22話 お昼ご飯と料理の腕前
前回のあらすじ:闇
鸞さんの少し悲しい過去を聞いた。出発しようとしたら謎の魔力の波によって壊れているようだった。なんだろう?
今回も結構長いです
1回に収めようとしたらこうなりました
「グゥー」
あ、お腹が鳴ってしまった。
お腹が空いたよー。
―朝ご飯ドタバタしててあまり食べれなかったしね。
空腹が限界でーす。
「コンコン」
おっと?
客室からここ、運転室につながるドアがノックされた。
「陰、私だよ。入っていい?」
「どうぞー」
来たのは陽だった。
「お邪魔します」
今はシスに運転を任せているので立っても問題ない。
席から立って近くに置いてあった椅子を出して近くに置いた。
「別にそんな気遣いしてくれなくてもいいのに」
「さすがに立ったままはいけないでしょ」
「そ、そう? じゃあありがたく座らさせてもらおうかな」
「どうぞどうぞ」
陽は謎の本を手に持っている。
なんだろう?
「それで何の用で?」
「うん。そろそろお昼ご飯の時間かなって」
「待ってました!」
「そんなにお腹空いたの?」
「もう腹ペコだよ」
こうやって話していたら忘れそうだけど。
・・・いや、さすがに限界だ。
―しばらく私が運転することになりそうだね。
うん。よろしく。
―任されました!
「ふふ、陰は食べ盛りなんだから」
「それもあるかもしれないけれど魔力をたくさん使って疲れてそれが空腹を招いている気がする」
「そっか。途中で充電が切れそうになったんだっけ?」
「実際切れたけどね」
「650kmとか言い出した時は驚いたよ」
「でも何であの時アルターからも驚かれたんだ?」
「なぜかわからないけど陰が切れそうとか言っていたころから車内放送で陰の声が聞こえてきたよ」
「え!?」
・・・シースー?
―い、いやー。間違えてミュート切っちゃったかなーあはは。
・・・。
―ご、ごめんなさい!
まあ、まだこういう状況だったからまだいいけど。
―つ、次からはないようにします。
よろしくね。
「こらこら、シスと喧嘩しないの」
「あ、ばれてました?」
「顔に出てるよ」
バレバレでした。嗚呼、小さな小部屋に隠れたい。
「あんまり喧嘩しないようにね」
「はい」
「それより、何食べたい?」
「何食べたいといわれましても何があるかわからないから何も言えないんですけど」
「あ、ごめんごめん。これメニューね」
陽が持っていた本はメニューだった。
ええっと。
ラーメンに寿司にてんぷらにすき焼きにピザにスパゲッティーにそばにラーメンにハンバーガーにハンバーグに牛丼に定食にデザートにサラダに・・・。
ラーメンに2回言った?
「何種類あるの?」
「どうだろう。材料はたくさんストレージに入れてきたからほとんどの物が作れるんだよね」
「あ、そう」
ま、迷う。
―私が選んであげようか?
お願いします。
―はーい。
「ふむふむ、なるほどなるほど。了解です。じゃあ完成したら持ってくるね」
「うん。よろしく」
「はーい。ふふ♪」
何を頼んだの?
―ヒ・ミ・ツ♪
変なのは頼んでいないだろうね。
なんか陽がおもしろそうな顔をしながら去っていったけど。
―大丈夫だよ。陰がおいしく食べれるものしか選んでいないから。
は、はあ。
めちゃくちゃ心配だ。
「おっまたせー!」
あれから約10分後、陽がやってきた。
随分早いな。
手には何もない。
「あれ?」
「大丈夫。インベントリに入れているだけだから」
「あ、なるほど」
「はい、お待たせしました。料理長の気まぐれ山盛り定食になります!」
「何だこれ!? ・・・定食?」
「料理長が育ち盛りの陰への気持ちで盛りあげたものになりますよ」
刺身(大半がマグロ)とてんぷら(5つ)とすき焼き(卵あり)とピザ3ピース(マルゲリータ)と小さいハンバーガー(トマト入り)とデザート(イチゴパフェ)とサラダ(コールスローサラダ)と主食?の牛丼(ねぎと卵のやつ)。
お、重すぎる。
重量的にもにも材料的にも。
俺の好きなものばっかりだけどこの量は食べれないかも。
「料理長って誰?」
「闇」
「あ、あいつ。よくも!」
『大丈夫。インベントリの食糧モードを入れれば鮮度そのままで運べるから』
「そういう問題じゃなくて」
「さあ、どうぞ!」
「はい。いただきます」
まずは主食であろう牛丼から食べますか。
あ、熱い。作りたてって感じ。
あ、美味いなこれ。
食べた瞬間肉の風味が広がってネギの味もしっかり感じられる。そこに卵でコーティングされることで一体感が出ている。さらにつゆもいい味を出している。
これは幸せの高速列車だね。
『それ作ったの私だよ』
あ、光だったの?
『うん。お兄ちゃんが気に入りそうな味付けにしてみた』
ばっちりだよ。
『えへへ』
うれしそうだね。
『それはもちろん。お兄ちゃんに褒めてもらえたからね』
さて、ピザでも食べますかね。
うん。やっぱりおいしい。なんか石窯で焼いたようなにおいがする。
そういえば闇がこの列車を作るときに置いていたような気がする。
なるほどね。このために置いたのか。
全部めちゃくちゃ美味しいから全部食べられる気がしてきた。
よし、頑張るぞ!
ふ、ふう。
一応すべて食べれたけどギリギリって感じだったね。
お腹いっぱいだよ。
『そうなるように量を調整したからね』
え?
『ゼーシャが兄さんの今食べれる量を教えてくれてね。じゃあギリギリまで盛ってしまおうと言ったらこうなった』
な、なるほど。にしてもよく分かったね。
―シスと一緒に調整しましたので細かい所まで調整できました。
シスとやったんだ。
―うん。せっかくだしたくさん食べれるようにしてほしかったしね。
つまり計算通りと。
―そういうこと!
「私はそろそろ戻るよ。みんなにも出してあげなきゃね」
「わかった。ありがとう」
「お礼はあとで行動でね!」
?
『デートしろってことでしょ』
陽と?
『兄さんと姉さんの2人で』
・・・着いた頃に忘れていてくれないかな~。
『無理だね』
ですよね。
『あ、そうだ。みんなに食堂車に集合かけておいてくれる?』
了解。
《ピーンポーンパンポーン》
あら? 何でしょうか?
《皆さん、お腹空きましたか?》
あ、陰先生だ。
「すいたー!」「私ペコペコだよ」「ごはんごはん!」
《うん。みんな空いているね。じゃあ5号車の食堂車に来てくださいね。そうしたら美味しいご飯が待ってるよ!》
「飯だ飯だ!」「何があるかな?」
そういってみんなが食堂車に向かって走り出しました。
「私たちも行く?」
「そうですね。あれ? リサ?」
リサがお腹を手で抱えていました。
「もしかしてお腹痛いの?」
「お腹空きすぎて痛い」
「朝ごはん食べた?」
「楽しみがいっぱいで食べずに出てきちゃった」
「じゃあお腹もすくよ」
「「「あははは」」」
《アルター、ネロ―、リサ、早くしないと食べたいものがなくなっちゃうかもよ?》
「い、急がなきゃ!」
「そうね!」
私たちは椅子から立って大急ぎで向かいました。
5号車に入るドアの前に私たちは来ました。
ドアを開けると、
「いらっしゃいませ!」
陽先生がお出迎え。
「アルター達ね。案内するよ」
入口の付近には闇先生と光先生がいるキッチン。
そしてその奥にテーブル席があった。
6号車も食堂車みたいですよ。
先生が案内してくれたのは大きな窓の隣の4人掛けのテーブル席。
「ここは何と言うか落ち着く雰囲気になっていますね」
「こういう内装を和風っていうんだよ」
「和風ですか」
「そう、和風」
闇の強い希望があって俺が和風に仕上げた結構自信がある場所だ。
―陰はここだけやけに時間をかけていたからね。
和風と聞いて気合いが入っちゃったからね。
ここだけやけに車両が長いのはスペース的な問題があったから。
おかげで安全に走行するのが少し大変になったけどね。
―線路の敷き方が少し変わっただけじゃない?
まあそうだけどさ。
「景色がきれいだね」
「うん。空から見るとこんな感じなんだね」
「はい、水とメニューね。決まったら呼んでね」
「はい。ありがとうございます」
「メニュー・・・お、多いね」
私たちが知っているものから知らないものまで色々な種類があって選ぶのが大変です!
ここでまた俺、陰の補足。
この世界には寿司はある。それはもう知っているだろう。
―この世界は養殖が基本だよ。ちなみにここで扱っている魚も養殖の魚で近くの魚屋さんで買ってきたんだよ。
それは今はいいとして。
―ひどい!
寿司がいつどこから伝わってきたのか、もしくはいつこの世界で食べ方が発見されたかはいまだ分かっていない。
―なんか魚が書いてある本には全部焼くか煮たりするしか書いていないんだよね。どこを見ても生のまま食べることが書いていないんだ。
すなわち刺身のことも書いていないことになる。
なんか刺し身の方が早い気がしているんだけどね。
―この世界には寿司があってもうどんとかそばはまだ確認できていないんだよね。
そう。ファステストを回ってもないし近くの町の観光パンフレットを見ても食べ物のことは何も書いていない。
―この世界の人は食より景色って感じに昔からなっていてあまり食料のことは考えないんだ。
ちなみにラーメンもない。
パフェとハンバーガーはある。
てんぷら・すき焼きは今のところ確認できていない。
―ピザは微妙なラインでね、どっちとも言えないんだよ。
よく見る小麦粉を使ったピザじゃなくて米を使ったピザらしきものしかない。
―これをピザと呼ぶのか呼ばないのかわからないから微妙なんだよ。
なんか異世界って複雑だね。
―私は陰の前世界の記憶なら持っているけど実際に言ったことはないからよくわからないね。
え? 俺の記憶?
―そうだよ。あれ? 闇から聞かなかった?
闇からは何も聞いていない。
―あ、そう。まあいいや。
いやいやいや、よくないよくない。
―あ、アルターたちが何食べるか決まったらしいよ。
こいつ、上手く話をそらせやがった。
―なんか言った?
いえ、なにも。
「はいはい。わかった。飲み物は何か飲む?」
「じゃあ全員オレンジジュースで」
「わかった。じゃあちょっと待っててね」
そう言って先生は去っていった。
「にしても座席に座っているときとは少し違った景色が見えるね」
「うん。窓が大きいから開放感があるって言うかなんというか」
「言葉にしづらい景色だね」
「あれ? 下に水が見える?」
「これは絶景湖の1つの【フス湖】だね」
フス湖は絶景湖と言ってこの国、【ファザー】が独自に行っている綺麗な湖を登録して観光客を増やそうとしている運動だ。
―運動と言っていいのかと疑うくらい大規模だけどね。
まあ確かに。
―この国も結構大きくてすべてを回るのは相当な日時が必要と言われているよ。
だからこそ綺麗な湖をピックアップしてみんなに知ってもらおうと、そういうことだね。
―それじゃあ現場に戻します。
テレビ中継じゃないんだよ。
「はい、お待たせ。まずはリサの生姜炒め定食だよ」
1つのおぼんに蓋つきの小さな器と白飯と1つのお皿に漬物とお肉を炒めたようなものがのっています。
これは豚肉かな?
「次はネロ―ね。ネローは料理長の気まぐれ大盛定食ね」
ご、ご飯が器に山盛りのっていて魚に揚げ物にデザートのパフェまであるすごく食べごたえのありそうなものですね。
ね、ネロ―はこれ全部食べれるの?
「最後はアルターだね。闇!」
「そんな強く呼ばなくても気づくから」
私のだけ闇先生が持ってきてくれた。
「はい。ハンバーグ260gね。付け合わせはアルターが好きそうなものを適当によそっておいたから。ご飯のお替りもあるからね」
私が頼んだのは食べれるギリギリサイズのハンバーグというものだったけど260gも食べれるでしょうか?
付け合わせは目玉焼きと人参とコーンがあります。あとグリンピースも。
なんか5号車を見ているだけでなんかうれしいね。
―みんなおいしそうにご飯を食べているからね。
あれ? なんか1人だけ量がおかしいような?
―あれはネロ―だね。どうやら陰が食べたものの大盛バージョンを食べているようだね。
闇が作っているから大丈夫だろうけどあれ本当に食べれるのかな?
―大丈夫だよ。あ、リサの定食に味噌汁がついている。
俺のにはなかったけど?
―まだ陰が食べれる段階まで開発できていないからね。
なにその俺のボーダーラインが高いみたいな言い方。
―これは光のお願いでもあるんだけどね。
なら納得できる。
―なんか陰に食べさせるときは完全な完成形を食べさせたいって言っていたから食べさせていないんだよ。
なんか光らしいというかなんというか。
・・・光だね。
―あ、それで納得しちゃうんだ。
光は俺に関しては抜かりないからね。
こうやって片付けるのが一番なんだよ。
そう言えばみんな料理の腕がすごいね。
―みんな料理スキル作ってたからね。
あれ? 俺は?
―陰は料理する側じゃなくて食べる側に立っててほしいんだって。
は、はあ。
・・・後で俺のも作っておいて。レベルは一番高くして。みんなには秘密だよ。
―りょーかい。
そんなことを言いながらもみんなはお昼ご飯を食べ、俺とシスは目的地に向かって列車を走らせている。
だが誰もいないはずの6号車に人影が?
『今大丈夫?』
お、久しぶりだな。
『あれ? 通信でもカシなんだ』
違和感があるか?
『少しだけね』
じゃあやっぱり通信はこっちがいいね。
『やっぱり鸞の方が話しやすいな』
それはお互い様だよ。神であることを隠蔽しているときに話すのは何か違和感があるからね。
『確かにお互い様だったね』
それで、本題は?
『否定派が動くようだよ』
否定派、か。前動いたのは結構前だったよね。
『うん。数年前だったね』
思ったより離れていないね。
この世界には魔王が存在する。
だけど魔王は僕たち、人間には攻撃をしてきていない。
前までは戦いあっていたんだけど魔王が方針を180度回転させて仲良くすると言い出した。
そして、その魔王の決定によって魔王についていく肯定派、魔王からは離れて戦いを継続していく否定派に分かれた。
否定派の目的はわからないが人間と敵対しているというのは確か。
実際、たまに攻撃を仕掛けてくる。
最近来なかったせいで緊張感が解けて対策が間に合わない可能性だってある。
『目標は王都だ』
今向かっている?
『うん。その王都』
今来るのは相当まずいでしょ。
『王都の守りはあまり期待しない方がいいね』
となるとやはり、
『4人に頑張ってもらうしかないね』
規模は?
『詳細はまだわからないけれど相当大きいと予想されるよ』
こちらの分が悪すぎる。
『おそらく生徒たちにも戦ってもらうことになるかも』
・・・わかった。ありがとう。
『あとで4人を協会に連れてきて』
そのつもりだよ。
『じゃあこのくらいで』
うん。お疲れ。
『またね』
・・・。
「ふぅ」
『あ、カシさん。来てたんですね。なんか食べます?』
「ハンバーガーをお願いするよ」
『了解です』
何とかなるといいが・・・。
有言実行です
さて、次回はついに王都に上陸です!




