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72話目 ハダン枢機卿


教皇にレグルスの説得を願い出た枢機卿はハダンと名乗った。白髪に柔和な笑みと落ち着いた話し方で、とても紳士的だ。

レグルスは救世主と言えど、所詮は年下で尚且つ枢機卿より身分は下。にもかかわらず枢機卿の対応は丁寧で、好感がもてた。


そんなハダン枢機卿を先頭に、数名の聖騎士に連れられ、レグルスは執務室へとやってきた。この部屋の主であろうハダン枢機卿は、奥の執務椅子に座りレグルスをにこやかな笑みで迎える。


「突然の事で戸惑っただろう。まぁ座ってくれ」


「失礼いたします」


レグルスは勧められるままに、近くの椅子へと座る。聖騎士は座らず、扉の前に立ったままだ。

レグルスはちらりと聖騎士を振り返ったあと、ハダン枢機卿へと向き直った。


「やはり、腕輪(コレ)を渡さずにラーヴァへと帰していただく訳にはいきませんかね」


「君はいまや他国から狙われる身、そんな君をラーヴァへと帰すのは難しいのだ。……だが、腕輪はどうにかなるかもしれん。もともと13枢機卿の中で、君から腕輪を奪うことについて、賛成派と反対派のふたつに割れていたのだ。」


「なるほど」


「腕輪は聖霊より授かりしも。私は、聖霊が君を認めて渡したに違いないものを奪うのは反対だったのだ。教皇へいま一度訴える時間をくれないだろうか」


「それは願ってもないお言葉ですが、しかし、教皇の意思は固いように思えました、何か手があるのですか?」


「君は私の監督下に入れ、責任を持って保護する……と訴えるつもりだ。枢機卿全員が賛同してしまえば、教皇と言えども覆すことは出来ない」


「私が、ハダン枢機卿の保護下に……ですか?」


レグルスはスッと目をすがめた。

今回の皇都行きは早まったかもしれない。ハダン枢機卿はレグルスを自陣営に引き込もうというのだ。


レグルスは、アルナイル殿下より忠告されていた事を忘れていない。

救世主(レグルス)を味方につけようとする者は、どんなに聖人君子に見えようとスパイの疑いをもつ。

さて、いったいどうやって多くの情報を引き出せばいいのやら。

ここにリゲルが居ればな、と思いながらレグルスは思考を巡らせた。


もしハダン枢機卿がスパイならば、目的は『教皇の座』……先程の謁見の一件でも分かる通り、13枢機卿の中でも大きな発言力を持っているようだ。もし救世主を取り込めれば、民衆からの指示もあつくなり、次代は彼に約束されたも同然だろう。


すると、次に考えられるのは現教皇の暗殺か。教皇の座が空席にならないと次代も無い。

ハダン枢機卿とルカー王国が繋がっているとするなら、ルカー王国の望む……『ガラヴァ皇信国とジヴォート帝国の戦争』を起こし、戦時のごたごたに紛れて暗殺、とかだろうか。


しかし、その為のドラゴンによるガラヴァ皇信国の被害は騎士数名のみで、しかもドラゴンはどこかの国に属していたわけでも無い。これをきっかけに戦争を始めるとも思えなかった。先程の教皇の話からも、いざ戦争を始めようとするときに『大きな力』を手放すとは思えないので、こちらから戦争をしかける予定は無いのだろう。


だがもし、ルカー王国の望む『戦争』を無理矢理にでも進めるならば……言い訳はいくらでも思い付くのではないだろうか。

『ドラゴンの狂暴化の真犯人』とか『異教徒国家』とか『秘密裏に科学者を支援している』とか。

戦争の理由(建前)なんて、そんなものである。


「貴方の下にもつきたくないと申し上げたら、どうしますか?」


レグルスは睨み付けないように気を付けながら、ハダン枢機卿を観察する。

対外的に戦争を起こす理由が無い今、『大きな力』を求めるのは争いを仕掛けようとする者だ。


「それは困った。私の監督下に入らないと言うのなら、道はひとつだ。残念だが反逆者として捕らえるしかないんだよ」


ハダン枢機卿は、チラリとレグルスの後ろの聖騎士を見る。すると扉の前に立っていた聖騎士がレグルスを挟むように立ち、白い小さな結晶の埋まった箱を片手に構えていた。その箱には筒のような物がついており、その筒で照準を合わせるような作りになっているようだ。

見たことも無い武器にレグルスは顔をしかめた。


「これは?」


「ドラゴンを倒した救世主に、丸腰で何の対策もしない訳が無いだろう?なに、命までは取らんよ、魔力を枯渇寸前までいただいて大人しくしてもらうだけだ」


ハダン枢機卿の口角があがり、瞳の鋭さが増す。ただそれだけなのに、先程までの穏やかな印象は欠片も無くなった。




おじさんしか出てない!!(泣)

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