4話 2つの初めての対人戦準備
前回までのあらすじ:
街に来た。金がない。そうだ、大会に出よう。
「『【チェンジ】』」
よし、準備はいいかな。
『あまり残酷な感じにはしないようにね、陰』
うん、対人戦闘だからそれは大丈夫。
『エントリーはあっちみたいだよ』
よしじゃあそっちに向かいますか。
「こんにちは!エントリー希望ですか?」
「そうです」
「それではこの紙に自分のことを書いてください」
「わかった」
えっと、なになに。名前と職業か。あれ? それだけ?
『どうやらこれを出した後に機械を使って検査するみたい』
ほう、それで色々見るのか。とりあえず出してみますかね。
「名前:イン
職業:魔法師」
こんな感じかな。
『うん、大丈夫でしょう』
「すいませーん」
「はい」
「書き終わりました」
「そうですか。それではこちらへどうぞ」
やっぱり機械のところだったな。にしてもハイテクだ。
その機械は手を置くところがあり、その前には結果を表示するモニターがあった。
「それではこちらに手を置いてください」
「こうですか?」
「ええ、それで大丈夫です」
「少しだけ魔力を吸いますので違和感を感じるかもしれませんが大丈夫ですので」
怖いこと言ったな、この受付の女性。
この世界では魔力がDNAみたいなものなのか。
「それでは始めますね」
おお、確かに吸われて行っている気がする。
『これ大丈夫かな? レベル999だから驚かれないかな?』
あ、そのことを考えていなかった。やばいかこれ?
「はい、終わりです。確認しますね」
どうなるどうなる、いったいどうなる?
「え?」
受付の女性から聞こえた。
やばいかも。
そこに書かれていたのは―
「名前:イン
職業:魔法師
レベル:解析不能
スキル:解析不能
各種ステイタス:解析不能」
「どうなっているのこれ。ちょっと―」
え?なにこれ。受付の人どっか行ったし、周りが騒がしいし。
『まずいかもね、陰』
どうなるのかな、俺?
とりあえず待ってるか。
「この人がそうです」
「ほうほう。ううん?」
誰だこの人?
『【解析】』
いつの間にそんなことできるようになってたの?
『その人の正体がわかったよ。鑑定士だって』
ちょっと、無視しないでよ。でも鑑定士とな。そいつのレベルは?
『5』
弱くね?鑑定スキルは?
『11』
こっちは強いのかな?よくわからないや。
「こやつは何もわからん。出てくるのは名前と職業だけじゃ」
見た目はそうでもないけど声はお爺さんだな。
11くらいだったら俺の実力は見破られないのか。
「どうしましょうか、委員長?」
後ろから筋肉ムキムキな強そうな人が来た。この人が委員長か。
「うーん。これは解析不能で参加してもらうしかないね」
おや? 参加させてくれるのか。
すると近づいてきた。
「この建物を壊さないと約束してくれるなら参加してもいいよ」
ずいぶん優しいな。
「地面だったら大丈夫ですか?」
「直してくれるならいいよ」
「わかりました」
「よし、これはおじさんと約束だ」
あれ? まさか俺、少女ととらえられているのか。
『しょうがないよ。その姿じゃ』
ここに入る前に姿変えとけばよかったか。
「それじゃあこれがあなたの参加カードね。もうすぐあなたの番が来てしまうから準備しといてね」
「はーい」
それじゃあ行きますかね。
『ほどほどにしてよね』
わかってるって。
控室を出て会場に入る。すると―
「わー」「待ってました!」「きたきた!」
うるさい。とにかくうるさい。
「さあ皆さんお待たせいたしました。今回の優勝候補の一人、剣士サックの登場です!」
なるほどね。優勝候補だからこんなにうるさいのか。
それにしてもこの大会、実況者までいるのか。金かけてるな。
「対するは検査機で解析不能をたたき出した少女、魔法師のインです!」
そんなこと言わないでよ。俺だってしたくてそうなったわけじゃないから。
「お前なんがサック様に勝てるわけがない!」「解析不能で調子乗るな!」「降参しろ!」
こいつらまとめてぶっ飛ばしていいか?
『抑えて、陰』
・・・わかった。頑張る。
「お嬢さんが俺様の相手か。手加減してやるよ。か弱い女の子は傷つけたくないんだ」
か弱い?中身はムカついている創造魔法師の男ですよ?
『わからないから言ってるの』
確かにそうだが。よし、挑発してやるか。
「え? 手加減? そんなのしてもらわなくても私は勝てるよ?」
これぐらいがちょうどいいだろ。
「ほう、口だけは達者だな。いいだろう。後悔させてやるよ」
「後悔するのはそっちだよ、おじさん」
いいねいいね。さあかかってこいよ、剣士さんよ。
『性格悪いね、陰は』
性格が少し悪いくらいがちょうどいいんだ。
「両者準備ができたようです。それでは始めましょう。」
「ファイト!」
審判の掛け声で試合が始まった。




