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25話 硫酸型健康増進風呂?

前回のあらすじ:

リサがよっていた。酔わないように改善しておこうかな。

「さ、さて、取り乱してしまったがここまでよく来てくれたね」

 流石は王といったことかな。切り替えが早いこと。

―30分もかかっているのに早いというの?

 色々なことが同時に起こりすぎて処理が追い付かなかったのでしょう。

「宿はこちらの方で取っておいたから好きに使うといいよ。貸し切りにしたからいくらでもはしゃいでもらって構わないよ」

 やっぱ国の王様となると財布の大きさが違うね。

「あと公の場でなければ僕をネスと呼んでもらっていいよ。そっちの方が気持ち的にも楽だしね」

「それはいいとしてなぜ俺たちはここに呼ばれたの?」

 そういったのは闇だった。

 確かに気になっていたのはある。

 そしてネスさんの口から飛び出したのは誰も予想しなかった言葉だった。

「いやー。カシが負ける人だったから一目見てみたかったんだよね」

 ・・・。

―「「「「は!?」」」」

「落ち着いてください。王もそんなろくでもないことで呼びだしたわけではないですから」

「ろくでもないってひどくないかな? まあいいや。確かにそれだけではない。カシには伝えてあるから。聞こうとしなくてもそのうち聞くことにはなるだろうけどね」

 何だろう?

「今日言いたいのはこれだけだ。襲撃で捕らえたもの達はこちらで管理をする。硫酸型健康増進風呂でゆっくり疲れをいやすといいよ」

 硫酸型健康...? なんだって?

―【硫酸型健康増進風呂】。温泉のことだよ。硫酸が主成分のものに限るけどね。

 ああ、温泉。なるほどね。

 この世界にも源泉はあるのか。

「宿の風呂が硫酸型健康増進風呂になっている。宿が貸し切りだからいくらでも入り放題だよ。でも掃除の時間には気をつけてね」


「陰? なんで女子の私に荷物を持たせるの?」

「俺は俺で持っているんだよ」

「でも手には何もないけど?」

「だってインベントリに入れたからね」

「ああ、その方法があったね。すっかり忘れてた」

「しっかりしてくれよ」

「すいませんね!」

 今はネスさんが取ってくれた宿にみんなの荷物を運んでいる。

 ちなみにそのみんなはというと...


「アルター! 早く早く!」

「ネロ―が早いんだよ!」

「グロウは行かないの?」

「僕は1人でいいよ」

「みんなで行った方が楽しいって!」

「あ、手を引っ張らないでくださいよ、リサさん!」

「嗚呼、何で私が見守らないといけないのでしょうか?」

「頑張れって。王からの命令なんだから」


 ソーデレス家の人とインシャル家の人が見守り役になって街を探検中。

「うう、俺も行きたかった」

「頑張って、闇」

「そう言ってる光はしっかり荷物持ってるの?」

「それはどうかな~?」

「ゼーシャ、お願い」

「かしこまりました」

「わかったわかった! ちゃんと運びますから」

 こっちは喧嘩が勃発ですよ。

 いつになっても闇と光は仲が悪いから目を離したすきに喧嘩しているんだよね。

―こっちの方が兄妹らしいですね。

 実の姉弟としては弟がシスコンに育ってしまったからあまり喧嘩はなかったね。

『俺の方もだよ。光がブラコンに育ったせいで気がついたら俺の布団で一緒に寝ていたりしたからね。でもどっちかというと先に始まったのは陽のブラコンな気がするけどね』

 え? そうなの?

『お前自覚ないのかよ。あんなにべったりくっついていることがあってブラコンじゃないとは言わせないよ』

 あれは姉弟として普通じゃないの?

『お前の常識はどうなっているんだ?』

 何の変哲もないと思うけど?

『ダメだこりゃ。手遅れだな』

 そうこう言っているうちに私たちは宿に足を踏み入れた。

「「いらっしゃいませ」」

 そこは1泊10万円は超えそうな豪華なフロントだった。

 他のみんなはあたふたしていたけど私だけは冷静だった。

「長旅お疲れ様でございます。陰様と陽様と闇様と光様でよろしいですか?」

 そう話しかけてきたのはいかにも偉そうな白髪のおじいさんだった。

「はい」

「まず決めていただきたいことがございますのでこちらに来ていただけますか?」

「わかりました。私だけでも大丈夫ですか?」

「大丈夫でございます。それではこちらへ」

 そうして私はカウンターの方に連れて行かれた。

 ・・・表現少し変かな?


「今日のご夕食の方はいかがいたしましょうか?」

「ここで食べることは可能ですか?」

「可能でございます。こちらで食べますか?」

「お願いします」

「かしこまりました。食べる場所はそれぞれのお部屋と食堂が選べますがいかがいたしましょう」

「食堂で」

「かしこまりました。あすの朝食はいかがいたしましょう」

「朝食も同じように選べるのですか?」

「さようでございます」

「それでは朝食はそれぞれのお部屋で」

「かしこまりました。明日以降はいかがいたしましょう」

「明日以降も同じようにしてもらえますか?」

「かしこまりました。今日聞きたいのは以上でございます。この宿は鍵が魔力式となっております。魔力を所持していない方や事情で魔力が使用できない方はいらっしゃいますか?」

「いえ、いません」

「かしこまりました。それではお一人づつこちらの機械で魔力と鍵を紐づける作業がございますので生徒の皆様がいらっしゃいましたらお一人づつ登録いただくようお願いいたします。今から先生方の魔力を紐づけいたしますのでこちらへどうぞ」

 私は陰たちを呼んで後ろからついていった。

 そこにはタブレットとICカードリーダーよのうな見た目をしているものが置いてあった。

「こちらの機械に手を置いてもらいまして鍵と魔力パターンを紐づけさせていただきます」


 ここで闇の少し補足タイム。

 この世界の魔力にはそれぞれ指紋のような【魔力パターン】が存在する。

 人それぞれ違くて兄弟関係や親子関係だと似たり寄ったりなのだが()()違いは生まれる。

 例外はない。・・・はずなのだが実は...


「陰様と陽様の魔力パターンが完全に一致しているのですか?」


 そう、兄さんと姉さんはなぜか完全一致しているのだ。

―これは私が調べておきました。最初は驚きましたね。

 ちなみに俺と光は似てはいるけど別物だよ。

 そしてここからは理科の授業のようになってしまうのだが魔力には周波数がある。

 周波数が高ければ高いほど魔力量が多い。

 一般的には44KHz(キロヘルツ)と言われている。

 大体音と同じだね。

 そして多くなっていくと96KHzや192KHzとなっていく。

 そして兄さんと姉さんはというと・・・。

 何だっけ?

―5GHz(ギガヘルツ)です。

 そうそう。

 ちなみにkHzに直すと確か5242880KHzだっけ?

―それはKBです。正解は5000000KHzです。

 そうか。データは1Mで1024Kだけど数字は1Mが1000Kか。

―その通りです。紛らわしいですね。

 同じ周波数でもなぜか魔力には違いが生まれる。

 その違いが【魔力パターン】と呼ばれているのだ。


「失礼いたしました。少々驚いてしまいました。どう致しましょうか?」

「えっと、私たちには生徒が泊まっている全ての部屋に入れるようにはできるのですか?」

「可能でございます。ですが陰様と陽様を別々に設定することが出来ないので陽様がお泊まりになられるお部屋には陰様も入れるということになってしまいます」

「それで大丈夫です。闇と光にもそれぞれの部屋に入れるようにしておいて下さい」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 さて、少しトラブルこそあったものの順調に進んでいるわね。

『あ、陽が久しぶりに女子っぽい語尾になった』

『姉さんにしては珍しいね』

 うるさいわね!

『!?』

 闇、どうしたの?

『・・・いや、なんでもない』

 そう?

『気にしないでいいよ』

「準備ができましたのでお部屋にご案内いたします」

 もちろんエレベーターなんてものはないから階段になるのだけど・・・

「お部屋は5階になります」

 た、たいへんだね。


 それから荷物を置いて兄さんと姉さんと光が自由行動しているみんなを連れて来るために宿の外に出た時、俺、闇は支配人に言って小さな部屋を借りてパソコンと向き合っていた。

 実は魔力を登録するときに俺の勘が働いた。

 それはゼーシャも同じだった。

 それを調べるために宿側には悪いけどあの魔力検査装置に俺がアクセスできるようになる小さなスティックをつけさせてもらった。

 そしてそれとパソコンをリンクさせ調べてみた結果・・・

―魔力パターンが抜き取られましたね。

「うん。これは誰がやったのかまだ解析が必要だね」

―はい。あいにく今はノートPCしかありませんからあまり速度は期待しない方がいいかもしれません。

「了解。ほどほどにね」

―もちろんです。

 いったい誰が抜いたのか。それといったい何のために抜いたのか。さらに今後への影響は今は知る由もなかった。

冬休み期間になったら投稿が空く可能性がありますのでその時はよろしくお願いします。

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