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17-2話 闇の科学技術の結晶

前回のあらすじ:

頑張って新幹線を作り始めた。三日たったけど終わりがまだ見えない。

23:45

「はぁ、はぁ、はぁ」

「お疲れだね、兄さん」

 や、やっと完成した。

 さ、さすがにあの体勢であの作業を数時間は大変。

 床下に機器を取り付ける作業だったのでずっと寝っ転がりながら作業をしていた。

 改めてこれをこの世界に作っていいの疑問に思ってきたけど。

「でもお兄ちゃんが頑張ってくれたおかげで完成したじゃん」

「まだ試験走行もしていないからどうなるかわからないけど」

 これで何か間違っていたら直すのが大変なんだけど。

「シス、連動確認しておいて」

―わかりました、ご主人様。

「それで連携機能って結局何ができるの?」

「簡単に言うと運転手の補助だね」

「というと?」

「例えば兄さんが運転手をして兄さんのシスが車両と連携したら車両の状態とかが車両の画面じゃなくて視界に表示出来たりレーダーを車両のレーダーにして魔力消費を少しだけ抑えたり。あとはシス次第。シスが機能をどう使うかによってできることが変わってくる」

―それ機能を確立するのがめんどくさくなって私に丸投げしているような気がするのは気のせい?

「ははは、そんなことは・・・いや、そうかも」

「まあ闇はそういう性格だから。しょうがないね」

「そういう姉さんだって何かしらの性格はあるんじゃないの?」

「人だからあるだろうね」

―ご主人様、接続チェックおよび機械動作確認が完了しました。試験走行は可能と判断しました。試験走行に必要な充電魔力量は入力320/sが30秒です。

 少し聞いただけでは難しいかもしれないけどこれは要するに毎秒320ポイントの魔力を30秒注げば試験走行できるくらいの魔力がたまるってこと。

 というかそれより今は体の限界が来てしまいそうで怖い。

「とりあえず今日は寮に帰って休もうよ」

 最近ずっと作業していたせいでここにテントを張って寝ていた。

 食事はいつものように食べていたけれど数日間連続でテントは疲れがしっかりとれない。

 言うならば体が布団を欲しがっていた。

「やあ、完成したかな」

「うん? (らん)さんじゃないですか」

 忘れたころにやってくる人、それが八丁(はっちょう) (らん)

「呼び捨てでいいよ。この空気を見る限り完成したみたいだね」

「しっかり動くかはわかりませんけどね」

 接続が良好でも狙った動きをしない可能性がある。それに狙った性能が出ているかも確認しなければならない。

 だからまだ完成とは言い切れない。

「なら今から試験走行をしてみるかい?」

「今からですか?」

「うん。今からすれば早くて明後日には出発できるかもしれない。早いに越したことはないし」

「確かに早いに越したことはないけれども今からやるって危険じゃないですかね」

「危険は乗り越えるためにある。じゃないか?」

 危険は避けるためにあるの間違いじゃないですかね。

『兄さん、魔力充電は俺がやるから運転してくれる? これじゃあ(らち)が明かない』

 ・・・了解。やってみるよ。

『ありがとう。運転方法は日本と変わっていないから』

 一時期電車運転ゲームにはまっていた時期があるから運転方法は知っている。

 それで新幹線が運転できるかは別の話だけど。

『大丈夫、思った通りに動かせるように運転手との連携機能も付けてあるから』

 ・・・やってやるさ!


「それじゃあ僕は客席に座ってようかな」

「私も乗るのだ!」

「ミハが乗るなら私も乗ろうかな」

『頑張ってねお兄ちゃん。結構人乗ってるからあまり荒れた運転はしないでね』

 そうしないように頑張りますよ。

「システム起動」

《起動コマンドを確認しました。システムを起動し待機モードに移行します》

 わざわざこんなにハイテクにする必要あったのかな?

 運転席にはモニターがなんと5つある。

『ロマンは大切だよ』

 確かにロマンはあるけど魔力消費が多そうなんだけど。

『それはしっかり対策してあるから大丈夫』

 ならいいけど。

《システム起動完了しました。機器類すべて動作は良好です。待機モードへ移行します》

 パット見た限り加減速の方法はわかるけど方向指定の方法がわからないんだけど。

―それは私がやるっぽいよ。

 あ、そうなの?

―一応マニュアルモードもあるっぽいけどすごく大変だと思うよ。

 一人で運転したくないな。

―いつも私がいるから基本的には大丈夫だよ。

 そうだね。

《運転手の着席を確認しました。連動開始。同時にシスとの連動も開始します》

 座っただけで連動が始まるのか。

『なるべくストレスを無くすようにシステムを作ったからね』

 な、なるほど。

《連携完了。連動個体名:八丁 陰。本人確認が完了したためシステム権限を移植します》

 ・・・。

―わぁ! すごいことになってる!

 そっちはそっちで大変そう。

―なんかいろんなモードがあって大変だよ。

『とりあえず試験走行モードにして。そうすれば今回は何とかなるよ』

―はーい。

《モード変更を確認、モードを試験走行に移行します。移行と同時に試験走行に適切なルートを作成します》

 ルートまで作ってくれるとはありがたいな。

《ルート作成完了。操作マニュアルも同時に作成が完了しました。走行準備完了。いつでも発車できます》

 さて、そろそろ出発しますか。

―ドア閉めておくね。

 そうか、ドア開いていたのか。

―ドア開いていたら出発できないようになっているとはいえ気を付けてね。

 はい。

《ディスプレイ1・5にそれぞれの車両に設置されているカメラ映像を表示します》

 カメラの映像があるのか。それじゃあこんなにディスプレイがあっても困らないね。

―そんなに乗っていないからガラガラだね。

 知らない人が写っていたら怖いよ。

―確かにそうかもね。

『兄さん、こっちは準備できたよ』

 よし、出発しますかね。

―全設備状況、良好。

 ブレーキ解除。

《魔力線路設置開始》

 加速開始!

『まずはフルノッチ(アクセル全開)加速して』

 了解。

―おお、動いた!

『動いてくれなきゃ困るよ』

―確かにそうがけどさ。

 これ最高速度どのくらいなの?

『設計的には500km/hくらい出るけどさすがにそんなに出てほしくないから今だけリミッターで360km/hに抑えているよ』

 本当にそんなに出るの? 超電導の新幹線がそれくらいでしょ?

『魔力で作った線路はカスタマイズ可能だからカスタマイズして空転をあまりさせないようにしているから出そうと思えば出せるよ。それに創造魔法で機器を作っているからいくらでも性能は上げられるんだよ』

 空気抵抗とかは大丈夫なの?

『この車両には魔法発動装置をつけていて空気抵抗が大きくなってきたら創造魔法を発動させて限界突破させるようになっているから大丈夫』

 そ、創造魔法って恐ろしいね。

―それは普段使っているときからわかるでしょ。

 改めてだよ。

『早いのだー!』

『あんまりはしゃがないでね、ミハ』

『ミフがおとなしすぎるだけなのだ!』

『そうかな?』

 あれ? この声はどこから?

―カメラにマイク機能があったからオンにしてみた。

 随分はしゃいでいるね。

―竜でもこんな速度でないだろうからね。

『おお、これが新幹線。うわさに聞いていた通り速いね』

 日本で初めて開業したのが1964年だから乗ったことがないのも仕方がないか。

―じゃあどこで新幹線のことを知ったのかな?

『陰たちが来たのが初めてじゃないんだよ。ほかにも日本人がここに来ていてね』

 じゃあ今後会うかもしれないってこと?

『可能性はあるね。ただ居場所がわからないから本当に可能性があるってだけなんだけど』

 あっても大丈夫な心の準備をしておかなければ。

『少なくともファステストで会うことはないと思うよ』


《試験走行終了。走行レポートを作成しています》

 ふう。かれこれ一時間くらい走行していたかな。

―そうだね。結構あっという間だったけど。

《レポート作成完了。レポートを送信します》

 これでいいの?

『いいよ。降りて早く帰ろう。疲労の限界が来そうで怖いから』

 俺も疲労がすごくたまっているから早く帰ろう。

『陰、ちょっと僕のところに来てくれるかな』

 わかった。


「ええっと、これはどういう状況で?」

「気づいたら二人とも寝ていたんだよ」

 確かに疲れていそうな表情をしていたけれども。

―運んであげなきゃね。

 体の限界が来そうだというのに大仕事か。

 ちなみに陽と光は先に部屋に帰った。

「頑張って。明日の午前の授業は僕も行くから」

「あ、了解です」

「それじゃあ今日は解散だね。お疲れ様」

 早く帰って風呂に入ろう。


 さ、さすがに二人を運ぶとなると重い。

 腰が大変なことになりそう。

―でも部屋は目の前だからあとちょっとだよ。

 か、階段が、はぁ、まだ、あるんだよ、はぁ。

―息切れがひどいよ、大丈夫?

 だめです。

―そう、頑張って!

 何か補助くらいしてくれよ。

―しなくていいでしょ。だってもう着いたもん。

 うん? あ、本当だ。

 ていうか手が空いていないからドアが開けられない!

―しょうがないな~。私が開けてあげるよ。

「ガチャ」

「あ、お帰り、お兄ちゃん」

「なんで光が?」

「うーん、何となく?」

「何となくってなんだよ」

「まあそれは嘘で、二人が寝ていたからお兄ちゃんだけだったら大変かなって」

「ああ、そういうことね」

 ・・・何か怪しいような?

―うーん、どうなんだろう? とりあえず今はお風呂入ってきたら?

 そうするか。


 ふぅ、久しぶりの風呂だ。

―久しぶりで熱かったりしない?

 数日程度で沸かす温度を間違えるほど馬鹿ではないよ。

 お風呂を沸かすのにも創造魔法を使っている。

 水道はあるので水をためて創造魔法で温める感じ。

 一人で入るには相当デカい浴槽だから結構大変だけど。

『もしもーし』

 あれ? どうしたの、闇。

『いや、今のうちに明日からの予定を話しておこうと思って』

 ああ、なるほど。

『おそらく鸞さんは明後日にはここを出発するつもりでいると思う』

―随分近いね。

『いつでも行ける状況になったから早めに行こうとしているんだと思う。それに教員の役割割り振りも明日で終わるから丁度いいってことだと思う』

―そんなに早く役割が決められるんだね。

『経験豊富な人ばっかりだしいざとなったときに単独行動しても問題ないぐらいの強さだってある』

―じゃあこういう時のために準備はすぐ終わるようにしているってこと?

『そういうこと』

 でも生徒たちに伝えられるのは明日でしょ。

『そうだね』

 そんなにすぐ行けるのかな?

『それに関しては大丈夫みたい。姉さんや光たちがいつでも行けるように準備しておいてって言ったらしいから』

―意外とやるじゃん、あの二人。

 いやいやいや、俺の妹だからそれくらいはできるよ。

―陰の妹だからこそ少し心配なんだけどね。

 なんだよそれ。

―ふふふ、少しからかってみただけ。

『とりあえず明日は授業は普通にやって放課後に少しそのことについて話す感じだね』

 俺たちは何をすればいいの?

『うーん、なんだろう?』

―わかんらないんだね。

『うん。明日のことは姉さんと光に任せてあるから詳しくは知らないんだ』

―じゃあなんでさっきまでの事は知ってたの?

―それは自分が教えました。

 あ、陽のシスだ。

―明日何も知らないで学校に行くのもどうかと思いまして。マスターも教えたかったようなので。

 今陽は何しているの?

―もう寝ています。100人の生徒を2人で見るのは少し大変だったようです。

『なんか悪いことしちゃったな』

―しょうがないですよ。鸞様からのお願いで作っていたのですから。

 今度何か陽にしてあげようかな。

―それはいい考えです。マスターはきっと喜びますよ。

 具体的に何をするか考えておかなきゃ。

 とりあえず今は風呂から出よう。さすがにのぼせる。

―そういえばお風呂に入っていたね。

 シスまで忘れていたのかよ。

『もう伝えることはないから通信切るね』

 うん、おやすみ。

『おやすみ、兄さん』


 ふう、お風呂気持ちよかったね。

―私は感じられないんだけどね。

 そういう機能ないの?

―ありそうなんだけど今は解析を実体の方に回してるから手が回らないんだよね。

 ああ、なるほど。

 お風呂場から出て布団の方に向かうとみんな寝ていた。

 この部屋にはベットが二つあって一つに美春と美冬が。

 そっちのベットはもともと美春と美冬のベットだから問題ない。

 もう一つのベットには光が寝ていた。

 そしてこの状況は俺の寝る場所がないことを指している。

 さて、どうしようか。

―陰様。

 うん? 光のシス?

―はい。私からのお願いなのですがマスターの隣に寝ていただけないでしょうか。

 光の隣に?

―はい。最近大勢の生徒を2人で見ることになっていたので疲労がたまっていたのです。そしてあまり陰様にあえなかったので謎の不足を感じていたらしいのです。

 謎の不足とはいったい?

―詳しくはわかりませんが陰様にあえなかったのでさみしい感情や一緒にいる安心感がなくなったのでしょう。もっとほかの理由がある可能性がありますが。

 うーん、だから俺が一緒に寝てあげれば解決するかもしれないと。

―呑み込みが早くて助かります。

 じゃあそうしようかな。最近光と一緒にいられなかったのは事実だし。

―起きたら血を吸われていそう。

 別に吸われても困ることはないからいいよ。

―ほんと陰って光のことになったらすごく優しいというかなんというか変わるよね。

 そうか?

―こういうものは自身では気づけないものですよ。

 はぁ。


 よいしょっと。

 2人で入っても窮屈には感じないな。

―私が希望書にちゃっかりベット大きいやつって書いておいたからね。

 大きいやつってなに。

 この部屋の家具はカシさんに置いてもらった。

 この世界の家具は知らないし前の世界と材質も違うかもしれないから。

 置いてもらうときに希望書をもらってそこに書いたものが置いてある。

 シスが大きめなんて知らなかったけど。

―だってそれ以外いい表現の仕方が思いつかなかったんだもん。

 確かに言われてみればそうだけどもうちょっと何かなかったのかな?

―無いものはしょうがないよ。

 確かにそうだけ、ど!?

 急に光が俺のことを抱いてきた。

 確か光は寝ているときに周りにあるものを抱いてしまう謎の特性を持っているけど人もするんだ。

―寝ているときに判断はできないでしょう。

 なるほど。でも、あの、痛いんですけど。

―そんなに強く抱かれているの?

 結構強い。痛いくらい強い。

―頑張って耐えなきゃ。起こしてしまうよ。

 うう、頑張るか。

「むにゃむにゃ。パンケーキ美味しいよ~」

 カフェに行っている夢でも見ているのかな?

 すごく顔がふにゃふにゃしているけど。

「お兄ちゃんも食べる~?」

 なんだ、俺もいるのか。

―夢にも出てくるってことは愛されている証拠だね。

 そ、そういうものなの?

―そういうものなんじゃない? 詳しくは知らないけど。

 なんだよそれ。

―ふふふ、そういうのもたまにはいいじゃん。

 たまにはね。何回もされるのは嫌だよ。

―もちろんわかっていますとも。

 ならいいけどシスならやりかねないからね。

―なによ、文句でもあるの?

 文句ではない。決して。

―それならいいんだけどさって、寝ちゃった。さすがに眠たかったかな。今日はゆっくり休んで明日に備えようね。聞こえていないから意味ないかもしれないけど。おやすみ、陰。いい夢を見てね。

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