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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #9
44/206

Part 9-3 Mutation 変異

Shopping Centre along the Marshall Hill Rd. West Milford North-Jersey, NJ. 12:27


12:27 ニュージャージー州 ノース・ジャージー ウエスト・ミルフォード マーシャル・ヒル道路沿いのショッピングセンター



 サーベージ・スポーター411熊爪(ベア・クロゥ)の水平ダブルバレルを半分の5インチ(:約12.7cm)に切り詰め、ショットシェルのパウダーをハンドガン寄りにリロード(:詰め替え)したソードオフを百足むかで頭の化け物に振り向けトリガーを引き絞った。瞬間、爆轟と共に12口径スラグ弾がマズルから飛び出し銃身を荒くれ馬の後足のように大きく跳ね上げ、ジェシカ・ミラーは腕力頼りに強引に引き下ろすとさらにリセットされたトリガーを引き切った。



 一瞬で2発の高エネルギー・スラグにそれ(・・)の振り上げた3つの爪は爆発するように破砕しその後ろにあった顔半分と首とは呼べそうにない太長い胴の3分の1をえぐりとり背後に組織と緑色の体液をほとばしらせた。



 逃げる背後からさらに浴びせられたら、確実な致命傷になるのは目に見えていた。それ(・・)は残りの5つの爪を床に食い込ませ猛然と人間の女兵士に躍り掛かり健在な両(あご)を開き迫った。



 迫ってくる死に損ないに眉根を吊り上げたジェシカは咄嗟とっさに左手を背後のアリスパックと背中の間に差し入れ同じ411を引き抜きさらに至近距離で蜘蛛くものような胴体目掛け2連射した。



 飛びかかろうとしたそれ(・・)は右肩と脇腹わきばらえぐられ外骨格と臓器の一部を後ろに撒き散らし勢いのままバランスをくずし斜めに商品棚へ激しく突っ込みサラダ油のボトルを多量に床にばらまいた。



 飛び退いて棚の角に逃げ込んだジェシカは揺らいだ棚から化け物が体を起こすのを見て眼を丸くし、4発のスラグを喰らい生き残るのはグリズリーにも無理だと思いながら、野菜売り場のある外通路目掛け駆けだした。彼女は駆けながら顔を振り下ろしフェイス・ガードを上から閉じると一瞬で立ち上がった液晶画面に仲間5人がFNーSCARーHを構え小走りに来るのがシルエットで見えた。その彼女を追いかけ中通路から飛びだした怪物が棚の角にぶつかりプレス・スチールの柱を潰し迫った。その鬼気迫る気配を背に感じ7.62じゃあコイツをれない! と彼女は戦慄していた。





「逃げろ馬鹿ぁ!」





 フェイス・ガードの内で叫びながら、ジェシカは射撃を始めた仲間へ駆けながらアリスパックのショルダーベルトから腕を抜きアリスパックのフラップ脇から伸びるハーネスに付いたハンドルをつかみアリスパックを後ろに放りだした。転がった装備品のそばにクリーチャーが到達した時点でハンドルワイヤーが伸びきりジェシカは仲間を押し倒し床に伏せた。



 途端に怪物の真下で凄まじい爆発が起きて1200個の鉄球が秒速1000mで飛び広がり天井に車も落ちてきそうな大穴が開き爆煙が広がった。



 バラバラと落ちてくる通し天井の構造材が彼女の背中に降りかかった。



 顔を上げ見つめた先に分隊長のロバート・バン・ローレンツが仁王立ちで立つシルエットだけが見えていた。



『何をしたジェス?』



 短距離無線ではなかった。ミュウを通し届いたサイコ・ダイヴ(テレパス)の声一つで言い訳が通じないとジェシカは開き直った。



「013──」



「馬鹿者」



 今度は無線だった。怒鳴られることなく言い捨てられたことがこりゃあキツいと彼女はフェイス・ガードの下で苦笑いを浮かべた。



索敵さくてき!』



 索敵さくてきだぁ!? 車輌地雷をお見舞いしたんだぞ! 彼女は眉根をしかめ後ろを振り向いた。見た先には数ヤードに渡り倒壊した棚とえぐれた柱──それにビッグリグのくコンテナーすら通り抜けられそうな大穴が開いた天井があった。その至る所に飛び散った蛍光色のような緑の液体が化け物が無事であるはずがないことを物語っていた。



 ジェシカは立ち上がると破壊の痕跡に足を踏み入れ投げ捨てたソードオフを拾い上げバレル後方を開き空のショットシェルを排莢はいきょうしパウチからスラグ弾2発をつかみ抜き装填し、背中のホルスターに差し込んだ。もう一挺はFFV013の鉄球を受け片側のバレルが中間で潰れていたので見捨てた。彼女の周囲に5人が来てバトルライフルを周囲に向け怪物を追い求めた。



『外に行くぞ!』



 任務完了で帰投するのかと思い、ジェシカは天井を見上げる分隊長の姿に仰ぎ見て顔をしかめた。



 天井の破れ方がおかしい!?



 鉄球が均一な面破壊をもたらすはずが、中央だけキャノンで撃ち抜いたような壊れようだった。



「逃げやがった!」











 ショッピングモールの裏手──林のきわで警戒していた警官のシオドア・ウォーカーはショッピングモールの屋根で吹き上がった爆轟におどろきM4A1の銃口を振り上げてしまった。



 何の爆発だ!? SWATなのか?



 屋根を凝視する彼は舞い落ちてくるスチール製の残骸がぶつかる幾つもの音に神経を尖らせた。



「何だったんだ? なあ──?」



 彼は隣に立つ同僚のウォーカーに声を掛け返事がないことに振り向いた。眼にした男は腹から上がなくなり臓物が前後にあふれ血が吹きこぼれていた。



「ウォ──カ────」



 つぶやいた彼の背後でそれ(・・)あごが左右に開きねばついた赤い唾液が滴り落ちた。









 くそう──コイツらの言い方ならこういう風に言うんだったとそれ(・・)は思った。



 最初にあの食い物を取引する『店』という場所で相手をしたこのくいものの武器を手にした連中と違いケタ外れに押しの強い姿の見えない敵に追い詰められた。だがその姿を見せなかった連中の1人が飛び込んだ仕切りの間に姿を見せたまま待ち構えていやがった。



 しかもスワットと呼ばれるあのえさどもの武装した連中のジュウという飛び道具と違う遥かに力を持った武器で襲いかかった。



 しかも逃げ出したソイツを追い始めた直後、目の前で起きた爆発に一瞬逃げ遅れていたら再生不能なまでに細切こまぎれになるところだった。



 今は一つでもくいものを喰らい身を蘇らせ────。





────こんな体型ではダメだ!────。





 模倣し、武器体系を使い、身を守り──紛れ込み効率を上げるんだ!





 2つめのえさを一気に喰らい、足の指先まで呑み込むとそれ(・・)の残っていた6本の触足が隆起しビチビチと異様な音を立て収縮し始めそのいびつな胴体や連接する首や頭部から外骨格の甲羅こうらがボロボロと落ち始めた。そうしてはじけ裂け細胞が絡み合いながら細長く伸びるとそれが起伏を生み引き締まり始めた。





 まだ足らぬ──原形質を摂取せっしゅしなくては──。





 数多あまたの細胞を凝縮し引き締めながらも形定まらぬそれ(・・)は40ヤード(:約36m)ほども離れていない別の警官4人に襲いかかった。











 林の奥でアキュラシー・インターナショナルのAXMCボルトアクションライフルを構えるコーリーン・ジョイントは中佐達が入ったショッピングセンターの状況をつかめずにいたが冷静にリューポルド製スコープをのぞきながら辛抱強く火急に指示される標的を待ち続けていた。



 たえず周囲状況の確認に余念がない彼が警官達を続けざまに見ていて突然に起きた爆轟にライフルを振り向けすぐに煙の上がる屋根に気がつき、ズームダウンしたままその破砕口を確認し、コーリーンはどうなっているのだと眉間にしわを刻んだ。



 そうして裸眼の左目で見ている林のきわの警官の姿がより大きな影にさえぎられたのを見逃しはしなかった。



 なんだ!? 何が起きてる?



 中佐からの指示はなく、その変化を見極めようと銃身の向きをわずかに変え新たに生まれた影を見ようとした。だがFOV(:光学照準器の視界)に捉えようとしたそこに立っていた警官の1人の姿が消え失せていた。それに人の身長より高い影がなくなっていた。



 スコープの向きをまた変えようとした刹那、1人で立つ警官をより背の高い影が立ち上りおおい隠した。わずかにぶれた光学映像にはっきりと見えたのは胸部から上をなくした警官が血を噴き上がらせ残された下半身が横へ倒れた。



 生唾を呑み込み彼はその影が倒れた警官の下半身を追うようにおおい被さると形が変わるのを眼にしながら、ロバートを無線で呼びだした。



「コール、ローレンツ。CJです。クリーチャーが屋外にもいます」



『コーリーン、手を出すな。そいつはM118(7.62mm NATO Ballの軍支給Sniper Type Cartridge)を数十発喰らっても動き続け人を捕食しにかかる。お前の338 Norma Magunamでも致命傷にならない。気取られない距離で尾行せよ』



 やたらとモール内から射撃音が聞こえていた理由がそれなのかと思い彼は化け物をよく見ようと銃身を下げた。倒れた警官の下半身におおい被さってしているのが捕食なのだと知り吐き気が込み上げてきた。だがおどろくことにその大型グリズリー並みの影の背が変形していることに気づき眼をしばたいた。



 見る間に下生えの雑草並みに低くなった怪物が踊り上がり一度外れの木に跳び移り、凄まじい勢いで4人の警官に襲いかかった。



「マズいぞ──こりゃあ特大級のマズさだ!」



 中佐には撃つなと命じられたが状況判断を剥奪はくだつされたわけではなかった。それに100ヤード(:約91m)ほども距離があり、サプレッサ(:射音抑制器)の効果で数撃なら届くのは中・低音。位置を気取られる危険性は低いと判断した。



 その大きさが急激に小さくなるクリーチャーが4人固まるように歩哨に立つ端の警官に飛びつく寸前、コーリーン・ジョイントはリードを取りながら動かし続けたクロスヘアーの片隅に怪物の頭部と思われるものを捉えトリガーを引いた。











 銃弾を送り出した刹那、踊り掛かるその化け物が人のように見え振り上げた腕が4本あることに彼は困惑した。












☆付録解説☆



1【Savage Sporter411 BEAR CLAW】(/サーベージ・スポーター411)30インチ(:約76㎝)を4.6(:約11.8cm)の短い銃身をした水平2連の散弾銃です。作中でジェシカはこれをさらに半分ほどに切り落とし完全非合法なSBS(:短銃身散弾)の短い銃身でスラグ弾を加速させるためにショットシェル(:散弾)のパウダーに拳銃弾用の燃焼速度の速いものを混合しています。ですがこれはとても危険な事でバレルに亀裂が入り破裂する可能性があります。



2【FFV 013 Fordonsmina 13】(/フォードンスニィナ)スウェーデン製対車輌用地雷です。対人用としてより小型の米軍製M18 Claymore(/クレイモア)が知られていますが、FFV013はその倍の大きさと炸薬量10倍ほどもあり殺傷範囲・効果は1平方m当たり2個の鉄球1200個が150mに被害をもたらし桁違いです。












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