? まあいいや。ホームの映像出すね。
よろしく。
車内に搭載されているディスプレイの電源が入った。
表示されたホームの生中継映像には人の大群が映っていた。
あーあーあー。これは大惨事だこと。でも海外の人の姿はないな....Masaka?
シス、改札付近の映像出せる?
―いけるよ。ほいっと。
改札付近にはカメラを構えたメディアらしき人たちの大群が映っていた。
OMG。もう嫌だ。こんなとこ歩きたくない! 取材されたくない!
「わお。どうしようかこれ」
どこかで何かをしていた(?)陽がこっちに来た。
「あんな大群の中にはいきたくないんですけど」
「私も同感」
アイドルが何を言っているのやら。
ステージの上だから輝けるってか。そんなことはないと思うけど。
でもどうするか...ん? ホームの映像をもう一回よく見てみるとおそらく十両編成ということを事前に調べて前十両分にしか人が集まってなかった。
これは後ろに止まればなんとかなるのでは?
―確かに。私が連絡してくるよ。
よろしく。
―してきたよ。
早。
―もう返信帰ってきたよ。
はっや。
―読むね。『了解しました。駅員が誘導しますので停車時は駅員の指示に従ってください。後ろ側(上野寄り)に社員用のエレベーターがありますのでそちらをお使いいただいて結構です。防衛大臣は裏の会議室でお待ちなのでエレベーターでB1Fにお降りになった後、名札を下げた社員が案内いたします。名札がない人から話しかけられたら係りの者ではない可能性が高いので相手にしなくて結構です。なるべく押し寄せないように善処を尽くしますが長時間耐えられない可能性が高いのでご了承ください。NR東日本 東京駅―駅長 乾辺 沙也加』
まさかの駅長から。『相手にしなくて結構です』って。なんかすごい。
とか言っていると大きな衝撃が体に伝わりバランスを崩して倒れた。
『上陸してましたー』
事後報告やめい!
「いったーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
個室の方からカシさんの大きな叫び声が。確か寝てたはずだから転げ落ちたかな。
あーあ。やっちゃったね。これは怒られるな。
それから飛ばし続けて数時間。先行車がいたこともありずっと速度を保ちながら進めたわけではないが順調に進んでいた。
もうすぐ大宮駅。ということは降りるときも近いということだ。
いやだな。相変わらず人はたくさんいる。
少しでもマシにするために、みんなで降りる準備をしていた。
だけど最悪なことも判明した。
どうやら最後の停車は人間が運転しないといけないらしくアランは停車させることができないというのだ。困ったもんだ。
そしてだれが運転するのかという話は必然的に俺になる。
なぜなら俺しか運転技術を持っていないのだ。オワタ。
ということは列車を停車させた後、駅の人が持ちこたえている間に後ろの車両までマラソンし、急いでエレベーターに乗り込まなければならない。うまくいく気がしない。
『交代シーケンス開始』
「おっと。じゃあ行ってきまーす」
「生きて帰ってきてねー」
「死にません!」
誰が死ぬか。死んでやるもんか。
最悪の場合は社会的に死ぬだけだ。肉体的には生きる。精神的には死ぬ。
ははは。
笑ってられっか!
―なんで一人漫才をやっているのやら。
漫才のつもりはありませんー。
―用意はいい?
ちょっと待って。・・・ふぅ。すうーーーーーーーーーーーーーはあーーーーーーーーーーーー。いいよ。
―マニュアルモードに変更まで、3、2、1、チェンジ。
〈マニュアルモード開始〉
〈速度正常。電圧正常。運転手連動完了。魔力状況参照中......OK。システムオールグリーン。マニュアルモード変更、すべて完了〉
―大丈夫そうだね。
あとは走っていくだけか。やっぱりホームにはいるの?
―うん。たくさんいる。
やめてくれー。にしても到着予定時刻まで2時間くらいあるのにそんなにいるんだ。
―来るっていう情報だけでいつ来るかは仕入れていないようです。
―アラン、情報漏洩の原因はつかめたの?
―できたよ。どうやらわたる申請書を作成していた時に担当役員の隣にいた同僚がSNSで流したらしいよ。
なるほど。あとアラン。
―はい?
俺に対しても敬語じゃななくていいからね。
―そうですか? じゃあそっちのほうが楽なのでそうしますね。
よろしく~。こっちもらくだから。
それからも止まらず走っていき、埼玉県に入ろうとしたところで無線が飛んできた。
〈こちら運転指令です。特別列車応答願います〉
おっと? これはこの列車かな?
―たぶんそうだね。
「こちら特別車両です、どうぞ」
〈現在、東京駅ホーム混雑の影響で先行車両が詰まっている状況です。大宮駅に一時停車願います。運転間隔調整なのでドアを開ける必要はありません〉
―混雑は僕たちのせいですかね。
―だろうね。
「了解しました。発車するタイミングはどうすればよいでしょうか、どうぞ」
〈発車タイミングは信号を開通させたタイミングでお願いします〉
「了解です、どうぞ」
〈こちらからは以上です〉
・・・めんどくさいことになりそうだな。
――せやな~。
そして大宮駅に着いたが、かれこれ30分くらいずっと待機させられている。
暇。暇の極み。
ひーまーだーなー。
もうすっかり夜になっちゃったよ。
相変わらず東京駅は人混み。
テレビ見るか。
〈サブモニタにテレビを表示します。一部の機能が制限されました〉
『19:00になりました。最新のニュースをお伝えします。まずは東京駅から中継です。木下アナウンサーが現場にいます。木下さん、状況を教えてください』
『はい、東京駅の新幹線ホームに来るとみられている軍隊特別顧問は未だ姿を現していません。詳細がなにも公開されていないので、もし今回撮影されると初めて公開となる見通しです。現場からは以上です』
『木下アナウンサー、ありがとうございました。次のニュースです。原油価格が高騰中です』
・・・、チャンネル変えてくれる?
〈変更を実行します〉
『麻婆豆腐を作っていきたいと思います。材料は一般的な材料とプロテインのもとを用意してください』
不思議なお料理番組だこと。
『まずは豆腐をお好みの形に切ります。そのあと、マッスル―! これをすることによりおいしさが上がります。誰でも簡単にできるので是非お試しください』
わお。もういいか。テレビ消してくれる?
〈電源ダウン。機能制限が解除されました〉
そういえば君って名前あるの?
〈命名はされていません〉
名前欲しい?
〈あったほうが利便性は向上すると思います〉
あっそう。俺だけでつける闇が怒りそうだからなー。
とりあえずオペレーターって呼ぶか。
〈仮名登録完了しました。信号の変化を確認。本線が開通しました。発車ベル始動を確認。発車準備願います〉
やっとか。了解。
〈発車ベル終了を確認。発車準備完了。制限速度なし。リミッター解除〉
「フル加速だ―――――――――――――――――――――――――――――――――!」
〈速度上昇中。30、60、140、280、330、440、500....警告、線路の限界を確認。リミッターをかけます。東京駅到着予定、三分後です。駅接近。自動ブレーキオン。オートモードに移行します。・・・移行完了。機能正常。連動解除〉
あれなんでオートモードになるの?
〈駅の停車データのダウンロード及びインストールが完了したためオートモードでの停車が可能になりました〉
あ、なるほど。
じゃあ陽たちの場所へ走りますか。
「あれ? 何でここに来たの?」
不思議そうな顔でこちらを見てくる。
まあそうだよな。
「なんかオートモードに移行できたんだよ。だからこっちに来た」
「なるほどー」
〈ホーム視認。停車行動を開始します〉
「さて、運命の時間だね」
「大丈夫? 走れる?」
「陽こそ、大丈夫?」
「私の存在を忘れていないかね?」
「あ、カシさん」
「あ、とはなんだ」
「忘れてました」
「やれやれだ」
〈停車完了。ドアオープン〉
「「「はしれーーー!」」」
「こちらが大臣がお待ちの会議室です...が...。だ、大丈夫ですか? 皆さん、だいぶお疲れのようですが」
「あ、気にしなくて、だい、じょうぶ、です」
「そ、そうですか。それでは私はこのあたりで失礼します」
思いっきり走ったせいで息切れがすごい。
カシさんは余裕っぽいけど。
「こんなちっぽけな運動でへばるとは弱いな。ほら、入るよ」
しゃべっている途中で鸞さんになるとは高度な。
「こ、こんにちは」
恐る恐る入るといつもテレビで見ている人がいた。
「こんにちは。とりあえずお座りください」
「ど、どうも」
陽も声が少し震えている。
「えー、単刀直入に言います。申し訳ありませんでした」
「「・・・はい?」」
「私、こちらの世界では浅間 信 防衛大臣としてふるまっておりますが、世界の狭間ではジャーラの弟なのです」
弟さん!?
「兄の手違いによりアメリカに転送してしまって申し訳ないです。謝っても謝っても足りないです」
「か、顔を上げてくださいよ」
陽が一番最初に口を開いたが俺は口が開かなかった。衝撃すぎて。
「あとホームでは大丈夫でしたか? 情報漏洩については現在調査中ですが、おそらく原因は我々にあるので」
「起きてしまったものはしょうがないですから大丈夫ですよ」
陽はもう切り替えてハキハキとしゃべり始めたが、アイドルってこんなに切り替え速いのか。
「申し訳ないです。・・・さて、そろそろ本題に入りましょうか」
さすがの切り替え速度。
「兄の方から説明は受けていたと思いますが、今回こちらに来ていただいたのは襲撃者の撃退をお願いしたいです。ですがいつ襲撃してくるかがいまいち分からず。ですが、一週間のうちに来ることはわかりました。何か質問はございますか?」
「えっと、私からいいですか?」
「はいどうぞ」
「出現場所はある程度分かっているのですか?」
「それが、あなたたちが通っている私立高校なのです」
え
―え
「え」
「「・・・え!?」」
「これはー、嫌な展開だこと」
他人事じゃないですよ鸞さん!
「加えて、その前にもどこかに出現しそうなんですが....そちらは全くわからないのです」
つまり二回も出現すると?
―そ、そういうことだね。
それ本当に守れるの?
―どうだろうね。
「こちらからも情報を得ようと頑張っているのですがどうしても一回目の襲撃の出現場所の詳細がわからないのです。関東ということはわかるのですがそれ以外はさっぱり。それに、公に行動すると不審に思われるので秘密裏に動いていまして。だから余計わからなくて。本当に申し訳ないです」
おうおうおう、すごい高速詠唱だこと。
俺はよくわからなかったけど、陽は頷きながら『私分かってますよ』アピールをしている。
本当にわかっているのだろうか?
―マスターはわかってませんよ。大雑把にしか聞いてないです。
さすが陽。
―呆れますよ。
言いすぎじゃないですかアランさん?
―私は呆れてもマスターが好きです。呆れない人間なんて存在しないです。
お、おお。タ、タスケテーシスサーン。
―まあそんな日もあるよ。
しす!?
「今日はこんな感じでお開きでいいですか?」
「あ、はい大丈夫です」
「あ! あとこちらを渡しておきますね」
ワタシテキタノハメイシダッタ。
―(職務放棄)
「何かがあったらこの電話番号まで電話してもらえれば私が直接出られますので。それとこの書類もお渡ししますね」
―陰の代わりに私が言おう。渡してきた書類には『甲種電気車運転免許・新幹線電気車運転免許・甲種内燃車運転免許』と書いてあった。
「これがあれば国内で電車を運転することができます。ただし条件が厳しいので注意してください」
「あのー、その条件とは?」
―こういう時に陽は頼りになるねー。
俺の気持ちを代弁しないでくれ。
「簡単に言えばUnlimited社が作った車両以外は運転することができません」
あ、なるほど。じゃあ乗ってきた車両も運転できたわけだ。
===
謎の単語が出てきたので私、シスが説明しまーす!
Unlimited社は世界No.1と言っても過言ではないメーカー。スマホやPC、冷蔵庫やテレビなど、色々なものを作っていてたくさんの子会社も持つめちゃくちゃ大きい企業。世界一環境にやさしい企業とも言われているよ。噂では《Unlimitedは社員が社長しかいない》とか《製品の開発は全て一人でやっている》とか《社長はゲーマー》とか《社長は成人していない》とか。まあ全て正しいんですけど。最近の人はすごいねー。よくこんなに分かるね。社長は誰かって? もう薄々気がついているんじゃないかな?
===
説明する気なら端から端まで説明しなさいよ。問を投げかけるんじゃない。
―最後の一文は問に入るの?
うーん。ニホンゴムズカシイ。
「それでは私はこのあたりで失礼させていただきます。そろそろ出席しなくてはいけない会議があるので。お時間ありがとうございました。進展があればこちらから連絡させていただくのでそれまでのんびり過ごしていてください。それでは失礼します」
・・・。あっさり帰ったな。
すると去っていったドアの方がチカチカし、たくさんの声が聞こえてきた。
「何をしていたのですか大臣!」「何か一言お願いします!」「特別顧問の詳細を!」「寿司食べたーい!」「今日はなぜこちらに!」「大臣の好きな食べ物は!」
光はおそらくフラッシュだろう。たくさん写真を撮られてるっぽい。
『扉の前に記者がいるので今出るのは危険です。排除するので少々お待ちください』
排除って。
三十分後に出られましたとさ。
長かった? ごめんなさい、なんか書いていたらこんなに長くなってしまって。
次はSideが変わるので同じくらい長いのが増えるかも?




