21話 影の見守り人(闇)
前回のあらすじ:
やっと町に着いたよ。トラブルもあったけどね。カシさん、いや、鸞さんの少し悲しい話で実は心苦しい。お料理で気分を戻さなきゃね!
―ほどほどにしてくださいね。
今回はめちゃくちゃ長いです。時間にお気を付けを。
さて、兄さんと姉さんがカシさんの所へ行っている時、俺はアルターたちの後をついて行っている。
と言っても建物の屋根の上からだけど。
バレないようにしなきゃ楽しめないからね。
休憩時間を楽しまないのはもったいないから。
アルターはネローとリサと町を歩いている。
この距離ではあまり会話は聞こえないけど笑顔だから大丈夫でしょう。
ちなみにグロウの所には光がついている。
光は見守り人ではなくて同行者って感じ。
1人だったからさすがに可哀想だと思ってね。
―ご主人様は優しいですね。
俺は経験したことがあってグロウにはそうなって欲しくないからしたんだけどね。
―自覚がないだけで充分優しいですよ。
そう?
―はい。
そう思ってくれるなら嬉しいけどさ。
ところであいつらの様子は?
―今のところ落ち着いてはいますがいつ来てもおかしくは無いと思います。
あいつらというのはアルターたちの後ろからこっそり尾行している複数人のグループのこと。
恐らく弱そうなアルターたちを狙っているのだろう。
アルターはまだ気づいていない。
あいつらも俺の存在を気づいていない。
だが今攻撃してしまうとこちらが悪くなってしまうからあっちが手を出したら対処することにしている。
「ねえ、綺麗な首飾りがあるよ」
「あ、ほんとだ。綺麗だね」
「うん。アルターに似合いそうだよ」
「そう?」
「うん!」
声が聞こえてきた。
楽しんでいるようだね。
ここは大通りだしまだ安心できるね。
―でもいつ来るか分かりませんね。
うん。なるべく暗い道には入らないようにとカシさんが言っているけど迷ってしまう可能性はある。
そう考えながら俺は屋根の上を静かに飛んでいる。
お腹がすいた。
―我慢です、ご主人様。
は、はい。
うぅ。保護係受け持つんじゃなかった。
「結構買っちゃったね」
紙袋5つくらい買っている。多すぎ。
「アルターが買いすぎなんだよ」
「ええ? そう?」
「自覚しょうよ」
笑いながら3人が歩いている。
だが問題はこっちじゃない。
あいつらの人数が増えてきた。
増援が来たと言った方がいいか。
その中には魔法を使える者もいる。
だが攻撃魔法は使えなさそうだ。
―拘束目的ですかね。
そう考えた方が自然だね。
さて、どうすr....まずい!
3人が裏道に入ってしまった。
これは迷ったな。
その進む先にあいつらが居る。
後ろからついていた者も走ってきた。
ここは暗い細道。
来るな、確実に。
「おっとお嬢ちゃんたち、止まってもらおうか」
「は、はい。なんでしょうか?」
声が震えている。みんなが固まっている。
男たちは道を塞ぐように立っている。
逃げ場はないな。
確実に恐怖に脅えている。
―ご主人様、まだ動かないでくださいね。
分かってる。
シス、3人に薄い結界をつけておいて。
―お易い御用です。
結界は張った。恐らく攻撃は効かないはずだ。
でも大丈夫かな?
「おじさんたちお金に困っていてね。それで一緒に買い物をして欲しいのだけれども」
「私たち以外でもいいのでは?」
答えたのはネロー。
意外にも声は震えていない。
手はプルプルしているけど。
「可愛い女の子の方が声をかけやすくてね」
どんな体質だよ。
「事情はわかりましたがお断りします」
アルターが強い口調で言った。
ちなみにリサはと言うとアルターにくっついている。
「そうか。おじさん悲しいな。だって良いって答えてくれたら暴力なんて振るわずに済んだんだけどな!」
「一体何、を!?」
魔法が使用された。
魔力によって3人が拘束され身動きが取れない状況になった。
魔力の紐のようなもので縛っている。
あと少しで手が出せるな。
「ごめんね。もうこうなった以上止めることは出来ないんだ」
「私たちをどうするつもりですか!」
「簡単だよ。俺たちに全てを捧げるんだよ!」
男は拳をアルターたちに向け、振りかぶった。
そして振りかぶったということは、
「正当防衛成立」
前、後ろ、左右がダメなら上から行けばいいじゃない。
俺は屋根から跳び、地面に着地するのではなく足のかかとを男の頭に当てた。
男は地面に倒れた。
「誰だお前は!?」
「誰ってとうりすがりの者ですが」
「なんだと、一般人のくせに調子に乗りやがって」
「親方を倒した罰は受けてもらう!」
魔法発動、空気の塊がみぞおちを狙って打つように設定。
―対象は?
男たち全員。
―かしこまりました。
「ごはっ!」
8人の男たちに強烈な一撃を食らわせたはず。
1人だけ吐血し、他のものはその場で倒れた。
だが吐血したものだけまだ立っている。
「い、一体何が、おこ、たんだ?」
「さて、なんでしょうね」
「そ、その姿はまさか、あの闇?」
「さあ、どうでしょうね」
男はさっきの言葉を最後に倒れた。
この町にまで俺の噂が広まっているとはね。
だが死人は誰もいない。
悪くて骨折。良くて気絶。
上出来じゃないかな?
―ご主人様、最初の男をお忘れですか?
あ。
―最初の男は脳震盪で数日起きれない状態になっていますよ。
・・・ま、まあ戦いには犠牲が付き物だから。
―殺人鬼に目覚めないようにしてくださいね。ご主人様ならその心配入らないと思いますけど。
「せ、先生!」
おっと、こっちのことも忘れてた。
「大丈夫?」
「はい、先生ずっとついていました?」
げっ。
「うん? なんの事?」
「とぼけても無駄ですよ。ネローが気づいていましたからね」
確かネローは索敵能力に優れていたっけ?
さすがにあの集団までは分からなかったみたいだけど。
「ネローには勝てないか」
「そうでも無いです。私は先生が居そうだったから分かっただけでほかの場面だったらわからなかったかもしれませんよ」
「どちらにしろ俺の行動は読まれてたということだよ」
そんな会話をして場を和ませているけどリサは相変わらずプルプルしている。
「リサ? 大丈夫?」
「だ、だだ大丈夫ですよ」
「声がおかしくなっているよ」
「そ、そんな事ないですよ。あはは」
―ご主人様、人が集まってきそうです。早めに離れた方がいいかと。
それもそうだね。
「みんな、今は早くここから離れるよ」
「はい、でもどうやって?」
この場合どうやって逃げるのがいいだろう?
―どうしましょうか?
そう考えていると上から誰かが降ってきた。
「お待たせ」
兄さんと姉さんが合わさっている状態で来た。
「巻き込まれるなら予告してよね」
「巻き込まれても大丈夫なように俺がいたんだからさあ」
操作は姉さんがしてるっぽいね。
「え、え? え?!」
なんかリサが混乱しておかしくなっている気がするんだけど。
『闇、急いだ方がいいよ。警備まで来そう』
了解。でもどうする?
『魔法で全員上に上げるから。そこからは走ってもらうけど』
なるほどね。
それみんなの体力持つの?
『大丈夫じゃない?』
行き当たりばったりだね。
「みんな少し浮くけど我慢してね」
あ、これ急に魔法発動するやつだ。
俺だけ先に行ってようかな。
―抜けがけですか。なしと言いたいですけどこればっかりはしょうがないですね。
あ、そうだ。シスの名前も考えなきゃね。
変えるとは思ってるけどなかなかいい名前が思いついていなくて今はまだ変えてないけど。
そうこう言っていると魔法発動されそうだから急ごう。
『兄さん、先行ってるよ』
『了解。気をつけて』
シス、よろしく。
―かしこまりました。
もうすぐ着くというところでなにか違和感を感じた。
列車の前に人が固まっている。
町から離れているところに停めているから知らない人ではないはず。
―全員生徒ですよ。なぜ集まっているかはわかりませんが。
なんでだろう?
そう考えていると急に視界が暗くなった。
いや、急に影に入ったといった方がいいか。
上を見るとそこには人が乗った竜がいた。
その竜は古代竜でなんか見たことがあって、
「なのだー!」
と言いながら飛んでいる。
―美春ですかね。
そう考えるのが妥当だね。
「仲間になってからこの姿に戻ったことがないことにさっき気がついて、どうしようか迷っていたらカシさんがこうした方がいいって言ってきてね」
「姉さん、もう来たんだね」
「3人を抱えたまま長時間屋根の上を走るのは危険すぎるからね」
ネロ―は肩に、アルターとリサは腕につかまっている。
よくこれで跳べるね。
『俺も正直驚いた。あと操作しているのが俺じゃなくてよかった』
兄さんだったら俺が全力で止めているよ。
さて、ここで疑問に思う人も出てくるかもしれない。
なぜ兄さんと姉さんが合わさっているのに3人は驚かなかったのか。
実は生徒は全員知っている。
生徒と言ってもうちのクラスだけなのだけどね。
その時はめちゃくちゃ驚いていた。
鼓膜破れるかと思った。
破れても魔法で治療はできるけど、痛みを感じるから別問題。
―ご主人様、時間です。
了解。
「姉さんはみんなを着席させておいて。俺はいろいろチェックしてくる」
「了解。3人も先に戻ってる?」
「はい。荷物もたくさんあるのでそうさせてもらいます」
みんなが席に着いた頃、姉さんと兄さんは昼食の準備。光と美春と美冬はみんなと遊んでいる。
そして俺と俺のシスと兄さんのシスは最終点検を行っているところなのだが・・・
「なんかパーツ欠けてない?」
―確かに欠けてるね。
―走行中は正常でした。なので停車中に何か起こったのかと。
「これは厄介だな」
分析を進めていると何やら妙な魔力の波がこの場所で起きていることが分かった。
嫌な予感しかしない。
でもそれが起こるとしても二週間はかかるのでとりあえず大丈夫だろう。
『気をつけた方がいいぞ』
『あ、カシさん』
『もしかすると強大な敵が出現する可能性も否定できない。したがってこれからの予定に影響が起きるかもしれないということだ』
『怖くないですか?』
『もしそうなったら王都のものが何かしらの対処はしてくれるだろう。私からは以上だ。通信で同じ人格を継続させるのは何かと大変なのでね』
『了解です』
・・・さて、どうするか。
―とりあえず修理は終わったし走らせたら?
―今の充電量を見ても王都までは十分持つと思いますしその方がいいかと。
そうだね。
―じゃあ陰に伝えてくるね。
よろしく。・・・さて、俺たちも戻るか、ゼーシャ。
―! ・・・はい、ご主人様!
ゼーシャの声がうれしく聞こえるね。
・・・何もなければいいのだけどね。
~一方その頃、あのおじさんはと言うと・・・~
ああ、お茶は美味しいね。
「たのもー!」
「! き、急に現れないでくださる?」
「緊急の通知だからしょうがないでしょ!」
現れたのは私の右腕の1人、女神サー。結構幼い。
「それで何の用で?」
「んん"ん。ラーナ町付近で異常な魔力の波動を検知しました。この波動は否定派の出現予兆に似ています。警戒をした方がいいかと」
「否定派か。久しぶりにその単語を聞いたね」
「最後に出現したのは数年前ですし活動も停滞していましたからね。無理もありません」
「今はそんなに力が残ってないんだよね」
「波動から推測すると目標地点は王都ロス・ファザーと推測されます」
「・・・分が悪いね」
「はい。現在の王都の兵士状況は入れ替わりの時期。新人兵士たちの訓練が中心なので今来てしまうと危険な可能性があります。さらに王都には木北 紅乃葉と三項 紫耀が滞在しています。かなり危険です」
「マジか。まだ陰たちとは接触していないんだよね?」
「はい」
「今4人は?」
「現在王都に向かっています」
「もっとやばいね」
「現在こちらでも対策を練っているところですがいまだにいい方法は出ていません」
「あまり期待しない方がいいね」
「はい。そうしてくれるとありがたいです」
「うーん。・・・シス?」
呼びかけると実体になっているシスが表れた。
「はいはい。どうしました?」
「実はかくかくしかじかな状況になっていてね」
「ふーん。それでなんで私が?」
「4人を協会に連れてきてほしいんだ」
「つまりあなたと接触させたいと?」
「察しが早くて助かるよ。美春たちも来ていいから」
「わかった。うまく誘導してみる」
「鸞にも伝えておくから2人で誘導して」
「了解。それでは」
「今のがシスですか」
「うん。こっちとの接続をオープンにしているから呼べばいつでも来てくれるんだよ。それに4人は放ってはおけないからね」
「なるほど。それでは私はこの辺で」
「うん。ありがとう」
・・・頼んだよ、みんな。
~次は王都~
「王!」
「んん"!? ゲホッゲホ。も、もう少し落ち着いてきてくれないかな?」
「いえ、緊急なので」
「それでどうしたの?」
「否定派の動きが確認できました」
「・・・え?」
「ラーナ町付近で予兆を確認。現在こちらの勢力は非常に悪いです。入れ替わりの時期のため新人の研修・訓練を行っておりベテランの数が極端に少ないです。さらに新人もまだ実践できるほど訓練を完了できていません。さらに今年は魔法師の数が少なく結界を張れる時間も短いと予想されます」
「・・・簡潔に言うと?」
「ヤバいです」
「なるほど。わかりやすい説明をありがとう。・・・は!?」
「反応が遅いですよ」
「増援は?」
「現在要請をかけていますがどうなるかは今の段階では何とも言えません」
「・・・とりあえず鸞の到着を待つか」
「了解です。それでは私はこのくらいで」
「うん。おつかれ」
・・・何とかなってくれ!
否定派とは何かは次回言います
忘れたわけではありませんよ
予想を立ててみてください
ヒントは“常識にとらわれるな”ですよ
わからないですかね?
ヒント2は“否定派がいるということは肯定派もいる”ということです
一体何を肯定したり否定したりしているのでしょう?
新キャラのことも次回以降に説明します
こっちの方が立てやすいかもですね
ヒントは“0話”です




