81話目 方針会議2
家族のハプニングが続いて、半年ほど手つかずでした。
ごめんなさい。
「お前は自分の立場を分かってなさすぎる。……いいか?極端な可能性の話をするぞ。」
シリウスがあくまで仮定の話だと念を押して俺に問いかける。
「もしレグルスが、国と対立するなら、お前は、どっちにつく?」
「それは、もちろんレグル……」
「ちゃんと自分の影響力を考えてから答えろよ。俺は“誰を殺すのか”って話をしてるんだ。」
即答した俺の言葉を強い口調で遮った。
「お前は聖霊だ。絶大な力を持っている。この国の信仰の対象でもある。レグルスにつくって事は、革命の大義名分を与えるってことだ。つまり……教皇を廃し、現政府を廃し、レグルスを王として立たせるんだな?」
『革命』なんだか物語の中の話だ。実感がまるで沸かない。
教科書の中や絵画で見たことのある、革命。
シリウスは言葉を選んでくれたみたいだが、人がたくさん死ぬんだろうなって事は、バカな俺でも想像がつく。
なんで、俺はただ友達を助けたいだけなんだ。そんなつもりは微塵もない。
現状、この国の国民の大多数は幸せに、何の不自由もなく暮らしているように見える。大きな不満や圧政もなく、科学者っていう一部を除いて概ね幸せそうだ。
そこに俺のわがままで無理矢理『革命』なんて起こしたら、無益な衝突や被害を生むことは目に見えてるし。
救世主という肩書すら嫌がったレグルスが、玉座に座って喜ぶ所なんて想像もつかない。
でもだからって救う力があるのに、救わないなんてそんなこと……知らない何万人のために、友達を諦めろって?
「レグルスが今窮地に立たされているんだとしたら、それはレグルスを救世主にしてしまった……俺のせい、だろ?俺はその責任を取らなきゃいけないと思うし、救う力だってある。」
「教えてやろう、零史。もしレグルスを救世主にしてしまった事を悔いているなら、お前がしなければならないのは、救世主1人を殺す事だ。」
「……っ」
「それが最小限の被害ですむ、唯一の策だと俺は思う。」
シリウスの力強い眼光が零史を射抜く。目線を逸らさないようにするので精一杯だ。
息がうまく吸えない。眩暈がしてきた気がする。
ただの大学生だった俺には背負いきれない決断だ……だけど、考える事を放棄してはいけない。ここで放棄したら、一生RENSAの皆と一緒に居られなくなる気がする。
「あらためてもう一度聞く。もしレグルスが国に反旗を翻したら、RENSAはレグルスにつくのか?ガラヴァ皇信国につくのか?」
考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、、、、、
皆にじっと見つめられる中、俺は一人答えの出ない問いを考えようとするが、考えようとすればするほど、頭が真っ白になっていく気がする。
自分の呼吸音だけが耳にうるさく響いてくる。
小さくえずくように息を吸った俺は、何とも幼稚な責任感の無い答えを出した。
「……無理だ。無理に決まってる、俺には国を左右する決断の責任なんて持てないし、この国の事をよく知らない……、だって俺は、言っちゃえば外国人だ。平和に生きている人もたくさんいるこの国を、俺の都合で壊してしまうのは間違ってると思う。でもレグルスを殺す事も絶対にできない。」
よく小説などで主人公が苦渋の決断をするとき『爪が食い込んで血が滲むほど手を握り締める』と書かれているのを見るが、俺の拳は不安にゆれて、ズボンの裾を握ったりほどいたりしている。まるで幼稚園児がお父さんに怒られている時と一緒だ。
自分の答えに自信がない子どもと同じ。
「ド、ドラゴンの時は、時間も無かったし、RENSAの存続の危機だったから助けた。けど、もしレグルスや騎士団がガラヴァ皇信国と対立するなら、俺は聖霊としての助力はもうしない。RENSAも、いち商会としてのみ協力する。RENSAの存続が危なくなったら、すんなり皆で夜逃げしてどっかの国に亡命するってのはどうかな。」
シリウスがふっと息を吐き、目を伏せて表情を和らげる。
「わかった。RENSAのトップは零史だ。俺たちは零史の決定に従う。夜逃げうんぬんは、今は置いといて。RENSAはひとまず静観という選択を取ろう。すまないな、辛い決断をさせた」
「……ううん、これは力に胡坐をかいて好き放題してた俺に必要な事だ。むしろ気づかせてくれてありがとう」
「ま……そもそも、レグルスと聖信教が対立しなきゃ、そんな選択も必要ないんだが。」
シリウスが破顔し、少し緩んだ空気が、ベラの一言で失笑に終わる。
「まぁ~、今まで向かうところ敵なしの聖信教が、そんな殊勝な態度をとってくれるなら、いいわよぉね♪」
5年も更新してなかったのに、前と同じ人から感想をいただけたりして、感動の涙を流しています。
この作品を書き始めた当初とはかなり違う行動をキャラクター達がとるせいで、追加するたびに軌道修正に追われている気がします。





