14話 それぞれの朝(陰)
前回のあらすじ:
ギルドを滅ぼした。疲れたから寝た。おやすみ。
「・・・ん。いーーーん! おーきーてーよー!」
「早く起きて朝ご飯を食べるのだ!」
「起きなきゃ遅れちゃうよ」
「うーん。もうちょっと寝させて、陽、美春、美冬」
「もう。よ-し、あれやっちゃおうか」
「大丈夫なの?」
「大丈夫なのだ! 細かいことは気にしないのだ!」
「じゃあいくよ。せーの!」
「ハム/ハグ/ハム♪」
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い! ちょっとわかったから起きるから噛まないで!」
急に首元と腕をかまれた。首元は左右二か所噛まれている。血を吸われていたら痛くないから明らかに光ではない。腕はなんか声の雰囲気が陽に似ている気がしたからおそらく陽だろう。
「ほひはいほははふいほは(起きないのが悪いのだ)!」
「ほうはほ、ひん。ほひははっはほははふいんはほ(そうだよ、陰。起きなかったのが悪いんだよ)。」
「どう?目が覚めたでしょ」
「目は冷めたけどさって、誰?」
「誰ってなに?私のことがわからないの? 私はシスだよ」
「え? シス? え? え?!」
「やったー! 驚いてくれた!」
「じゃあ昨日言ってたあれって」
「そう、私の実体を作ることができるの!」
「起きたらシス姉がこの姿で私たちの前にいて」
シス姉? いつからそんな呼び方に?
「それでこれをしようと提案してきたのだ!」
「じゃあその時から俺が起きないのは読まれていたと」
「そういうこと、私がわからないことはないんだからね」
「は、恥ずかしいからやめて」
一体なぜシスはことある事に俺を噛むんだ?
―私の悪い癖♪
何とかしてくれよ。
―いいじゃん別に。
は、はあ。
「おなかすいたのだ!」
「はいはい、食パン焼いたからそれ食べて」
いまだに状況がわからない。何で実体があるんだ? 動力は何なんだ? 何でこの世界に食パンがあるんだ?
―私が私自身を解析していたら実体を作る機能を発見したの。それで作ってみたの。まだこの体は長くは持たないけどね。一日一回ぐらいしか使えないし。動力は陰の魔力をもらってるよ。食パンも魔法を使って作った。そんな感じかな。
今更だけど実体になっていてもいつも通り話すことはできるんだ。
―できなきゃ欠陥だからね。最初はその機能を探すのに時間がかかったけど昨日ようやく見つけることができたんだ。だから今日お披露目したってわけ。ちなみにほかの三人のシスも今は実体になっているよ。
みんな解析してたの?
―うん。みんながいたからこんなに早くできたって感じかな。
へ、へー。
―ほら、早く食べようよ。初日から遅刻するよ?
はいはい。
お母さんが生きていたころの朝ご飯に似ている。
よく食パンを食べながらニュースを見て意見を言い合っていたのが懐かしい。
「早く食べなよ」
「はーい」
「どうしたの? 顔がふにゃふにゃしてるよ」
「昔を思い出していたんだよ」
「昔が付くほど生きてたっけ?」
「そこは気にしないのが普通でしょ」
「陰はそういうのが得意なんだから」
「なんか言った?」
「いや、何も」
嗚呼、今みたいな時間が長く続いてくれればな。
いろんな事情があってあまり続けられないのが悲しい。
―「悲しい後には幸せが訪れる」じゃない?
そうかもね。今はこの時間を堪能しますか。
「陰、時間」
「時間? 何か気になるの? 美冬」
「時計見て」
「時計?」
現在時刻 08:50
登校終了時間 09:00
授業開始時間 09:15
「え?」
「だから早く起きなっていったのに」
「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「着替えさしておくよ」
「ありがとう。もう二人は準備終わった?」
「終わっているよ」
「急げ急げ!」
そのあと、時間には間に合ったが陽に怒られることになったとさ。




