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62話目 なぜここに居るのか。


「もしかして、見つかってないとでも思ってたんっすか?」

「……え?えぇ?なんで!?」


そうか、俺たちから見て背を向けていた親方たちはともかく、壁を背にして相対していた兄妹はこっちを向いていた訳で。


(俺たちから見えるという事は、向こうからも見えてるという事なわけで……。)


トーテムポールのように顔を並べて覗きこんでいた俺たちは、すごすごと物陰から出る。


「「「……。」」」

「あの……ですね、これには深ぁーーーい訳がありまして…………ごめんなさい!!」

「すみませんでしたー!」

「本当にごめんなさい。」


俺たち三人はとりあえず、横一列で深々と頭をさげた。


「……ふっ、ふふふふふ。」

「サラ……笑い事じゃないぞ。」

「大丈夫よお兄ちゃん、ちゃんと謝れる人は良い人なんだから。」


言葉は通じなくとも、何となく雰囲気で謝ってるのは伝わったようだ。俺たちを見て、妹のサラが笑い出す。兄のディールは、困った顔で妹をたしなめていた。ツボにはまってしまったようで、サラの笑いは止まらず、ディールは「笑いすぎだぞ。」とあきれている。

頭をあげたルディが、そろりと手を上げて二人に質問を投げ掛けた。


「あのー……見つかったついでに1つお聞きしてもいいですか?」

「なんすか?」

「お二人は何で、街を出ていかなきゃならないんですか……?」

「「……。」」


ルディの質問は、俺たち3人ともの疑問だ。それを聞いた兄妹の眉間にシワが寄った。やはり、あまり他人に聞かれたくない事情があるのかもしれない。


「ちょっと前に……ある事件があったんすよ。」

「それで、私たちが『科学者』じゃないかって噂がたってしまって。」

「もしかして……爆発事件ですか……?」

「観光客にまで伝わってるのかよ!?あんな小さな爆発で……。」

「ちょっとお鍋が吹き飛んだだけなのに、こんなに早く噂が広がるなんて……早くこの街を出ないと。」

「お鍋が爆発……?」

(いったいどんなデンジャラスクッキングを……?)


俺たちはディールとサラの言葉に、もしかしてこの二人が探していた科学者かもしれないという気持ちを抱く。


しかし、『科学者の噂』と『街を出ていってくれと言われていた事』の関連性が弱い気がした。それに、この国はガラヴァ皇信国より科学への規制が厳しいと聞いていたが、追放だけなは処刑より厳しいとは言いにくいのでは無いだろうか?

首をかしげている俺に、ルナが眉根を寄せた顔で教えてくれた。


「ジヴォート帝国では、例え噂や疑い程度であっても、科学者は家族も……その友人知人まで皆殺しです。」

「なっ……!」

「過去には、間欠泉を堀り当てた作業員が疑われ、その商会ごと処刑された事もありました。後に自然現象だと分かりましたが……。」

「…………は?なんだよ、それ。全然笑えねーぞ。」


俺は、そのあまりにも馬鹿馬鹿しい話に、怒りを覚える。前からモヤモヤしていた事だが『分からないモノを全て科学者のせいにする』この世界の人間に恐怖すら抱いている。


「このままじゃ職人街のみんなが巻き込まれてしまう。だから出ていくのよ。」

「俺と妹は身寄りがないから、家族といっても二人だけだし。友人も親方たちだけだ。」


俺は、この二人に何か出来ないだろうかと考える。だが、科学者と確定した訳ではない、もしただ勘違いされているだけなら、本当に命を狙われているRENSA(レンサ)の仲間に勧誘するのはダメだ。俺が何を言えば良いのか迷っている間に、ルディが1歩二人に近づく。


「どこか、行くあてはあるんですか?もし無いなら僕たち力になりまふ。ガラヴァ皇信国のラーヴァから来ました。」

「ありがたい申し出ですが、今度は貴方たちを巻き込む事になってしまいます……。」

「僕たちと行く方が、危ないかもしれませんよ?」

「貴方たちは、いったい……。」

「2日待ちます。」


ルディのその言葉は、さっきの親方と同じ言葉だったが、全く違う響きだった。真摯に兄妹を見つめるルディの瞳が、前髪の隙間から見えた。


「……ありがとうございます。」

「俺は兄の『サディル』、こっちは妹の『サディラ』。職人街で馬車の部品を作ってい……た。もしかしたら、これっきりになるかもしれないけど、『ディール』って呼んで。」

「私のことは『サラ』と。」

「僕は、アルデバランです。どうか『ルディ』と。」

「お兄ちゃんと音が似てるのね。」

「ははっ、ほんとだ。」


車イスの女性に優しい笑顔で対応するルディは正しく優しいお医者さんに見えた。そして、振り返り「僕の仲間の零史とルナだよ。」と俺たちを紹介してくれる。俺とルナはそれぞれ自己紹介をして、ルディに習い笑顔を浮かべた。


「いますぐ決められる事じゃない、俺たちにも考える時間をくださ……。」

「何でここにいるの、零史さん!!」


突然、後ろから高めの女性の声に名前を呼ばれた。ハッと振り向いた俺の前に立っていたのは。驚きに顔を染めるナシュちゃんだった。





美味しい食べ物の話を読むと、自分の料理や食事の描写を書きたいなあと思いますが、料理が自己流すぎて、皆さんの食欲を沸かせられなさそうで断念しています。

もっとアッツアツで美味しそうな食事を書けるように、3分クッキングをガン見してきますね。

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