1章最終話(10話) 英雄の喜び
前回までのあらすじ:
陰コース→気づいたら宿にいた古代竜が人型になっていた。俺になついていた。仲間になっていた。
光が吸血鬼だった。カシさんヤバイ。
陽コース→気づいたら宿にいた。闇が吸血鬼だった。隣の部屋から悲鳴が聞こえた。
カシさんが何か隠している気がする。
光コース→お兄ちゃんの血を吸いすぎた気がする。カシさんがやってきた。魔法をお兄ちゃんに当てた。
お兄ちゃんごめんね。
闇コース→姉さんが起きた。元気そう。隣から悲鳴が聞こえた。ちょっと怖い。
9話~9.75話のすべてを見てからこの話を見ることを推奨します
「うう、ひどい目にあった」
「でも何で結界を張れなかったの、お兄ちゃん?」
「あの状況で結界は張れないよ」
「なんで?」
「もう終わったことだからいいでしょ」
「むぅ」
あれからしばらく再起不能になったが何とか起きてきた。
―システムログ。私の設定をすることを推奨します。
あれ?君設定なんてできたの?
―可能です。名称や人格、感情を持たせるかなどが設定できます。
なるほどね。じゃあ設定してみようかな。
よし、こんな感じかな。
―この設定でいいですか?
うん、いいよ。
―了解。設定を適用します。
設定をしているといつの間にか闇たちが待っているフロントに着いた。
「あ、兄さん。なんか疲れてるね」
「そりゃあ疲れるよ。起きたら光が血を吸っているんだもん」
「やっぱりそうだったんだ。それでカシさんに倒されたと」
「何でそこまでわかるの?」
「だって悲鳴が聞こえたしマップでカシさんが魔法を使用しているのは分かっていたから」
「マップってそこまで便利だったっけ?」
「情報量が多すぎるから初期設定で機能の制限をかけているだけでしっかり使えれば便利なんだよ」
「ふーん。今度設定を見てみようかな」
「うん。それがいいと思う」
「あ、陽」
「おはよう、陰、光。朝から災難だったね」
「まったくだよ」
「誰だってあんなことをしていたらああなるだろう」
「いや、カシさんだけだと思いますよ」
「そなた達がそうでないだけでは?」
「いや絶対カシさんだけですね」
「いいやそなた達だけだな」
「あなただけだね!」
「そなた達だけだ!」
「まあまあ二人ともそこまでにしようよ」
「そうだよお兄ちゃん。ここで争っても何も生まれないよ」
「カシさんも兄さんも言っていることを今確かめる方法はないんだから」
―精神的な疲労を負うと思うよ。
まさかシスにまで言われるとは。
―私が反論してはいけないなど言われたことはないからね。
まあ確かにそうだけどさ。
「それよりカシさん、話とは?」
「ああ、座りながら話そうではないか」
相変わらず口が悪い。何とかなんないのかな?
―解決策は見当たらないね。
どうしたものか。
―慣れるのが一番だよ!
それじゃあ慣れるまで我慢しますかね。
「話というのは簡単なことだ。まずはこの街で起こっていることを話そう」
なんかいい話ではなさそうだな。
―でも気持ちはいい話っぽいよ。
シスって気持ちを読み取ることができるの?
―一応できるよ。でもあっている確率は99.99%しかないの。
それで「しか」はおかしくないですかね?
「お前たちは竜や敵の大群からこの街を守っただろう。今は竜は人型になりミハルとミフユと名前をもらい仲間になっているのだが。だからお前たちは英雄とこの街では呼ばれることだろう。だから外を出歩くとわちゃわちゃされることだろう。だが街の人がしっかり姿を目視できたのはそなたたちが言うには【オーバークロック状態】という姿しか見ていないだろう。だからあまり有名にはならないだろう。ところがだ」
どんだけ話がひっくり返るんですか。
「お菓子美味しいのだ!」
「食べすぎだよ、ミハ」
「ミフが全然食べないだけなのだ」
あはは。美春と美冬は元気だね。
起きた時に光に教えてもらったがいまだに信じ切れない部分もある。
そのうち慣れるだろう。
「ギルドにいたギルドマスターのような偉い人が知っている可能性はある。さらに姿はわからなくても名前を言えばおそらくこの街の全員がわかるだろう。あと困ったことにこの事が王都にも知れ渡ったらしい。もしかすると王の側近のようなものが訪れてくるかもしれない」
「なんか私たちすごいことになってません?」
陽にしては珍しい意見のような気もするが気のせいだろうか?
―この世界に来てから変わったと思うよ。
異世界って不思議だな。
「試しに街を歩いてみてはどうだ?この宿に宿泊していて六人組だというのはこの街の住民に知られているからすぐばれると思うぞ」
いやさっき名前を言えばわかるといいましたよね。その話し方なら話さなければばれない感じでしたよね。
「あと一つ。わたしからお願いがある」
うん?
「散歩してきますね」
「ああ、あまり人をぞろぞろ連れるでないぞ」
「できればします」
「さあ運命?の扉を開こう。準備はできた?」
「もっちろん。私はお兄ちゃんとならどこまでもついていくよ」
「無論、俺も同じだね。姉さんとならどこまでもついていくよ」
あ、陽なんだ。
「私はインと一緒にお出かけしたいのだ!」
「私はインが良ければ何でもいいよ。インと一緒なら何しても楽しいしね」
光、闇、美春、美冬の順番で返事を言った。
そして陽はというと。
「私は陰と一緒ならどこへでも行くし何でもしてあげる。ただし、加減はしてね。私はか弱い女の子だからね!」
いったいどの口が言っているのやら。
「ちょっと!私のことを馬鹿にしたでしょ!」
「そんなことないって」
「陰のことなら何でもわかるんだからね!」
「ハイハイごめんって」
「今度また同じようなことやったらお仕置きなんだからね!」
陽のお仕置きはいろんな意味で怖い。
「何か言った?」
「いえ、なにも」
「それならいいんだけど」
「さあ、冒険の始まりだ!」
「とは言ったものの、何で宿を出てすぐに全速力で走らなきゃいけないの!?」
「お兄ちゃん人気者だね」
「それは光も同じでしょ」
「陰と追いかけっこだ!」
「あまり困らせないようにね」
「もう魔法を使いたいぐらいだわ」
「陽、おさえて」
「抑えられるわけないでしょうが!」
俺たちを追いかけている人たちはいろんなことを大声でしゃべっている。
いや、叫んでいるっていた方がいいか。
「まってー!英雄様!」「私にサインを!」「うちの子供の名前を決めてください!」「私と結婚して!」「私とパーティーを組んでください!」「あいつを殺せば俺が英雄だ!」
ちょいまて、一人物騒な奴がいたぞ。
「やばいやばい、これ止まったらあかん奴や」
「にしても美春と美冬はよく疲れないね」
「竜の体力はすごいですから」
「・・・やっぱり魔法使おうかな」
「ほら、陰も結局そうなったじゃん」
「確かにそうなるな。よし、みんな手をつないで」
「「「「「了解!」」」」」
みんな声をそろえなくてもさあ。
「それじゃあ行くよ」
「「「「シス!魔力隠蔽解除とともに飛行を最大出力で発動!」」」」
――――魔力隠蔽を解除。飛行を発動しちゃうよ!/します/するよ/開始します。
「「「「「「いざ!空の旅へ!」」」」」」
~その頃、カシさんはというと~
「まさか待ち伏せしている人がいるとは思ってもいなかったね。でもこれはこれで面白いかな。さて、あの六人を放っておくのはもったいなかったからとお願いしたけど承諾してくれるとはね。前世からの付き合いだ。最高の居場所を作ってやろう。もちろん、生徒としてではなくて教師としてだ。さすがに生徒として入れたら教えることがないからね。そしてこの世界を変えてもらわなきゃ。俺の後継ぎがいなくなったままは困るからな。にしても僕は演技がうまくないか?もともと正体はわかっていたけど、創造魔法には驚かされたね。とりあえず学校長として頑張りますかね。でも吸血しているときは勝手に体が動いたよ」
カシさんが四人にお願いしたのは間もなく開校となる魔法学校の教師だった。
そして一体カシさんは何者なのか?
次の投稿は7/27の20:00です
次は作者が話す設定についてです
本編ではありません




