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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #2
8/206

Part 2-2 Eye Without Emotion 冷ややかな視線

Росси́йская Федерaция Северный Московский Лев свиброво район -Разработка и развитие компании сухопутной войны.16 Октября, 2018 в 9:15

2018年10月16日9:15 ロシア連邦 モスクワ州モスクワ北部ラヨン・スヴィブロヴォ地区 陸戦兵器研究開発会社



 何の装飾性もない素の大きなコンクリート製建造物の前に一台の黒い大型メルセデスが止まると、後席のドアが開き厚い外套がいとうに身を包んだ短い金髪の女が降り立った。



"Полковник, пожалуйста, подождите. Я буду сопровождать тебя."

(:大佐(PL)、お待ち下さい。警固に付きます)



 運転席と助手席の男らが振り向いた。



"В этом нет необходимости. Ты ждешь Подожди на машине."

(:要らぬ。おまえ達は車で待て)



"Да, сэр."

(:了解!)



 2人が返事をし困惑げな面もちで一瞬顔を見合わせるのを後に大佐(PL)と呼ばれた女はドアを軽く突き放し閉じた。そうして大きな4角い建造物の正面に唯一あるドアへ歩き窓1つない素打ちの壁へ視線を走らせた。



 建物はロシア陸軍省の兵器研究所の1つ。窓1つないのは機密保安度の高さの表れ。



 だが彼女が訪れたのは、陸軍に所属してるからではなかった。



 彼女の名はレギーナ・コンスタンチノヴィッチ・ドンスコイ──ロシア対外情報庁(S V R)|特殊部隊ザスローン(/Заслон)所属大佐(PL)だった。



 彼女は観音開きの強化ガラスドアの片壁にあるATMを小型化したような端末基の前に立つと、胸ポケットからIDを取り出し端末のスリットに滑らせた。途端に液晶画面が切り替わり出された指示に従い彼女は端末のテンキー横にある小さなパネルに手のひらを当てた。わずかに間をおき再び液晶画面の表示が変化すると同時に強化ガラスドアの方からソレノイド・ロックが作動する小さな音が聞こえた。



 かさず彼女はドアを押し開き中へ入り細い廊下を歩き始める。



 通路は人影もなく、照明は間隔が離れた丸いスポットが間をおいて通路の1部分いちぶぶんを照らしているだけで、ともすれば暗かった。



 レギーナは大股で通路を奥へと向かった。



 時折、左右に鋼鉄製の扉がある。



 それらでどのような研究が行われてるかは、まったく意識にない。



 ただ、1番奥の扉の先に用があった。



 数分歩き、突き当たりまで歩いた。大型金庫の扉のようなそれの前に立つと彼女は扉上のビデオカメラへ顔を向けた。だが数分がたっても変化はない。



"Лавре́нтий ! Открой это ! В противном случае подчиненные изо всех сил взорвут дверь !"

(:ラヴレンチ! 開けろ! さもないと部下が全兵力を持ってして扉を爆破する!)



 まるで嫌がって従うようにわずかに間をおいて重厚な扉が手前に開き始めた。



 レギーナは扉が全開する前に広がり出した隙間に回り込み、身体を斜めにして中へ入り込んだ。



 部屋は広く様々な測定器や工作機材が置かれていた。だが機械工場というよりも、医療現場のような雰囲気があった。部屋中央には乱雑な機器が取り囲むテストベッドがあり、機械から何本ものチューブやコードが這い上がっていた。



 そのテストベッドの傍らに立ち、ベッドに載ったものへ小型の測定器を片手にプローブを操る白衣の男がいた。



"Регина, почему ты всегда приходишь в нужное время ?"

(:レギーナ、お前さんはいつもどうしてこうもタイミング良く来るんだ?)



 男は顔を向けずに背後に歩いてきた彼女へ声をかけた。



"Не смотри на Служба внешней разведки легкомысленно. Ты один из наших стран."

(:対外情報庁(S V R)を舐めてもらっては困る。君とて国民の1人なんだぞ)



 国民すべてを掌握するつもりなのかと、それを耳にしてラヴレンチは一瞬彼女をにらみテストベッド傍らのコンソールに手を移し、キーボードを操作した。



"Полковник, Я сделал предыдущий прототип аутсайдером."

(大佐(PL)、前モデルを噛ませ犬に使っただろう)



 皮肉った言い方にレギーナは目を細めた。



"Вот об этом я и говорю. Это что ? Он не двигался половину того времени, которое вы сказали на сцене. Нет нужды в бесполезности. Я хочу то, что может выполнять нужную мне работу в ключевых точках ! Давай, внеси свой вклад !"

(:あれか。現場に出して貴様の提示していた時間の半分も持ちこたえなかったぞ。役立たずは必要ない。適所で必要な働きさえできればよい! さあ、貢献こうけんしろ!)



 彼女が言い切った前でモニターが切り替わり、起動シークエンスのマシン語が素早く表示されては画面下に呑み込まれてゆく。モニター言語は一瞬滞りを見せUNIXのコードに切り替わり、OSが引き継がれた事を意味し、次々に高等言語処理プログラムが走り出すと、元の高速スクロールに戻った。



 認識:コード AC-Automaton-Model M-8-002

 変数域確保:3Tbytes

 視覚変数域割当:1Tbytes

 状況分析シークエンス開始

 モード:メンテナンス

 第1認識対象:顔面構成要素解析

         データベース検索

        該当率98%

           ラヴレンチ・ペレニニョフ

            陸戦兵器開発社1等研究員

       変数セクタ23038に置換



 第2認識対象:顔面構成要素解析

         データベース検索

        該当率87%

           レギーナ・コンスタンチノヴィッチ・ドンスコイ

            ロシアSVR(:対外情報庁)特殊部隊ザスローン所属大佐(PL)

       変数セクタ23102に置換



 移行:マルチタスクモード

 作戦指示:ナシ

 殲滅対象:ナシ

 現在位置:ロシア連邦 モスクワ州 モスクワ北部ラヨン・スヴィブロヴォ地区 陸戦兵器研究開発会社 第3研究棟 オートマタ開発部 1号テストベッド

 指示要求:音声伝達





"Пожалуйста, введите стратегию."

(:サクセンヲ インプット サレタシ)





 2人が見守る中、『Mー8』が起動し上半身を起き上がらせると情報局大佐(PL)へ向かい顔を向けた。



 レギーナはどうしてこの機械人形等はよりにもよって濁りなき目をしてるのだと思った。







 だが──汚れないとは思わない。ただ冷たい目をしてるのだ。











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