表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

ゼーシャメモ1:ある一日のことです

この話は数話先の内容も含んでいます

「カタカタカタ。うーん、ここの効率がもう少し上げれたらいいんだけどシミュレーションをいくらしても上がらないな。あ、じゃああそこを変えればいいのか」

・・・キーボードのタイピング音が鳴り響いている。

 体を起こしてみると、机に向かってご主人様が仕事をしていました。

「ご主人・・・様?」

「あ、起こしちゃった?」

 ご主人様はパソコンで作業をしていました。

 今は確か列車関係の開発を行っていましたっけ。

「大丈夫です。今何時ですか?」

「えっと、7:00くらいかな」

「あれからずっと開発を?」

「うん。途中で寝落ちしちゃったけどしてたね」

 確か午後11:00前から作業をしていたので八時間以上作業をしていることになります。

「お体は大丈夫ですか?」

「大丈夫。寝落ちしちゃったせいで元気だよ」

「それは大丈夫とは言いません」

 私はご主人様の体が心配です。

 この後学校ですのに。

「ゼーシャ? 何か言いたいことがあったんじゃない?」

 おっと、忘れていました。

 そういえば今日は学校ではなく、

「カシ様から呼び出しがかかっています」

「え?」

「なので予め陰様に今日の仕事を代わってもらってます」

「え? 聞いてないけど?」

「私が言ってないので」

「え?」

 実はこれはカシ様の作戦でもあります。

 本当は心が痛むのですが、カシ様(いわ)く『アンは恐らく前日に言うと面倒くさがって私のところに来ないだろうから当日に言うといいぞ。それでも行こうとしなかったら呼んでくれ。無理やりにでも連れていく』と。

 本当に心が痛みますがこれもご主人様のためです。

 これならご主人様も行くでしょう。

「うーん、面倒くさいし行かなくていいか」

 あ・・・。

 これは.....やばいですね。

「さて、解析の続きでもしま、す、か、ね?」

 ご主人様の右側にはカシ様がいました。

「なぜ来ないんだ?」

 カシ様相当怒っていらっしゃる。

 漏れている魔力が相当怒っていることを物語っています。

「い、いやー。これはその。優先順位というものがあってですね」

「私の方が低優先というわけか?」

「いやー、えっと、そのー、そういう訳では」

「・・・」

「・・・すいませんでした!」

 ご主人様は椅子から慌てて降りて土下座しました。

「人のことをなんだと思っている?」

「カシさんなら別に、と思ってしまいました」

 ご主人様、どんな理屈ですか。

「はぁ、まあいい。ついてこい。お前に用事がある者がいる」

「まだ準備できていないんですけど?」

「じゃあ早くしろ」

 私も実は驚いています。

 呼び出しをかけてとしか言われていなくて目的を聞いていませんでした。

 会いたい人って誰でしょうか?

 私はご主人様について行きますけどね。

『助けて、ゼーシャ』

 はい?

『絶対カシさん機嫌悪いよ』

 それは自業自得です。我慢してください。

『嫌だー!』

 世話が焼けるご主人様です。でも、私はそんなご主人様が好きですよ。

 そして、ご主人様が準備しようとしたその時、隣の部屋から大きな声が聞こえてきた。

「起きろー!!!」

「にゃぁぁぁぁああ!!!!」

 そう、陰様が起きる声です。

「今日もか。毎日騒がしいな」

「もう慣れました」

 ご主人様の言う通り、これは何回も聞いていくうちに慣れてきました。

 慣れって恐ろしいですね。

「よく慣れるな。私は一向になれる気配がないよ」

「カシさんも同じ環境に置かれたらなれますよ」

「確かにそうかもな。自分から進んでこの環境にいようという思いは微塵も起きないがな」

「誰だってそういいますよ」

 意外とご主人様とカシ様は一つの話題に対して話がないのですけどこれって人を選ぶんでしょうか?

 私はあまり話が長く続かないタイプなので後でご主人様に話を長引かせる方法を教えてもらいましょう。


 準備ができて部屋を出て目的地に着きました。

 目の前には大きな昔ながらの雰囲気が漂っているようにも見える工場のようなものが建っています。

「ここは?」

「ファステストで一番大きいと言ってもいい企業だな」

「なんの企業ですか?」

「主に魔法の触媒だな」

 魔法の触媒とは、魔法の杖や魔力を流せば誰でもその魔法を発動できる魔石などを言います。

 安いとは言えないけど持っていると魔力効率が凄まじく向上し、少ない魔力でたくさんの魔法を発動で着るので、凄く人気のカテゴリーらしいですよ。

 今一番沸騰しているといっても過言ではない、と言われている。・・・みたいです。

 でもそんな企業がご主人様になんの御用で?

「俺に何の用ですか?」

「試験らしい。どうも今のものは魔力の最大限が分からず改良しようにも何も分からないらしい。そこでお前が呼ばれたわけだ」

「でもそれなら兄さんの方がいいのでは?」

「ああ、私が暇そうなアンを推しておいたぞ」

 はた迷惑です。

「嗚呼、大変だな」

「報酬もある」

「なんですか? なんですか。 なんですか!」

 ご主人様の目が急にキラキラしてきました。

 お金には目が無い人ですからね。

「この街で一番大きいお店に連れていってくれるそうだ」

「高い?」

「高い」

「高級?」

「高級」

「美味い?」

「めっっっっっっっちゃ美味い」

「よし、行こう」

 やっぱりご主人様はご主人様ですね。

 ほっとします。

「さて、中に行きますか」

「私が案内をしよう。ついてこい」

「了解」「かしこまりました」

 カシ様はこの企業と何かつながりがあるんでしょうか?

 そうでなければ私たちを推奨するはずがないのですが。

 なんでそう言い切れるかはカシ様はそういう人だからです。

 いえ、鸞様が、ですかね。

 ですがまだカシ様と鸞様は謎に包まれているといっても過言ではありません。

 でも、身を任せていい人だとは思っています。

 不思議な感じですね。

 さて、ご主人様も行ってしまいますし私も急ぎましょう。

「「あ」」

 ・・・。

 ここでこの方に会いますか・・・。

 この人は何を隠そうアルターの父親ですね。

 恐らく私たちのクラスの親の中で一番私たちを嫌っているであろう人物です。

「何の用ですか?」

「それはこっちのセリフだ。ここに何の用だ?」

「私はご主人様の付き添いです」

「付き添いだと? 何故この会社に?」

「それはあなたには関係ありません。それより私の質問に答えてもらいましょうか?」

「俺はこの会社にたまに出向いて仕事の手伝いをしているのだよ。君たちとは違ってね」

 えらく舐めた口聞きますね。さすがの私でも呆れてしまいます。

 それになんですか? 『君たちとは違ってね』って。

 だったらこっちも反抗してやりますか。

「ご主人様はこの会社のお偉いさんに呼ばれたのです。あなたみたいな暇人とは違ってね。こちらは忙しいのです。どうしてもと仰っていたのでここに来ています」

 あちら側がヒートアップしてきていますね。

 同じことを言っただけなのに。

 アルターはいつも大変ですね。

「「・・・」」

 黙り込んでしまいましたね。

 ならちょうどいいです。

「私はこれで失礼します」

「まて」

 まだなんかあるんですか!?

『口が悪くなっているよ、ゼーシャ』

 あ、すいません、ご主人様。つい。

『程々にしてね。喧嘩になると困るから』

 分かっています。

『ならいいよ』

 ご主人様は私がたまに口が悪くなってしまっているときに指摘してくれます。しかも怒るわけではないのでこちらとしてもとてもうれしいです。

 やっぱりご主人様は私のことをしっかり考えてくれていますね。

 それで、そちらは何とかなりそうですか?

『大丈夫そうだよ。だからこっちは気にしなくていいよ』

 分かりました。

「それで、どうしました?」

「少し、食事でもどうかね」

「ナンパですか?」

「いや、そんな気は無いんだ。たまには学校のアルターについて聞く機会があってもいいかなって。代金は私が出す。味も保証しよう」

 ・・・。

 なんか意外。

 そんな人とは思わなかったです。

 子供思いのいいお父様なんですかね。

 だそうですけど、ご主人様?

『俺はいいよ? むしろ行ってもらって仲良くなってくれる方が都合がいいかも』

 了解です。ご主人様も奢りだからといって食べ過ぎないでくだないね?

『程々にするよ』

 それが一番信じられません。

『善処します』

 それでいいのです。また後で。

『わかった。また後で』

「ご主人様に許可をもらいました。そんなに聞きたいのなら話して差し上げましょう」

「助かるよ。アルターはあまり話さないタイプなんでね」

 へー、そうなんですね。


「そうなんだよ。アルターはそこがかわいくてさぁ、あはははは」

「ふふふ、本当にお子さんがお好きなんですね」

「当たり前だろう! 子供を好きではない親なんていないであろう!」

 かれこれ数時間近く話していますけど結構いい親ですね。

 ちゃんと子供をかわいがって大事に育てているのがわかってきました。

 食べ物もおいしかったですしね。

 そんなことを思っていると、ドアを蹴り破った者が現れ剣で私たち、お客を脅してきました。

「お前ら命が惜しければ金をこの袋に入れろ! さもなければ命がどうなっても知らないぞ!」

 厄介な人に会いましたね。

『ゼーシャ!』

 あ、ご主人様!

『大丈夫?』

 ええ、そちらは?

『今そっちに向かっているけどあいにくそんなに早く行けそうにない。武装してもいいから少し時間を稼いで!』

 了解です。

「おい! お前も入れろ!」

「すいません。あいにくあなたにあげるお金がないのです」

 さて、挑発に乗ってくれるでしょうか。

「ふざけるな! どうせ金は持っているんだろうが!」

「ですので持っていません」

「早く出せ!」

「ありません」

「ふん! 俺様に逆らうとはいい度胸だな。お前らやってしまえ!」

 すると入口から複数人の男が入ってきた。

 面倒くさい状況になってきた。

『あと3分!』

 ふむ、大丈夫そうですね。

「武装開放。闇の秘剣:闇光(あんこう)

 決して魚のアンコウではありません。

 この武装は背中に背負っているのですがあまりにも強すぎるためいつもは鞘で封印しています。

 そして緊急時のみこのように開放をして使える状態にします。

 どうやって作ったかは・・・またの機会にでも。

 今は目の前の敵に集中です。

 敵は六人。武器は剣が二人と斧が三人、ナックルが一人ですね。

 やっつけてはいけないので加減が難しいですからやりすぎないようにしましょう。

 ・・・使ってしまいましょうか。

「ゼーシャが告ぐ。我の剣を強化し、」

「いったい何をやっている?  遺言か?」

 今詠唱中だから黙っててほしいんですけど。

 これ結構恥ずかしいんですから。

「敵を殺さない程度に痛みつけろ。創造魔法第二流派第四奥義:精神抹殺」

「あ? いったい何、を、」

「お、おい! どうした! お前何をした!」

「私は剣を持っている男の一人に私の剣をちょこっとだけつけただけですよ?」

 この魔法は剣に力を纏わせ、その剣に触れた生物の精神力を強制的に消耗させ、気絶するまで精神力を削る魔法。

 極端に弱い敵は触れた数秒後に気絶に至る。

 そんな敵を見ていたゼーシャのお父様が急に我に戻ったような表情をし、

「あ、あなたはいったい何者ですか?」

 と、私に向かって言ってきた。

「私はただのメイドです。何の変哲もありません」

「っ!? 後ろ!」

 お父様は私の後ろから敵が近づいてきていることを教えてくれました。

 心でも変わったかのような更生ですね。

 そんなに早く私を信頼してくれるのですか。

「お前は俺たちを怒らせた。怒らしたことを後悔させてやるよ!」

「危ない!」

「大丈夫ですよ。だって」

 私はドアに体を向けました。

「あの方が来てくれますもん」

「行け! お前たち、やってしまえ!」

 襲い掛かってきました。

 だが遅い。

「創造魔法第四流派第二奥義:天地逆転」

 来たのはそう、ご主人様でした。

 ご主人様が奥義を発動させると敵とご主人様の立ち位置が逆になりました。

「なに!?」

「ゼーシャに敵意を向けた罰だ。ありがたく受け取るといいよ。地獄の果てまでな!」

「ひぃぃぃぃい! お助けを!」

 と言って、みんな逃げてしまった。

 ちなみに、私が戦っている間にゼーシャのお父様を除いてみんな窓から避難してました。

「追わなくて大丈夫なのですか?」

「カシさんが何とかしてくれるよ」

「そうですか。なら安心ですね」

 ちなみにゼーシャのお父様はあ然としています。

「さて、帰ろうか」

「はい、ご主人様。あ、そうだ」

 私はゼーシャのお父様のもとへ近づき、こう言いました。

「アルターをこれからも大切にしますのでご安心ください」

 するとゼーシャのお父様は複数回うなずきました。

 そして私はニコッとしてその場を去りました。


「あそこで奥義って使ってよかったのでしょうか?」

「まあいいんじゃない?」

「本当に大丈夫でしょうか?」

「何とかなるさ。ならなくても何とかするさ」

「ふふふ、それでこそご主人様です!」

 そして、私たちは部屋に戻りました。

次はアランverかラーサverもしくはその両方が出てきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ