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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #12
58/206

Part 12-2 Mortal Kombat 死闘

Shopping Centre along the Marshall Hill Rd. West Milford North-Jersey, NJ. 12:54


12:54 ニュージャージー州 ノース・ジャージー ウエスト・ミルフォード マーシャル・ヒル道路沿いのショッピングセンター



"Let's Do it !!"

(:始めようじゃないか)



 その言葉を理解したとでもいうように突き進んでくる怪物の足さばきに彼女は一瞬見とれていた。



 正面にぶつかる数多あまた徹甲弾(AP)の青い波紋を跳ね分け直線的でなく大きな弧を描き弾道ミサイルのように瀑侵してくる。



 いい度胸だと、マリア・ガーランドは思いながら、クリーチャーがたいするように後ろへ跳ね上げた4本の腕の先に伸びる合わせて16枚の爪というファイティングナイフをマリーは意識した。



 1つでも止めようとすれば残りの12枚に串刺しにされるのはわかりきっていた。



 だが────その支持母体は1つ。



 そこをたたかれたらどうする!?



 そう考えた瞬間、片手で支え右肩に載せていたフェアリングアックス──伐採斧ばっさいおのの柄をその尻に左手を添えつかみ浮かせ前へ振り下ろすと重いやいばが落下する加速度に両腕の力を加え下りきる寸前に繰り出す脚を素早くステップ交差させ身体を時計回り急激に回しながら最大限にスピードを上げ続ける金属の凶器に意識を集めた。



 先行し振り戻した視線で見たのは、至近距離まで詰め寄り両腕の16本の剣を一点に集めるように左右後方から猛然と振り出す怪物の腕4つ。



 そこへ横から追いつき振り回したフェアリングアックスのやいばが激突した。まるで数千枚のガラスを同時に割ったような凄まじい破砕音が響き、爆炎で緩いアスファルトが圧に喘ぎ波打つように2体の周囲へ逃げた。



 散弾のように粉砕した化け物の爪9枚とエネルギー負けして左右に弾き返した腕すべてを一瞬眼にしても、マリーは攻撃の手を緩めなかった。



 回転エネルギーこそすべて!



 その角運動にさらに両腕とステップし続ける交差させた脚と身体全体のねじる動きを加え合わせ、一撃目に劣らぬ速さで後方まで振り回した伐採斧ばっさいおのを雷撃のように前へ導き、次の一手に出ようとするクリーチャーの胸元へ打ち込んだ。



 だが攻めに出てくると踏んだ怪物の次が保身であり、胸を横に引き裂いたやいばが飛び散らせたのはわずかばかりの蛍光色の緑色の体液とうろこ十数枚だった。



 マリーはこまのように回らず、相手をかすり戻ってくるおのを右手だけで保持し身体の右側で上下に回転させ1回転すると左手に柄を短く持ち替え左で小さく回転させながら、後退る化け物を追いかけた。









 所詮しょせんは人間。



 動きの俊敏しゅんびん性についてこれるはずがないとそれ(・・)は猛然と加速しながら両脚を繰り出し、カーブを描きながらまたたく間にその銀色の髪の女に迫った。



 一瞬でケリがつく。



 我が鉾先ほこさきの餌食になれ!



 目の前で身体を回転させた女が手にしたオノ(・・)と呼ばれる木を切り倒し、マキ(・・)を割る道具を振り戻すよりも速く4本の両腕のすべての爪を先にして身体を回す女へと打ち込んだ。



 だがそのどれもが届く前に集まった瞬間、女が予想したよりも速く身体を回しきりオノ(・・)を激突させた。



 半分以上のセラミックの爪が爆轟の寸秒バラバラに砕け、それ(・・)はその衝撃に振り出した腕すべてを外へ弾かれた。



 まずい!



 なんでこの人間の女はこれほども速く動くのだと、危機感につかまれたそれ(・・)は2歩後退り、振り広げた腕すべての折れた爪を再生させ始め、さらに2歩後退った。



 その逃げに合わせるように、さらに身体を回転させる女がまたオノ(・・)を振り出してくるのが、複眼に見えそれ(・・)は後ろに上半身をらせながら胸を引き裂かれた。



 簡単に殺せるはずだった女が今度は左右の手で交互に横でオノ(・・)を振り回しながら駆け込んで来るのが目にとまった瞬間、それ(・・)はさらに後退りしながら反撃の機会をうかがった。



 忌々(いまいま)しいのは女の振り回すあのオノ(・・)という道具だった。



 身体の横で上下に回転するそれを見る分にはそんなに腕よりも長くは見えていないのに、もっと深く迫ってきた。それ(・・)が足速に後退るの合わせそれ以上の速さで女はオノ(・・)を振り回しながら迫ってきた。



 振り下ろされ、後ろにまわり振り上げられ、それが上からまた振り下ろされる。



 動き自体はそれほど速くないのだが、斬るというよりも、力任せの粉砕に近いやいば



 振り下ろされ、後ろにまわり振り上げられ、それが上からまた振り下ろされる。



 後退りながらそれ(・・)はふと気づいた。



 振り回されるオノ(・・)は実質、回る4分の1しか脅威でない。頂点から正面へとくる以外はおそるるにたらない。



 砕けた爪が急激に再生しかかり、白銀の髪の女がオノ《・・》のやいばを正面に振り向けた瞬間、それ(・・)は反撃にでた。









 間合いを自分から詰めた刹那、足を止めた怪物がいきなり迫ってきてマリーは右手で振り上げた伐採斧(フェアリングアックス)の柄をいきなりスライドさせ相手の顔面へとリーチを伸ばした。そのグラスファイバーの柄に敵の腕がかすった瞬間、握りしめた柄に衝撃が走り途中から切れ飛んでいきなり軽くなった。寸秒、彼女は柄を投げ捨て化け物の振り回した2本の腕を身体をひねかわし後ろに下がりながら、追まる残り1本の腕の4つの爪を目前に太腿ふともものシースからファイティングナイフを引き抜き一瞬でそのはがねをも切り裂くパールの光沢を振り上げクリーチャーのやいばを叩き切った。



 そうして振り上げたナイフを持つ手を身体の正面で構え脚を肩幅に広げ腰をわずかに落とし、怪物の出方に備えた。



 化け物はおのれの左下の腕の爪が付け根から切れ落ちているのを見つめその腕を振り下ろすと、マリーを前に襲いかかろうと身構えたが、踏み出さずににらみ合いになり、互いに相手の左へと回り込み始めた。



 この昆虫の怪物は自分の凶器を切り落とされたことを理解し、ナイフから遠ざかる左へと回り込んでくるとマリーは思った。認識と戦略を理解できる知能があるのなら、相応の攻撃手段があった。だが目の前の化け物はナイフファイティングを知らぬはずだった。最初に突進してきてからというもの敵は大振りのナイフファイティングの経験がないもの特有のやり方だった。それなのに刃物から遠ざかる方へと回り込んでくる。



 マリーはファイティングナイフを持つ右手をゆっくりと身体の後ろに回し相手から刃先までのリーチを隠すと怪物の残され3本の腕の爪の動かし方を一瞬だけ確認した。爪を叩き切られた腕は戦闘の邪魔になるとばかり、後ろへ引き残りの腕を前に構え上げていた。



 マリーは表情の読めない昆虫の顔を持つ相手との消耗戦を避けみずから仕掛けることに決め、いきなりプラチナブロンドを振り上げ相手が回り込む左へ深く踏み入れ、まずクリーチャーの左腕へ切り込み、逃げた左半身に取り残された右手首に稲妻が折れ走るようにそのやいばを振り戻し斬りつけ両腕に相手の意識が集中した瞬時に手首を返しその切っ先を相手のあごへと突き上げた。



 その意表をついた攻めに点として襲ってくる切っ先を化け物は明らかに見誤った。



 矢のように鋭く突き上げたやいばが、かわすのが遅れた横開きのあごの片側を引き裂いて突き抜けた。その瞬間、怪物はアスファルトを踏みしめ逃がしていた3つの腕を振り戻し彼女の顔面へと襲いかかってきた。



 なまじ表情がないだけにその迫る顔が不気味にも憎しみの塊に見え、ラピスラズリの双眼を強ばらせ突き上げた腕を後ろに振り戻しマリーは相手の胸ぐらを蹴り込んだ。そこへクリーチャーは突き進んでしまい衝撃に空に両足を浮かせ大きくると空転し低い姿勢で着地した直後、2本の片腕を後ろに引きつけ脚を下ろした彼女へと猛然と突き進んだ。



 咄嗟とっさにマリーは左脚の太腿ふとももに付けたホルスターから左手でファイヴセブンを引き抜き勘1つで化け物の胸目掛け振り上げながらセーフティを切ると秒9発で斜めに速射し、連なったマズルブラストが駆け上ると直後化け物が腹から胸に開いた銃創から緑色の血筋をきながら後ろへと跳びす去った。



 その時だった。



 怪物が蹴ったアスファルトの向こうずねの高さに漆黒の二重リングが10フィート(:約3m)径に急激に広がると地下鉄の階段から地上に上がるように金髪ロングヘアーの大柄な女がマリーに背を向け姿を現した。







 そのブロンドの左右から先細りの長すぎる耳が見え、マリア・ガーランドは瞳を丸くし相手に警告した。







「逃げろ! シルフィー!!」







 状況を呑み込む前に振り向いたハイエルフの横へとそれ(・・)が襲いかかった。












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