8話 1つと1つの戦闘開始(陰)
前回までのあらすじ:
敵が攻めてきた。どうやら陰と陽を離すらしい。
視界が暗い。俺は目を閉じているのか。
何かが違う。体の感覚が違う気がする。なんだこれは。
目を開けるとそこにはよく見たことがある人がいる。
光でもなく闇でもない。
そこにいたのは、陽だった。
「あ、お兄ちゃん。起きたんだね」
左から声がした。そこに光がいた。反対側には闇もいる。
問題は正面だ。なぜ陽がいる。
「どうやら記憶があいまいみたいだね」
「しょうがないんじゃない。あの人も言ってたから」
記憶を探り出せ。記憶を復活させろ。
―警告。500メートル圏内に敵勢力が接近しました。
は!思い出した。
てことは俺たち
「うん。離れられたよ」
本当にできたのか。なんか信じられないな。
「とりあえず兄さんと光は先行ってて。俺は姉さんと一緒に行くから」
よっしゃ。いっちょリハビリみたいな感じで頑張りますか。
「まだ感覚がしっかり戻ってないみたいだね」
そりゃーそうだよ。しばらく一人ではなかったから。
「でも別れたおかげで今までのお兄ちゃんの体になったじゃん」
確かにね。でも魔法の威力も落ちてるんでしょ?
「確かにそうだけど今はリミッターがかかってるから外したら結構な威力は出ると思うよ」
それじゃいっちょ暴れましょうか。
「これでこそお兄ちゃんだね」
城壁の真上に着いた。状況は大変だ。
ギルド所属の冒険者たちが到着し、弓や魔法を使って相手の攻撃範囲外から攻撃をしているが、敵はそれをよけようとしていない。なぜなら敵の装甲がすごくかたい。
これは弓に強化をかけてもこの弓だと貫けない感じだな。
兵士や冒険者からは見える位置にいるが透明になっているので俺たちは見つからない。
「これは兵士たちではとても削れないね」
これだけ装甲が固いとなると俺でもしっかり考えなきゃ貫けないな。
「じゃあマシンガンあげるよ」
え、マシンガン?
「弾は魔力の銃だよ」
それ景色がやばいことにならない?
「大丈夫。これは兄さんが剣につけたように体には害がないけど痛みは感じるものだから」
あっそう。
「でも単体だと強いけど同時に複数相手するのは結構大変だから魔法でコピーしてそれを魔法で操ってね」
それ軽くむずかしいこと言ってませんかね。
「大丈夫。お兄ちゃんならできる!」
わかった。やってみる。
「もうそろそろ撃った方がいいかな」
了解。
もうめんどくさいから直接イメージ出しちゃお。
―イメージ確認。魔法展開開始。同時に魔力隠蔽を解除します。
イメージしたのは俺の頭上付近に銃をコピーしたものを並べ、魔法で操作するというイメージだ。
作成と同時に透明化も切れてしまった。
「なんだあれは!」
「全員、あの飛行物体を狙え!」
いやいや、味方だよ。この世界には銃がないのか。
『ないわけではないけど知ってる人が全然いないからそうなってるんだよ。そもそも人間が空を飛ぶのすらあり得ないから』
ふーん。ところで今どこにいるの?
『今は戦闘員の人を説得しに行ってる。合図したら敵に撃ってくれる?』
わかった。
『だから今は銃を非表示にしといて』
「あの人は害はありませんから」
「だが空を飛んでいるのだぞ。魔王の間違いではないか?」
魔王がいるのか。
「いいえ。魔王では決してありません」
「じゃあなぜ空を飛べている!あいつが魔王でないというなら亜人か人間だろ!飛べるわけがない!」
「人間で私の頼れる兄です」
頼れるとか言われたよ。前世はどっちかというと振り回されていたからそんなこと思ってもいなかったけど。
『兄さん、準備はいい?』
もちろん、いつでもどうぞ。
「それじゃあ今から敵ではないと証明してあげます」
『銃を表示して』
あいあいさー。
―コマンド確認。実行。完了。
「いったいなんなんだあれは!」
「まあ少し見ていてください」
『いくよ』
俺はいいよ。
「それでは行きます」
さあ無双の時間だ!
「撃て!」
照準確認。魔力出力。マシンガン、アクティベイト!
―マニュアルモードに移行します。
街中に銃声が広がった。魔物の悲鳴とともに。
「何だこの威力は!」
「これなら勝てるのか?」
「ええ、きっと勝てるでしょう。なのであなたたちは住民を安心させてあげてください。そうでもしないとこの音に驚いてパニックになってしまいますよ」
「恩に着る」
そういって兵士や冒険者たちは城壁を後にした。
「さすがは光だね」
それが聞こえたのかは知らないけどこっちを向いてガッツポーズをした。
嗚呼、俺は幸せだ。
「もう出力最大にしていいよ」
あれ?いつの間に隣に来た?まあいいや。
―威力設定。
最大威力。連射数も同時に最大。
―設定完了。
最大にしたら一秒に10体のペースだったがそれが倍になった。魔力消費も上がったけど。
あれから十分くらいたった。敵勢力は数を減らし、100体程度にまでへった。だが問題はここからだ。
もうすぐ古代竜が到着する。どうしたものか。あいつはどう処理しようか。
古代竜は二匹いる。そして両方こっち側にいる。
「とりあえず銃を止めてくれない」
はいよ。でも何で?
「ありがとう。残ってるやつは私が処理するよ。お兄ちゃんは魔力を回復しておいて」
大丈夫?
「私を誰だと思ってるの」
あっはい。すいません。
「それじゃあ行ってくる」
ああ、大丈夫かな?俺怖いよ。これでだめだったらどうすれば―
「ただいま」
え?
早くないすかね。
「別に100体だったらこれくらいで終わるでしょ」
光を本気にさせてはいけない気がする。
「うん?なに?」
いや、なんでもないっす。
―警告。膨大なエネルギーを感知。
完全防御結界、最大出力で展開!
間に合え!間に合え!間に合え!間に合え!
「どうしたの?え、あれはまさか!?」
前からものすごいスピードで古代竜の攻撃がきた。それが結界に衝突した。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ものすごく強い。気を抜けばすぐ敗れるだろう。いつになったらこの攻撃は止むんだ。
すると光が俺の背中に両手を当てた。
「私も手伝うよ!」
ありがとう。
なんでこの攻撃が十五分も続くんだよ!
「なんて力なの。これじゃあいつ結界が破れてもおかしくないない!」
「このやろぉぉぉぉぉぉぉ!」
魔力が赤字だ。最大出力だと回復がとても間に合わない。だがこうしないと負ける。確実に負ける。じゃあどうすれば。
うん?背中からの補助が大きくなったような。
「二人で頑張ってないで呼んでよ、兄さん」
闇!手伝いに来てくれたの?
「もちろん、負けてもらっては困るからね。それに加わったのは俺だけじゃない」
「一人で頑張ってないで私も頼ってよね!陰!」
この声は、陽!
「さあこいつを早く倒して寿司を食いに行くわよ!」
は?寿司?
「じょ、冗談わよ」
今笑える冗談を言わないでくれ。
「ごめんごめん。ちなみに私以外にもまだいるよ」
え?陽以外?
「まさかインがこんなにすごいものとは思ってもいなかったぞ」
カシさん!
「だが私はどうやって手伝えばいいのだ?お前たちが強すぎて入る隙間がないのだが」
「じゃあ魔力を貸して下さぁぁぁぁぁぁぁい!」
話してる途中に攻撃を強くするな!古代竜!
「ずいぶん空気を読まない竜だね」
「ところでお主はだれじゃ?インと同じ魔力を感じたからさっきは手伝ってあげたが」
「私は陽です」
「ふむ。ヨウというのか」
「そんなこと話していないで手伝ってください!」
カシさんはマイペースだな。
「魔力をお主に流せばよかろう」
おお、一人増えるだけで随分違うな。
「がんばれ!」「いけー!」「竜に負けるな!」
街から声が聞こえた。応援してくれるのか。
「この街にはいまお主の味方しかおらん。思う存分暴れてくれ!」
それが聞きたかった!
「「「「【オーバークロック】!」」」」
―同時使用確認。身体合成完了。ブーストクロックオート設定。神の補助確認。レベル上限一時的解除。リミッター完全解除。創造魔法を一時的に強化。強化に伴い魔法名変更。
―魔法名:世界を破壊する破滅創造魔法
―オーバークロックに伴い姿変更。レベル変更。レベル:∞
―すべての準備が完了。【オーバークロック】アクティベイト。
オーバークロック状態の二人を見たものは全員が口をそろえて言う。
「まるで四つの光が合わさったようだ」と
自分はネーミングセンスが皆無です。




