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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #10
49/206

Part 10-3 Eating Blade 食らいつく刃(やいば)

Wawayanda State Park, NJ. 12:34


午前12:34 ニュージャージー州ワワヤンダ州立公園



 迫り来る白銀の帯が急激に伸び、ハイエルフのシルフィーは大振りする隔絶されし証──大剣(クレイモア)を黒衣の戦闘服(バトルスーツ)に身を包んだ魔王へ斬りつけようとし、相手が矮小わいしょうな短剣を反射的に振り上げて受け流そうとするのが見えていた。





 その刃物なりフェンリルのやいばに引き裂かれろ!





 だが太刀筋の先に突如として現れた極めて小さな黒球を避け相手に打ち込もうとした大剣(クレイモア)がまるでキュクロープス(:一つ目の怪物サイクロプスのギリシャ語)の豪腕につかまれその軌道を曲げられ魔王横の地面を穿うがちそうになりハイエルフは背筋と両腕に満身の力で剣を大きくカーブさせ身体の横へ振り戻した。





 なぜ!? なぜ太刀筋をねじ曲げられたのだ!?







 大剣(クレイモア)がマリア・ガーランドの短剣にぶつかる以前に大きく太刀筋をねじ曲げられ、彼女の横の地面を切っ先がかすりエルフははっきりとわかる困惑の表情で剣を振り上げ戻しその勢いでねじった身体の後方へ振り回し一回転させ追うように両脚を交叉こうささせ素早く身を回した。だがその素速さよりマリーは一瞬振った脇目で見たものに顔を強ばらせた。





 たった今、横の地面をかすった切っ先が生み出したもの──彼女の横の地面が裂けその亀裂が後方の野原の先数百ヤードに及んでいた。





 切っ先が触れもしない地面を切った!?





 違う!?





 地面の裂け目は明らかに耳長女の振り回す大剣(クレイモア)よりも幅広く割れている。





 切れたんじゃない! 喰われたんだ!





 隔絶の証──フェンリルのあごの本当の意味を思い知り、マリーは殺陣たてを予見し反射的に剣の直前に超高重力場を形成しなかったら自分は振り上げたファイティングナイフごと半身を失っていたのだと戦慄せんりつを覚えた。



 あの大剣(クレイモア)に触れるどころかかすりでもしたらすべてを持っていかれる!



 間合いを与えては駄目だと彼女の白兵戦(クロース・コンバット)の経験が咄嗟とっさに両脚を繰り出させた。







 瞬間的な速さで身体を回転させる寸秒にシルフィー・リッツアは空中に浮かぶ黒点が太刀筋をねじ曲げたのだと結論に至った。その微小の球体はものをつかむ魔力があり力をねじ曲げてしまう。だが太刀筋など幾らでも自在に変えることができた。黒い球体を避け相手を狙うなぞ造作無かった。



 振り戻した大剣(クレイモア)を再び、今度は横から斬り込もうと先に振り向けた視線の先に急激に迫って来る魔物の女のラピスラズリの双眼が見え、ハイエルフは咄嗟とっさに間合いを取ろうと身体を回転させながら両脚をステップさせた。



 その足(さば)きに難なく銀髪の人間(もど)きがついて来ており、シルフィーは完全に身体を回し終わる前に横様にフェンリルのやいばを相手に振り回した。その目前で魔王が素手の一振りを行うのが見えていた。







 凄まじい速さで詰め寄ろうとしたマリーの前で、シルフィーというハイエルフが身体を回しながら間合いを生み出そうとステップを踏み換えたのが視野の下に見えていた。間合いを盗られたら今度は横から斬りつけようとする大剣(クレイモア)の餌食にされる! 駆け込みながら彼女は一度出来たのならまた同じことができると、眼の前に迫った超高重力場のエレメントのかたまりを左手1つの振りで相手の剣の迫る先へ投げ飛ばした。







 シルフィーは黒い球体が振り回そうとする太刀筋の先へ矢よりも速く移動するのが見えていたが、すでに両腕は伸ばしきっており、それを大きくかわすなどかなわずにその下を抜け相手の腰から下を両断しようと腕を振り下げた。



 だがまたしても、キュクロープスの豪腕につかまれたように微小の黒点を軸に今度は上へやいばを振り上げてしまった。忌々(いまいま)しいとシルフィーはいらつきを覚えながら、振り上げつつある己の腕の下側に銀髪の女が低い姿勢で駆け込み迫りその手にする短剣がハイエルフは自分の剣を握る利き腕の手首目指し急激に振り上げられるのが見えていた。



 頭上に剣のヒルトを引き戻し同時にハイエルフは魔物の女の胸座むなぐらを蹴り込んだ。









 マリーの移動させた超高重力場の引力に振り回されまるで何かにつかまれたように急激にドロップすると相手の大剣(クレイモア)がその下から振り上げられた。その瞬間に彼女はさらに間合いを詰め、相手の利き腕手首目掛けファイティングナイフを振り上げた。ハイエルフの取れる行動は3つしかない。もう一度間合いを盗ろうとするか、振り上げた剣の柄頭(ポメル)を振り下ろし顔面を狙うか、だが残りの1つで相手が攻めてきた。



 相手が振り上げた片足で蹴り込んできた刹那、マリーは上半身をひねり、左腕でその脹ら脛(ふくらはぎ)を抱き込みそのまま後ろへ引ききった。ハイエルフが大きくバランスを崩すかに見えた一瞬、その耳長女は己の後ろに振り下ろした大剣(クレイモア)を地面に突き立て地面についていた軸足で跳び上がり、その足でマリーのあごを蹴り上げようとした。顔を外へ振り迫る相手の爪先をかわしながらマリーは脇へ押さえた相手の片足をさらに大きく引き振り回した。



 引きずり倒されたハイエルフが身体をひねりマリーの抱きかかえた脚を強引に引き抜き後転するように跳びあがり振り回した剣の勢いで地面に飛び下り立つと、すぐに次の一撃を放とうと両腕で握る長剣を顔の横へ振り上げ構えた。その時、マリーは背後に人の気配を感じとった。その感覚で誰かが瞭然りょうぜんだった。



 レイカ・アズマが30ヤード(:約27m)後方に来ていた。



「クレイモアを捨てろ! さもなくば撃つ!」



 FNーSCARーHを構えた彼女の明瞭な英語だがハイエルフに理解できるわけがなかった。それどころか、シルフィーは銃器すら知らない! だが問題はそんなことではない。フェンリルのやいばの範疇にレイカが入り込んでいるという事実にマリーは怒鳴った。



「レイカ! 逃げなさい!!」



 その瞬間、シルフィー・リッツアが凄まじい速さで隔絶されし証──ディスタント・テスティモニィを振り下ろした。







 シルフィーには銀髪の女と同じ黒装束の戦闘服(バトルスーツ)に身を包んだ土埃つちぼこりの合間から現れたそのものが何かを怒鳴ったのが聞こえたが、まったく理解できない言葉だった。



 新手の仲間もろとも斬られるがいい。



 振り下ろす大剣(クレイモア)の太刀筋の先に急激に次々とあの黒い球体が生まれ連なった。真っ直ぐに魔王を両断しようとした残像を曳く白銀の帯が大きく横へ軌道をねじ曲げられ、銀髪の女の横の地面を穿うがった。その侵食が野原を縦に喰らい亀裂を真っ直ぐに走らせた。直後、シルフィーの前に突如として現れたシルフの魔法障壁(マジック・ウォール)に小さな飛礫つぶてが数十ぶつかり淡い青に幾つもの波紋が広がった。



 魔王の後ろに現れた新手が構える何かの先に連続した火炎が明滅していた。



 またあの金属を飛ばしてくるこの世界の武器だ!



 だが同時にハイエルフは己が魔法障壁(マジック・ウォール)の術式を詠唱えいしょうしなかったことに気づいた。眼の前の銀髪の女(もど)きが左手を振り向けラピスラズリの瞳で睨みつけていた。



 この魔王は己の仲間が放った攻撃をなぜ食い止めたのだ!?







「シルフィー・リッツア! なぜ人を殺そうとする──!?」







 銀髪の魔王に流暢りゅうちょうなエルフ語で再び問われ、ハイエルフは地面に刺さり込んだ剣の切っ先を引き抜き振り上げ身構えながら困惑した。



 わからん!? 銀髪の魔王は我をたばかろうとしてるのか!?



 問に答え返せずにシルフィーは後ずさりした。



 こんな連中の相手をしにこの世界に来たのではない。あれ(・・)を追って来たのだ。



 右手1つで大剣(クレイモア)のヒルトを握りしめ構えたままシルフィーは人差し指を伸ばした左手を己の足元に振り下ろし高速(ファースト・)詠唱(チャンティング)し始めた。



「影に陽に、棘の道、脈々と連なる抜け裏を司る狭知の守り、我の求めにかんぬきを抜かん──」



 いきなり彼女の足元に黒い魔法陣(マジックサークル)が広がるとシルフィー・リッツアはまるで階段を下りるようにその中へ踏み込んで行った。そのブロンドの髪がうねりのある魔法陣(マジックサークル)に呑み込まれるとそれ自体が揺らぐようにたち消えた。



「チーフ、お怪我は?」



 消えゆく魔法の欠片を見つめているマリーに歩きよって来たレイカが声をかけた。マリーが振り向くとレイカは肩付けしたバトルライフルの銃口を消えた魔法陣(マジックサークル)の中心に向けてまだ用心していた。



「無事よ、あなたこそ、レイカ?」



「私も大丈夫です。今の長身の女、電子擬態エミックで姿を消したんですか? それにあの武器、地面があんなに」



 問いかけながらレイカは振り向き野原に伸びた亀裂を眼で追った。



 尋ねられてもマリア・ガーランドには答えようがなかった。



 未知なる力を身につけたばかりで、どうして自分は詠唱えいしょうなしでその力が使えるのかすらわからないのだと彼女は思った。そうしてレイカから質問ぜめにされる前に左手の指をパチンと弾き鳴らし、生みだした12個のマイクロブラックホールを掻き消した。







 だが問題なのはハイエルフがどこへ高跳びしたかだった。あれはなにか(・・・)を追ってこの地に来たのだという確信が残っていた。











 SG751SAPRーLBアサルトライフルを構えたままヘリ──ベル412EPIから草原に降りたったNSAニューヨーク支局長のマーサ・サブリングス以下4名は、水蒸気爆発の起きていた方へと速い足取りで向かった。



「マーサ、ジャージィ支局の連中が来てから調べませんか?」



 斜め後ろを歩くララ・ヘンドリックスに提案されマーサは即座に却下した。



「起きてる事態を究明しないと、同じことが人家密集地に移動したらどうするの。それにあなたのバレルガード下に付けたグレネードランチャーは虚仮威こけおどし?」



「いやいや、あんな爆発にグレネードじゃぁ太刀打ちできませんから」



 ララの相手を中断しマーサは先行するダニエル・キース対テロ即応課課長に尋ねた。



「ダニエル、あの爆発は飛んでた戦闘機が落とした爆弾のせいなの?」



「局長──あれは対地攻撃機です。翼一杯にマーク8系爆弾ぶら下げて来てたとしてもあんな規模の爆発はないですよ。せいぜいあれの数十分の一の土砂を巻き上げるのが限度です」



 軍の特殊部隊兵だった彼の見立てに間違いはないとマーサは思った。ならテロリストが平原で爆弾の実験でも行ったのだろうか? あのニューヨーク州兵空軍の攻撃機は引き返したのだろうか? ヘリから見かけた直後、水蒸気爆発のような爆発の後、見かけてはいなかった。パイロットなら何かを見ている可能性があったが、ニューヨーク州兵空軍に問い合わせても、人をかいした報告は歪められてしまうと彼女はそのアイデアを捨てた。



「あれを見て下さい」



 ララと隣だって歩くイーサン・レフトラが3人に声をかけた。



 800ヤード(:約732m)ほど先の野原に巨大な航空機が垂直に降下してきていた。つい今し方までジェットエンジンの音すら聞こえていなかったのに、その空軍の輸送機並みの大型機は恐ろしい量の土埃つちぼこりを舞い上げていた。その3つ見える巨大なリングが爆風を生みだしているらしかった。マーサは一目見て去年末に起きたニューヨーク核爆弾テロで出動していた謎の特殊部隊兵達が撤収に使った輸送機を思いだした。雪の激しい夜間だったので姿形は朧気おぼろげにしか見えていなかったが、カーゴルームの開いた後部開口部の形状がとても似ていた。マーサは今一度ダニエルに尋ねた。



「ダニエル、あれは空軍のものなの?」



「違います。あんな形の軍用機は持ち合わせていないし、ジェットエンジンの音がまったく聞こえないなんて有り得ない。この距離なら寝てるものが眼を覚ますぐらいにうるさいんです」



 あの核爆弾テロを阻止した特殊部隊達が来ていたのなら、何かのテロが考えられたが早計だった。だが遠目に複数のものが輸送機に乗り込んでいるのが確認できた。彼らが相手としたもの達は何ものだったのだろうと、単数ではない予感があった。人数にして10人ほどが乗り込み輸送機の周囲に煙幕のように土埃つちぼこりが立ち上がると急激上昇し機首を南東に転換しながらヘリでは追いつけない加速でその輸送機は飛び去った。



 マーサはその腹を見上げながらあの夜、マンハッタン南部のバッテリー・パークに来ていた特殊部隊を束ねていたプラチナブロンドの女性に会って話しをしたいと思っていることに気がついた。



 様々な状況をつなぎ合わせ、巨大複合企業(コングロマリット)NDCの新しい女性社長(COO)ではないかと検討はつけていた。その社長が就任式スピーチで世界中のテロリストに挑戦状を叩きつけた話題は暮れにまであらゆるマスメディアに及んだ。NDCの新部門である民間軍事企業(PMC)が非公開の組織であり活動はまったく広報に上がっていない。



 どうか転ばずに悪人共をその手で捕らえ続けて下さい──パンプスに見えるスニーカーとバックスキンの手袋に添えてあった手紙の一文が思い出された。



 マリーという贈り主。偶然にもNDC新COOはマリア・ガーランドという名前だった。





 どうやって2つの品を望んだのを知ったのか尋ねたい。スニーカーと手袋はテロリストを追っている雪の中で思い描いただけなのだ。誰にも一言も話しはしなかった。



「局長、あれを──」



 ダニエル・キースに声をかけられてマーサは我に返った。彼に付き従い見に行くと大きな地面の陥没──クレーターの中央に変形した白い柱のようなものが斜めに突き立っていた。だがその柱の直径が大きく車の横幅は優にある。その中間に開口部がありそこから落ちたと思われるパネルが手前の地面に転がり、チューブ状のひつぎ大のものがやはり内部をさらしていた。



「ロケットか?」



 ダニエルが己に問うように声に出した。



「これがあの吹き上げた土砂の正体かしら?」



 マーサはロケットの残骸を見下ろしながらダニエルに尋ねた。



「いいや、あの爆発はもっと林寄りの400ヤードほど先だったと思う」



 彼がそう告げそこへ歩き出したのでマーサ達も付き従った。さしたる危険性を感じなくなったのかダニエルがスリング任せにSG751SAPRーLBのバレルを斜め下にしプレートキャリアーの胸の前に吊すとマーサと寡黙なイーサン・レフトラもならった。1人ララ・ヘンドリクスだけがアサルトライフルを肩付けしたまま構えて歩き続けた。



 400ヤードほど歩くともう1つのクレーターがあった。先のロケットが突き刺さったものと直径こそ近かったがその深さが尋常ではなかった。まるで掘削したように100ヤードほどの土がなくなり落ちたらただでは済まない深さだった。



 そのクレーター手前に野原には不釣り合いな暴動対処用の盾のようなものが落ちてるのを4人は気づいた。盾の周囲には小型のファンが連なり、ひっくり返すと湾曲し突き出した面が焼けただれカーボンのようになっていた。



 そのクレーターの回り込んだ先に灰色の塊があり4人が見に行くと、それが対地攻撃機の成れの果てだと知りマーサは驚いた。機体胴体の前後を失い残った部分も怒りに任せてハンマーで乱打したみたいに金属製の外板が変形していた。彼女が操縦席をのぞくとパイロットがまだ乗っていた。見たところ血を流したりはしておらずマーサはパイロットの肩をつかみ声をかけながら前後に揺すった。しばらくするとパイロットが目覚めた。



「大丈夫ですか?」



 マーサとララにのぞき込まれパイロットは一瞬瞳をおよがせたが、大丈夫だと答えた。



「何にやられたんです?」



「わからん──統合末端攻撃統制官(JTAC)の指示に従い地上の火炎放射器を使っていた攻撃対象に機銃掃射したあと対空兵器に1機落とされ、同じ攻撃対象に爆弾を落としに戻ったら滝のようなものに突っ込んで──そこからは覚えてない──くそう──ウォーレスは!?」



「ウォーレス? 誰なんですか?」



 マーサが問い返すと、ショルダー・ベルトを解除したパイロットが危なげな動作で操縦席に立ち上がり当たりを見回した。



「僚機のパイロットだ──ウォーレス・プラント中尉」



 その直後、ダニエルがマーサを呼んだ。



「局長!」



 マーサが振り向くと、陸軍の迷彩服を着た兵士に肩を借り片足を引きずったパイロットが林から抜け出てきた。



 ニュージャージー州軍ヘリのみならずニューヨーク州空軍の2機の対地攻撃機を落とした何ものかをあの飛び去った兵士達は捕らえたのだろうかと、マーサ・サブリングスは輸送機の消えた南東へ険しい表情で見つめた。







 あの兵士達ならテロリストをまた出頭させてくると漠たる思いが彼女によぎった。











 ハミングバードに乗り込んだマリーはよそで下ろした部隊をサポートしてるミュウが青ざめていることに驚いた。



 彼女が問いただすと、そのノース・ジャージー ウエスト・ミルフォードのショッピング・センターですでに民間人や警察官が数十人が残虐な方法で殺されており、ロバート・バン・ローレンツ率いる別働隊があの怪物(クリーチャー)をまだ倒していないことに理由は何なのだと眉根をしかめた。



「ミュウ、ロバートに精神接続(リンク)



 命じた瞬間にミュウが中間体となり別働隊を任せたロバートに意識が繋がった。



 ロバート、報告を!



『チーフ、まずいぞ。あの化け物がショッピング・センター駐車場を一瞬で焼き払った! まるでナパーム弾のようにテルミットを多量に使ったみたく車でさえ溶解している』



 また火炎放射器なのかと思い、眉根を寄せたままのマリーは己が思考を訂正した。ハイエルフが使っていたのは爆炎術式の精霊魔法なのだ。怪物(クリーチャー)が火炎放射器やテルミットを使うなど論外だった。ならあのハイエルフと同じように魔法術式を操れる可能性があった。



『チーフ、爆炎術式とは何だ!?』



 呼応するようにロバートの意識が問いかけてきて、マリーは慌てて意識を絞り込んだ。



 ロバート、怪物(クリーチャー)の追跡を。犠牲者が出ていても斥候追跡を。決して手出ししないこと。あなた達の装備で対処不可能よ。10分で現場へ行くわ!



了解した(Copy)



 マリー以下10人は息つく間もなくノース・ジャージー ウエスト・ミルフォードのショッピング・センターへ向かうことになった。機内内壁に片手をついてうなだれるマリーへ座席に腰を下ろしたミュウが恐るおそる問いかけた。







「マリー、爆炎術式ってなんなんですか? 精霊魔法?」



 彼女は片手の人差し指を己の唇に当ててそれ以上問うなと若きエスパーに命じ困惑げな表情を笑顔でごまかした。











 マリア・ガーランドはまだ覚えたての魔法を自在に操れる自信がなかった。












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