19-1話 アルターの気持ち
前回のあらすじ:
陰がアルターに何かを言っていた。私は睡魔と戦っていて聞こえなかったけど。
今日は王都に行く日なのだけど・・・
「あの教師にアルターは任せられない!」
「いったい何が不安なの! 校長も認めているのよ!」
「たとえ校長が認めていても私は認めん!」
案の定、私の両親が口論をしている。
父の主張は“あんなものにアルターは任せられない。まだ本当にこの街を救ったのかもわかっていないしそもそも戦いをした痕跡すらない”という。
なぜ痕跡がないかというと闇先生と光先生が死体などを戦いが終わった後に片付けしたから。
地形が平らなのも校長が何とかしてくれたから。
街の小さい子に悲惨な光景を見せたくなかったからこのようなことをしたらしい。
先生をモノ扱いしているのは気に食わないけれど。
母の主張は“たとえ痕跡がないとしても街の人の大半はその姿を見ていて戦いがあったことも知っている。校長も信頼している人だから任せても安心”という。
正直私はどうしたらいいのかわからない。
この口論はおそらく父の勝利に終わる。
そして私は行けなくなる。
でも先生はこのことは昨日からわかっていた。
先生の言うとうりに私はしておこうかな。
なるべく被害が少なく済むようにして。
「落ち着いてください。私は行きませんから。しばらく自分の部屋でゆっくりさせてください」
「あ、ああ」
「もう、アルターに言わせてどうするのよ」
ごめんね、お母さん。
「お嬢様、紅茶をお持ちいたしました」
「あ、ありがとう」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「お嬢様の表情が重く感じられましたので」
「そう」
「しばらくお休みになられてはいかがでしょう?」
「そうね、それじゃあしばらく一人にしてくれる?」
「かしこまりました。何かありましたら呼んでください」
とりあえず先生の言っていた状況にはできたわね。
近くには着替えや遠出に必要なものを入れたバックが二つ。
これを持って行くのは相当大変。
私はひとつが精一杯。
「先生たち心配していないかな?」
「アルターなら大丈夫と言って心配している人は少ない印象だったけどね」
!? その声は!?
後ろを振り向くとそこには陰先生の姿があった。
「先生!」
「おまたせ。待った?」
「い、いえ。むしろ私が待たせてしまいました」
先生はいつもの先生の服装でここに来てくれた。
荷物は何もないみたい。
「さて、そろそろ行くよ。みんな待っているし」
「はい。でもこんなに荷物がありますけど」
「そんなもの収納すればいい」
「収納?」
「ほら、さっきまであったところを見てみな」
いったい何かと置いていた場所を見ると荷物がなかった。
いったいどうなっているの?
「インベントリだよ」
【インベントリ】はまれに獲得する【固有スキル】で持っている人はあまり多くないスキル。
その人の能力によって容量が決まる。
【固有スキル】の中では多い方のスキル。
でも【固有スキル】はレベルがあってなにもつかないのが【インベントリ】のように多くはないけど【固有スキル】の中では多い方のスキル。
次に【固有スキル:レア】。これは一つの国に大体3人くらいしかもっていないレベルのスキル。
そして【固有スキル:アルティメット】。これはその人しかもっていないようなスキルになってくる。持っていると国からマークされるくらい。
最後に【ユニークスキル】。これは正確に言えば【固有スキル】ではなくて、神々にしか与えられないと言われているスキル。言われているだけで本当にあるのかは今の所不明。
そういえば創造魔法ってどの分類になるんだろう?
「先生は容量どのくらいなんですか?」
容量は能力によって変わるといったけれどこれは能力値の中にあるINTとDEXで決まってくる。
INTは知力でDEXは器用さ。
この二つがかかわってくることは研究で分かっているけどどんな数値でどのくらいの容量になるかは研究中って本に書いてあった。
「俺は無限だね」
「む、無限?」
「そう、無限」
「??????????????????????」
「まあ混乱するのも無理はないね」
無限というのは聞いたことがない。
どうしたらそうなるのかな?
「どうしたらそんな容量になるんですか?」
「俺が聞きたいね。よくわからないんだよ」
なおさら分からくなってきましたね。
「あ、カシさん。どうしました?」
『そろそろ出発するぞ。アルターには会えたのか?』
「無事に合流出来ましたよ」
『なら良かった。それなら早く来てくれ。ドアの開け方がわからなくて暑苦しいんだ』
「闇はいないんですか?」
『それが今出発するのに邪魔になる周りの魔物を処理しているんだよ』
「なるほど。それじゃあ今急いで行きますね」
『アルターのことも頼んだぞ』
「了解です」
どこからか校長の声が聞こえてきて先生と会話をしていた。
「先生、今のは何ですか?」
「ああ、これは魔力通信だよ。アルターもそのうち使えるようになるよ」
魔力通信は王都で開発しているのは知っていましたがまだ完成していないはずでは?
それに開発しているものは何も持っていない状態ではできないはずです。
「とりあえず説明はあとにしてそろそろいくよ」
「はい。でもどうやって?」
「ちょっと失礼」
「ひゃ!?」
急に先生は私のことをお姫様抱っこしてきました。
「今は我慢して。これじゃないと大変なんだ」
そういうと先生は窓を開けて勢いよく跳んだ。そして飛んだ。
地面に落ちていく途中に急上昇して飛んだ。
「はわわわわ」
「ごめんね急に飛び出して。学校に着くまで我慢して」
「い、いやぁぁぁぁぁ!」
「お嬢様? お嬢様? お父様がお嬢様と話がしたいを言っていますよ」
「・・・」
「入りますよ」
「ガチャ」
「!? お嬢様!? お嬢様はどこへ!?」
「ドタドタドタ」
「ご主人様!」
「どうした? そんな速度で廊下をかけて」
「お嬢様の部屋にこんなものが」
「手紙?」
お父様、お母様へ
私はやっぱり行くことにしました。信じてくれない可能性もありますが王都へ行くのは王からの命令なのです。なので行かないというのはできません。心配はしないでください。陰先生、陽先生、光先生、闇先生は私より断然強いです。校長よりも強いです。なので無事に帰ってきます。予定表を余分にもらってきたので一部私の部屋に置いておきますね。でもお父様は入らないでくださいね。気が向いたらまた手紙を書いて送りますね。なるべく強くなって帰ってきますね。
アルターより
「なるほど。王からの命令だったのか」
「どういたしましょうか?」
「・・・このまま放っておこう。いずれ帰ってくるのだから。それより予定表を取ってきてくれるか?」
「わかりました」
「・・・今回は信頼してみるか。アルターを頼んだよ、先生たち」
「先生速いです!」
「そう? そんなに速く感じないけど」
「先生の感覚おかしくないですか!?」
「そんなことはないと思うけど」
家から歩きでは大体30分かかる道を5分で着きそうなスピードで空を飛んでいる。
「でもどうやって飛んでいるんですか?」
少なくともこの国には空を飛ぶ魔法なんて実用化されていなかったはず。
なのに何で?
「これは創造魔法だよ」
あ、そういえば創造魔法が使えましたね。
「先生はやっぱりすごいですね。・・・そんなにすごい先生に比べて私は何もありませんよ」
私には【固有スキル】がないから小さいころにほかの人にいじめられていた。
そんな過去があってあまり【固有スキル】に思い出がない。
先生が私の表情で感情を読み取ったのか優しく包み込んでくれる感じで話してくれた。
「別に【固有スキル】がなくたって何もないはずはないよ。人は何かしらの個性を持って生まれる。でも大抵の人はその個性は人格と考えているんだ。それは、自分のもの。他人と比べても似ても似つかないものだよ。それに、同じものは生まれない。たとえ両親が同じでもね」
「・・・そんなこと言われたのは初めてです」
前の学校では嫌われなかったけどそんなことを言う人は一人もいなかった。
これが先生か。
「先生はやっぱりすごいです」
「それはもちろん先生だからね」
「ふふふ」
「ほら、もう着いたよ」
気がついたらもう集合場所の北門にみんなと長い今日乗る乗り物があった。
「空から見ると大きいですね」
「こうじゃないとこの学校の生徒全員乗らないからね。1編成に乗せるつもりはないけど」
「あ、アルターだ。おーい!」
外にいたみんなが手を振ってくれた。
「おーい!」
「大丈夫だった?」
「うん。少し喧嘩したけど大丈夫だったよ」
「アルターも来れてよかったね」
「うん。待ってくれてありがとう」
いいね。友達がたくさんいるっていうのは。
「お疲れ様、お兄ちゃん」
「そんなに疲れた感じはないけどね」
「これから大変な仕事が待っているからね」
「わかってる。もう一度気合いを入れなおさなきゃな」
そうこう話しているうちにカシさんがこういった。
「出発するぞ! あまり遅くなると大変なことになる」
その声の後にみんなが続々と列車に乗っていく。
アルターが乗るときにこっちを見てにっこり笑った。
あんまり気にしていないようだね。
『何が?』
両親の事。
『アルターは大丈夫だよ。切り替え速い人だから』
それもそうだな。
ところでシスさん?
―うん? どうしたの?
いつから俺は運転手の格好になっている?
―やっぱり新幹線を運転するならこの格好じゃなきゃね。
あんまり変わらないと思うけど。
―こういうのはロマンが大切なの!
あ、はい。そうですか。
―ちなみに服装が変わっているのは陰だけじゃなかいからね。
へ?
「私もだよ」
「!?」
驚いて隣にいる光に視線を向けるとさっきまで教師の服だった光の服装がいつの間にか変わっていた。
言葉にするのは難しいが清潔感がある車内販売の人のような服装をしていた。
「驚いた?」
「お、驚くでしょ普通」
「そう?」
光が変わっているってことはまさか?
―さて、どうでしょう?
嫌な予感がしながら俺は車内の方へ足を動かした。
少し書くのをやめていたので少し間が開いたように感じる人もいるかもしれませんが私は元気です
無事、失踪はせずに帰ってきました




