18-2話 みんなの荷造り
前回のあらすじ:
陽→朝起きて陰に決まった予定を教えた。鳥が変な鳴き声していた。
陰→陽に王都へ行く予定を教えてもらった。水が冷たい。
今回は約300行あります。お気を付けください。
(一方)光・闇→二人で口論していたとさ。
よし、時間にはしっかり間に合ったね。
今いるのは学校の第4職員室。この学校にはたくさんの職員室があって第4が私たち専用になっていて、集合場所もここにしているよ。
「ガチャ」
ん?
「おはよう、陽」
「おはよう、陰」
「おはようなのだ!」
「おはよう」
「おはよう、美春、美冬」
最初に来たのは私で今陰と美春と美冬が来たね。
陰は朝には弱いけど起きたらすぐここに来るみたい。
実際起きてから一時間半でここに来ているみたい。
そんなに短い時間で美春と美冬の準備が終わるのが不思議だけど。
「おっはよう!」
次は光が来たね。
大抵陰が来た後に光が来る。なんでだろう?
狙っているのか自然とそうなってしまうのかどっちなんだろう?
「今日はやけに元気だね」
「私はいつも同じくらい元気だよ? だってお兄ちゃんと一緒にいるんだからね!」
「いつもそれじゃん」
「同じで悪いことなんてないからね」
ここに二人が来たらいつも喧嘩みたいなことが始まる。
何とかしてほしいけどあきらめてもいる。
まあしょうがないよね。
私たちに被害は及んでいないからね。
―いや、止めてください。このままでは埒があきません。
あ、はい。わかりました。
「落ち着いて二人とも」
「「俺/私はいつも落ち着いているよ?」」
もう面倒くさい! とにかくこの二人は面倒くさい!
―それであきらめないでください。
そんなこと言われても止める手段もうないもん。
―それは頑張ってください。
もうどうすればいいの?
「ガチャ」
「おはよう」
「あ、闇だ。おはよう」
「おはよう、兄さん」
一応止まったけどまた始まる気がする。
―闇様が来たのなら大丈夫ですよ。
「闇も来たことだし俺は教室行きますかね」
今の時間は大体生徒が学校に到着するころ。
だから時間としては丁度良い。
そして陰が行くとなったら必ず。
「私も行く」
光も行く。
だからここには平穏が訪れる。
ってなったら良いんだけどそう簡単にはいかない。
『陽、今日は門に立つ当番だったでしょ』
あ、そういえばそうでした。
さっきの声は鸞さん。
学校内では大体カシさんの姿でいるので通信は鸞さんの声になる。
どの門に居ればいいんでしたっけ?
『南門だね』
この学校には東西南北に1つずつ、合計4つ門が設置してある。
それぞれ一人は教師がいるように当番が割り振られていて今日の南門の担当が私ってこと。
立ってるだけに聞こえるけど実際そうでもない。
周辺には弱いけど魔物がいて学校に入れないようにする。
その担当も含まれている。
これが大変で疲労がたまってくる。
方法は大きく二種類あって結界を張るか近づいてきた魔物を退治するか。
私は戦闘が苦手なので結界を張っているんだけど結構大変。
しかも結界を張って近づけなくするから達成感が全くわかない。
精神的にもきついってこと。
―マスターはそれでもいつも成し遂げていますからできますよ。
とりあえず今日も頑張りましょうか。
―サポートしますよ、マスター。
朝のホームルームの時間。
このクラスには遅刻常習犯がいないから大体チャイムが鳴った時点で全員着席している。
いいクラスだね。
「おはよう、みんな」
朝の担当は陰で帰りの担当が私。
光と闇は主な授業を担当してもらっているのでホームルームはお休み。
“主な”がついている理由は私や陰も場合によっては担当するから。
さすがにすべて任せるのはどうなのかと思うからね。
「まず紙を配るよ」
紙を配るのにも魔法を使っている。
さすがに100人に紙を渡していくのは時間がかかりすぎるからね。
配るのは陰じゃなくて私がやる。
一人ですべてやるのは大変だからね。
せっかく私がいるのに負担を増やしたくないし。
「先生、何ですかこの紙」
ある一人の生徒が席を立って言った。
「これは前言った王都に行く予定表だよ。これを見ればわかるけど明日が出発日だから」
その質問にまるで備えていたかと思うような即答で陰は答えた。
「え、明日ですか?」
「そう、明日。学校長が決めたことだから文句は俺たちじゃなくて学校長に言ってね」
やっぱりこの反応になったね。しょうがないよね。
―急なのもいい所です。さすがに心の準備ができないでしょう。
『それは大丈夫でしょ。なんせこのクラスだし出発が明日というだけで明日はほぼ移動日だから』
―それは陰様だけなのでは? このクラスの全員がそうとは限らないですし。
『そ、そうなのかな?』
これに関しては私も同感かな。陰はなんだかんだ特殊だし。
『具体的に何が特殊なんだよ』
全部?
『えぇ? 俺そんなこと思われてたの?』
冗談冗談。さすがにそんなことは言わないよ。
『冗談でも言ってましたけど』
冗談は言ったに入らないよ。
『いや、入るね』
入らないよ!
『入る!』
この喧嘩をしているとき、生徒たちが謎の寒気に襲われた。
これは私と陰が喧嘩しているときに発生する魔力のぶつかりで起きる寒気。
今ものすごく集中してみなければわからないような魔力の薄さで魔力が押し合っている。
でも生徒はこのことをもう知っているので対処法もわかっている。
確か闇が教えたんだっけ?
でも誰がその方法を使うかでみんなが話し合っている。
しっかりしてよね。
「先生、やけに移動時間が短い気がするのですが」
ここに入ってきたのはアルターだった。
正直私はアルター以外の名前を全く覚えていない。
長いし覚えづらいから。
「それは簡単な話だよ。あれを使うんだよ」
陰が自信満々に言った。
―ドヤ顔もすごいですね。
うん。陰はこういうのは自慢したい人だから。
―なるほど。
「あれってもしかして?」
「そう、俺と闇が数日授業に出ないで作っていたもの。それが完成したんだよ」
あれってもう完成形なの?
『いや、まだ試作段階かな』
これは闇が答えてきた。
ここにいないだけで会話はすべて聞こえているしこうやって通信もできる。
『ゲームで言うところのアーリーアクセスかな』
アーリーアクセス、それは簡単に言えば開発中のことを言う。
いち早く提供することによって改善点を教えてもらったり改善に必要な資金も調達できるという簡単に言えばユーザーと協力する開発方法。って陰が前言ってた。
『確かに言ったけれどもそれは簡略化しすぎだよ』
こうしないと私は覚えられなかったんだからいいでしょ。
『そうですか。まあいいけどさ』
それで試作段階ってどういうこと?
『まだ調整がしっかりできていないかもしれないんだよ』
でも昨日は大丈夫って言ってなかった?
『それは短距離の場合で長距離になってくるとモードが変わるようにしているからそっちがどうなっているかまだ未知数なんだよ。もちろん今できることはしっかりしたけどね』
なるほどね。でもそれは見つかったらどうするの?
『走行中に直す』
はい!?
『あれには簡単なAIが積んであるんだよ。そこに変更したい数値を入れると変えても問題ないときに勝手に変えてくれる。これをAIと呼ぶか今不安になってきたけど』
別にいいんじゃない?
『そうかな?』
知らないけど。
『ちょっと、その一言で余計不安になったんだけど』
「あのー、先生?」
『おっとっと、すっかり忘れてた。みんなには聞こえないんだったね』
「はいはい、それで?」
「あれって本当に動くんですか?」
「それは大丈夫。昨日試験走行はしておいたから」
「昨日ですか?」
「うん、昨日」
「じゃあ昨日の光る謎の長い物体はあれのことだったのでしょうか?」
何それ怖い。
「なにそれ?」
「昨日ファステストに住む住民の多くが空に光る謎の長い物体があったと噂になっています。それも動いていたとか」
完全にあれじゃない?
『そういえばそんな噂あったな』
闇は知っていたの?
『なんか光から少し聞いた。考えるの面倒くさかったから忘れてたけど』
先に言ってよ。
『それは光に言ってよ』
『私は悪くないもーん』
「もしかしたらそうかもだね。じゃなかったら怖いんだけど」
「敵ではなかったらしいですから大丈夫だと思いますよ」
ふーん、何でわかるんだろう?
「キーンコーンカーンコーン」
あ、チャイムなった。
「もう時間か。それじゃあこの時間は終わり。何か質問があったら各自で聞くように。はい、以上!」
終わり方ひどすぎない?
―マスターが意識しすぎです。
「あだだだだだ」
「少しくらい我慢してよね」
「そんなこと言われても、お!? ちょ、あの、こ、光!?」
「そんなこと言うお兄ちゃんはしっかり疲れを取らないとね!」
「いやいやいや、これはマッサージじゃないでしょ」
「疲れが取れるからマッサージなの!」
「いやいやいやそれはないでしょ」
「・・・」
「痛い痛い痛い! 無言で強くしないで! 折れる! 骨折れるって!」
「あの二人は元気だね」
「姉さんもやってみる?」
「いや、いいです」
授業がすべて終わり、明日の準備も学校内でできることは終わったので第4職員室で休憩中。
ここは結構広くて卓球ができそうなくらいの広さがあるよ。
そして今陰は光にマッサージしてもらっている。
痛そうだけど。
―マスターも疑似的に痛みを体験しますか?
なんで痛みだけ?
―自分がまだ未熟ですから。
そ、それならやらなくていいかな。
―まあそう言いますよね。
「ね、ねえ。明日時間、通りに出発、で、できるのかな?」
マッサージ受けながらだから途切れ途切れしゃべっている。
まあしょうがないね。
「どうだろう。一番心配なのは」
「アルターでしょ?」
「そう、一番心配なのはアルターだよ」
これはアルターの問題じゃない。問題なのは...
「問題は両親が許すかだね」
先に言われちゃった。
そう、問題はアルターの家、つまり両親。
アルターによると両親は私たちのことが嫌いなようだからね。
何が気に食わないのかな?
―この世界の貴族は上下関係に敏感なんです。少しでも自分が下になったら激怒します。気にしなければいいくらいの差なのですが。
面倒くさいね。
―はい、しかも家の中では当主とその妻には逆らってはいけない世界です。
破ると?
―家にもよるからわかりません。ただ精神的に苦痛になる罰とは言われています。
肉体的じゃないってことね。
―そういう事です。
「明日次第だね。いざとなったら俺が直接出向くよ」
「陰、それはいい考えかもしれないけど大丈夫なの?」
「これをいい考えと思える姉さんが不思議だけど」
「そう?」
「お兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「光はどっからその安心感がわくのかな?」
「だってお兄ちゃんだし」
「?」
陰が首を傾げた。
なんか新鮮。
「まあそれは置いといて、兄さんが行っても納得してくれるのかな?」
「暴力的な人だったらきついかもよ」
「そんな人でもお兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「俺は暴力にも強いって言いたいの?」
「うん」
「うんって」
この中で一番戦いに強いのは陰でその次は闇だから事実ではあるね。
『否定したいけどできない』
別に否定しなくてもいいんじゃない?
『否定しなかったら俺が暴力的みたいに思われるじゃん』
別にこの会話私たち以外聞いていないんだしいいんじゃない?
『それもそうか』
「コンコン」
「うん? 誰だろう?」
「アルターです。入ってもいいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼します」
『あ、やっべ。まだ光にマッサージしてもらった体制のままだ』
さっきまでマッサージしてもらっていた体制は下を見て寝っ転がっていたから初めて見た人は不思議な状況にとらえられるかもしれないね。
「あ、今来たのは悪かったでしょうか?」
「いや、別に大丈夫だよ。少し休憩していただけだから」
「そ、そうなんですね」
少し申し訳なさそうな顔をしているね。
『私は悪くないもーん』
『いや、光が悪いね』
また喧嘩始まったよ。
―いや、見てないで止めてください。
あ、はい。
~一方その頃校長室では~
「わーい、逃げるのだ~!」
「待ってよ、ミフ」
「あまりはしゃがないでね。ここは広いとはいえ校長室だから」
「ランも一緒に遊ぶのだ!」
「僕はまだやること終わっていないからあとでね」
「あんまり鸞を困らせないでね。あとで陰に怒られるよ?」
「それは嫌なのだ! 陰に嫌われたくないのだ!」
「そ、それで何の用なの?」
「はい、明日の事なのですが」
やっぱり。本人からは何て言うかはわからないけど。
「両親から拒否されるかもしれないって?」
「よくわかりましたね。はい、その通りです」
ちなみに私はこういう話が得意じゃないからすべて陰と光に話してもらっているよ。
私と闇は終わるまでのんびりクッキーでも食べていようかな。
『いいね、それ』
「というかもう拒否されています」
「「「「え?」」」」
「なぜかわかりませんが家の人に情報が漏れたらしくてすでに知っているんです。そして先生たちと行くなら行かないでと」
すでに知っていたことは予想外だったね。
『ただこれで助けられる手段が減ってしまったね』
そうだね。陰がこれでどうするかによるけど。
『すべて俺に押し付けるな』
「私は行きたいですのが説得は難しそうです。なので明日もし私が来なかったら出発していいです。もし出来たらのちに合流します」
うーん。どうするべきなのかな?
「家の人は王都からの命令ってことは知っているの?」
「おそらく知りません。ですが今言っても言い訳だと思われます」
うーーーーーーーーーーーーーーーーん。
どうしよう? 本当にどうしよう?
「なるほど。わかった。とりあえず今はそれでいいよ。でも先生からのお願いだ」
「はい、何でしょう?」
「一人しかいない部屋で荷物をいつでも持って行ける状態で待っていること」
「そ、それって?」
「明日のお楽しみだ」
「わ、わかりました」
何をする気?
『ん? 明日のお楽しみね』
私たちも?
『もし漏れてしまっては困るから』
「わかりました。それでは明日これなかったらそうしますね」
「うん、よろしく」
「ありがとうございました」
「いえいえ」
「ガタン」
「・・・さて、俺たちも帰りますかね」
「本当に兄さんが考えていることは成功するの?」
「どうだろう、実行してみないとわからないね」
私は心配だね。
次回はついに出発します
やっと冒険の始まりですね




