1話 2つの結合と創造魔法
八丁 陰:人混みを嫌う人。シスコン。
希北 陽:アイドルの人気者。ブラコン(?)。
「ピヨピヨ」
小鳥の声がする。もう朝か。
にしても違和感がある。背中が痛い。いいや、地面が固いといった方がいいか。
それに窓は開けていないはずなのに風を感じる。
なぜだ?
『もう朝なのね』
え? 頭の中から聞き覚えがある声が聞こえる。なぜ頭の中から聞こえる?
『ええ!? ここはどこ? それに感覚はあるのに体が動かない!』
うるさいな。
『え? 頭の中から声がするわ。それにこの声は聞いたことありますわ』
なんだよお前もかよ。だがなぜだ、俺はしゃべっていない。頭の中で考えているだけだ。
『・・・この声はまさか、陰?』
ちょっと待て、なぜおまえが俺の名前を知っている。それに俺の名前を知っているのは三人ぐらいしか該当しない。俺の妹と陽とその弟だけだ。
『私はその陽ですよ、陰』
マジで? お前陽なの?
『そうですけど、なに? 疑ってるの?』
じゃあ昨日俺がお前の話に即答した会話の内容は?
『交通事故の件でしょ』
・・・あってる、認めたくないけどあっている。
『ちょっとなんで認めたくないのよ』
考えたことが伝わってしまうのか、不便だな。
『そうみたいですね。私も今しゃべろうとしていません』
てことはお前も今考えて話しているのか。
『そうです。というか多分体の動作権限があなたになってると思います。だからそろそろいい加減目を開けてください』
それもそうだな。
目を開けて今の状況を確認する。
「『え?』」
思わず同じことを言ってしまった。でも無理はないだろう。何しろ目の前に広がっていたのはなんと森林だった。右、左、後ろ側、どこを見ても木しかない。
「『ここってまさか異世界?』」
なぜおまえと思考が被るんだよ。
『ちょっと! 私が言いたいね!』
ちょっと待てよ、俺たちってよく思考が被るよな。
昨日だって俺が妹に言ったことと同じことつぶやいてたじゃん。
『私と同じ? え、これって運命なの、そうなの、そうだよね!』
・・・心の声めっちゃ漏れてますけど。
『えぇ!? すべて聞こえちゃった!?』
うん、聞こえた。
『恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!』
まあお前がそんなんになるのはもともと知ってたけどね。
『え? なぜ知ってるの?』
お前の弟から相談受けたから。
『そう、なのね』
別に隠さなくてもよかったけどな、友達止めるとかしないし。もしかしたら血のつながっていない家族と思ってるかもしれないけど。
『え・・・こんな私でいいの?』
別にいいよ、性格がどんなのでも陽は陽だから。
『・・・』
それにお前は俺がシスコンってことも知ってるだろ。
『あら、ばれてましたか』
俺は妹の心をほとんどよめるから。
『そんなこと言ったら私もあなたの心を読めますよ』
え? それってマジ?
『ええ、マジです。読もうとしなくても読めるときありますけど』
ウソだろ嘘だろ嘘で―
「ガオー」
え?おい、今熊の声したよな。
『ええ、しましたね』
どうすればいいんだ? ちょっと待て、俺丸腰なんだけど。
『もしここが異世界だとしたら、【スキルチェック】すらできてませんからね』
こんな体で動け―、あれ?この体って性別ある?
『そういえばそんな感覚しませんわね』
そんなことはどうでもいいんだ、とりあえずあいつの処理をしなければ。
『レーダーとか出てきてほしいですね』
ああ、それさえあればわかるのにな。
え? 視界の右上の方にレーダーらしきものが出てきたぞ?
『あら、私もですわ』
ええっとあのクマとの距離は・・・5mか。は?
前を見たらクマが目の前に迫っていた。でかい。体長がこの体の2.5倍ぐらいある気がする。
『嗚呼、私たち、終わりましたわね』
うん、おわった。最後にありそうな魔法でも詠唱して死ぬか。
『それがいいですね。出たら助かりますから』
「台地よ、光よ、電気よ、我に力を与え、敵を殲滅せよ」
魔法をイメージする。手を前に出し、電気をためて放出される感じで。
「滅ぼせ!【神の雷電】!」
これでだめだったら死ぬしかないな。そして手を前に出す。
「ビリビリ/バチバチ」
あれ?音とともに手にエネルギーが集まっている感覚がするぞ?これはもしや―
『ちょっと前!もう溜まりすぎているよ!』
まずい、このままでは自分の溜めたもので自分が死ぬ。
エネルギーを打ち出すようなイメージをする。
イメージをしたたとたん、エネルギー弾が前に放出された。そしてクマに直撃し地面に倒れる。
だがそれだけでは終わらない。クマに当たったエネルギーが地面に逃げた。
『まずいですわ! 余ったエネルギーがこっちに来ます!』
まずいまずい。魔法詠唱無しでも発動できるかな?
「【エネルギーシールド】」
魔法名を呟く。もちろんイメージも添えて。
すると自分の周りにシールドのようなものが現れた。そしてエネルギーはそのシールドに吸収されていった。
「た、助かった」
急に疲労感が出てきたため、地面に尻餅をついてしまう
『すごいじゃない!陰!』
たおした?
『ええ、一撃だったわ』
よかった、生きてる。
それにしてもよく魔法が使えたな、俺。
『早く【ステータス】を見ましょうよ』
やけにうきうきしてるな。
『当たり前でしょ。異世界よ異世界。異世界だからそれぐらいあるでしょ』
お前昨日異世界行きたいと願ったか?
『ギクッ。てことはやっぱり?』
ああ、俺もだ。
『なら、私たちが願ったからここに来たのでしょうか?』
そうかもしれないが言い切れない。
とりあえず【ステータス】を見るか。
『そうしましょ!でもどうやって見るかわかりませんよ?』
確かに。うーん片っ端から探るか。
『まずは定番の【ステータス】と言葉に出してみましょう』
そうだな
「【ステータス】オープン」
『・・・何も出ませんね』
ああ。後は何がある?
『手を見るとか?』
それもあるか。手を見る。
だが何も出てこない。
『うーんあとは何があるでしょう』
あ、あれとかいいんじゃない?
『確かにそうかもしれませんね』
「はぁ、はぁ。すごく暑い」
『やっぱり陰もなのね。私も暑い」
こんな気候で長袖とかおかしいだろ。それに【ステータス】ってどうやって見るんだよ!
『もう20個ぐらい試しましたもんね』
後何がある?ステータスを想像してみるか?
『試すのはいいけどそれではさすがに―』
あ、でた。これは外に出たというより視界に現れたといった方がいいな。
『えぇ!?そんな簡単でしたの!?あり得ないと思って試してなかったですわ!』
しかもイメージした形になってる。
『ええと、レベルはどうなっているかな。』
【ステータス】に表示されていたものは―
「八丁 陰【Lv. 999】」
「は?」
「希北 陽【Lv. 999】」
『はい?』
「共通レベルアップ条件【この世界の理を破壊】」
「なにこれ? 999が最大じゃないの?」
「陰:能力解放条件【八丁 光の発見】」
「なぜ光がここに!?」
「陽:能力解放条件【希北 闇の発見】」
『闇がこの世界にいますの!?』
「ステータスチュートリアル:完了 報酬:各種項目の解放」
『各種項目?』
すると突然、レーダーだけでなくマップやショートカット欄、HPゲージやMPゲージまで出てきた。
更には【ステータス】にいろいろな項目が追加された。
「共通ステータス HP:32767
MP:800000
ATX:5351
DEF:9980
INT:個別ステータスに+65
RES:∞
DEX:個別ステータスに+30
AGI:個別ステータスに+55
LUK:個別ステータスに+50」
何だこの数値?
「もうやめよう! こんかいはこれぐらいにしよう」
『そうだね。でも【スキル】は見ておいた方がいいんじゃない?』
それもそうだな。見ておかなきゃ。
【スキル】表示を想像してみる。するとしっかりスキル欄が出てきた。
「え? なにこれ?」
『さっきあいつを倒せたのはこのおかげなんだね』
そこに書いてあったのは―
「共通スキル 創造魔法Lv. 50
参考欄:このレベルは燃費に影響します
ᅡ火属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᅡ風属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᅡ水属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᅡ土属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᅡ光属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᅡ闇属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します
ᄂ無属性 Lv. 50
参考欄:このレベルはその属性の創造可能規模に影響します」
そこに書いてあったのは創造魔法という文字だった。
「『俺たち/私たち、だれにも負けないんじゃない?』」
俺たち二人はそう思ったのであった。




