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63話目 命懸けでこられたらどうしよう。


俺たちと、サディラとサディルの兄弟との話を遮ったのは、朝食を食べたレストランのウエイトレス。ナシュちゃんだった。


「何で、ナシュちゃんが……?」

「……わたし、零史に爆発事件の話をしちゃって、もしも……こっちに来てたら、危ないと思って。念のため見に来たの、ダメじゃない。」


いったい何処から聞かれてしまったのだろうか、事と次第によっては2日の猶予すらもなくなるだろう。俺たちを心配してくれたナシュちゃんには本当に申し訳ないが……。

俺は流れる冷や汗に気づかれないよう、必死で笑顔をつくる。


「っ、あははー!ごめん、好奇心でつい。でも道に迷っちゃってさ。」

「そうです。たまたま会ったこの方々に道を聞いていました。」

「もー、良かったよ~。もし爆破事件の科学者に出会っちゃってたら、どーしよーかと。殺されるかもしれないんだよ!」

「……はは、は。ありがとうナシュちゃん。」


どうやら爆破事件のくだりは聞こえていなかったようで、とりあえずひと安心である。だが、早急に兄弟とナシュちゃんを離さねばならないだろう。


「職人街ちょっと暗い雰囲気だし、道に迷ったしでナシュちゃんが来てくれて助かったよ。帰り道教えてくれないかな?」

「いいわよ、男の子だからしょうがないけど、大冒険はこのくらいにしてね。」

「はい、ごめんなさい。」


ナシュちゃんの視線を遮るように前に立つ。彼女の表情にディールとサラへの疑いは見てとれないが、とにかく路地裏から離れようとナシュを方向転換させ「早く行こう。」と、その背を押した。


その時、カカカカッ!と金属が石壁に当たる音が聞こえたと同時に左肩に違和感を覚えた。鋭い痛みとそして熱を感じて見た肩には投げナイフが刺さっていた。


「……いたいたいたいたい痛い痛い!!なんでっ?」

「零史、大丈夫ですか!?」

「大丈夫!?……何で零史を。」

(傷を見ると痛みが増すって本当なんだなー!)


ルナとナシュちゃんが、俺に刺さったナイフを見て慌てている。ナシュちゃんに当たらなくて良かった。後ろのルディたちも慌てているが、当たらなかったようで安心する。

ナイフは細く見た目よりも浅かったようで、思ったほど血でていない。とりあえず引き抜いて傷口を右手で抑えると、ナイフが飛んで来た方向を睨んだ。


いつのまにか路地裏の入り口を塞ぐように立つ、3人の影が無言でナイフを構えていた。俺はナシュをかばうように前へ進み出ると、彼女は涙目で俺の服の裾を掴んだ。トキメいている場合でないのは分かっているのだが可愛い。

邪な考えを振り払うように顔を振り、影に集中すると、俺は背を向けたままルディたちに叫ぶ。


「ルディ、2人をつれて!逃げろ!!」

「はっ……はいぃ!!」


ルディが慌ててサラの車イスを押し、ディールがそれを追いかける形で走っていったのだろう。その音を、俺は影を睨み付けたまま確認する。ルディには通信機を渡しているから、3人で逃げてくれれば後で落ち合う事は簡単だ。


「行かせません!」

「なっ!?」

「ぐぅっ!」


ルディたちを追いかけようとした影を、ルナが引力でその場に縫いとめ、足止めをしていた。

(さすがルナ。)


本当はナシュちゃんにも逃げて欲しかったが、俺の服の裾を掴んだまま硬直していて難しそうだ。

ルディたちの足音が完全に遠ざかると、俺は左手をダランと下ろしたまま、右手で宙を横一閃に切る。


極小之闇(サテライトダーク)

「……っ!?」

「は!?」

「え!零史の魔法……なの?」


空中に無数のピンポン球くらいのブラックホールが出来る。影たちは見たことのない魔法にどう対処すれば良いのか戸惑っているようだ。背後のナシュも驚きに目を見開いている。


(とりあえずサラとディールは逃がしたけど、こっからどーすれば良いんだ!?)


影の1人が俺に向かってナイフを投げてきた。小さなナイフは極小之闇(サテライトダーク)に引き寄せられていき消滅した。未知の魔法に対する様子見だろうが、この能力が簡単に理解できるとは思えない。むしろ、理解した時は、ブラックホールの恐ろしさに敵対しようとは思わないだろうが。


「それに触ると死んじゃいますよ?いま逃げれば命まではとりません。」


ついポロッと出てしまった言葉に心の中で悶絶する。何を言っているんだ俺は。まるで悪役のような台詞である。皆の悪役っぽさが俺にまで感染(うつ)ってしまったに違いない。

撤退だけを進めれば良かったと後悔しても遅い、ブラックホールは手加減が難しいのだ。まだ人殺しにはなりたくない。


(命がけでこられたらどうしよう!)


影たちは、黙ってナイフを構えたまま動かない。俺とルナは影をにらみながら、じっと相手の出方を待っていた。


「きゃっ、きゃぁぁーーー!」

「ナシュ!!」


ふと、背中に感じていたナシュの感覚が無くなった瞬間、悲鳴が聞こえる。俺は咄嗟に振り返り、手を伸ばしたが1歩遅かった。

俺たちの背後から他の影が忍び寄っていたのである。ナシュはどこからか現れた新たな影に捕まり、その喉元にナイフを当てられていた。




ネタバレ禁止派の方には怒られますが……

人に映画をすすめられると、何故オススメなのかあらすじを最後まで聞いてから観に行く派です(笑)

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