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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #5
25/206

Part 5-4 Bloodshed 惨殺

Shopping Centre along the Marshall Hill Rd. West Milford North-Jersey, NJ. 11:59

11:59 ニュージャージー州 ノース・ジャージー ウエスト・ミルフォード マーシャル・ヒル道路沿いのショッピングセンター



 ESU(/SWAT)チーム・デルタ(D)のボンゾエル巡査は3人を引き連れ、イオテック・XPS2光学サイトのFOV(:光学サイト視野)を振りながら、激しい銃声の聞こえてきたアパレルショップの売り場に入り込んだ。



 彼はハンガーラックの下に自分らの装備品と同じブーツを履いた脚が倒れているのを見つけM4A1の銃身を向けながら近寄った。背後に同じ班になった3人が周囲へ警戒の視線とカービンの銃口を向けていた。



 彼はブーツの脚を辿たどり上半身へ視線を上げ、凍りついた。うつ伏せに倒れた隊員のプレートキャリアの襟から上にあるはずの頭部がなく血溜まりが広がっていた。



 さらに驚いたことに近くに3人が倒れもう1人も頭部を失っていた。



 床のいたるところに血飛沫と空の薬莢(カートリッジ)がある。



「用心しろ」



 ボンゾエル巡査が背後の3人にそう告げ、警官を殺した容疑者はどこだと視線を振り上げた。その刹那、ギギッと何かがきしむ音が聞こえ、彼は瞳を上に向けた。瞬間、天井のボード数枚が同時に抜け迫りボンゾエルは後退りかわそうとして、同僚2人にぶつかり落ちてきたボードにカービン銃を叩き落とされた。



 落ちてきたのはボードだけではなかった。



 眼の前に身を持ち上げるそれ(・・)を眼にして彼は唖然となった。





"Oooh──My G──!!!"





 ののしろうとした一瞬にボンゾエル巡査は頭部を食いちぎられた。



 振り向いた3人のうち2人が呆然ぼうぜんとし、頭部をなくしたボンゾエルの真後ろにいた1人がトリガーを引き絞った。



 爆発するように膨れ上がったマズルブラストが横へ残像を残し伸びて初めてそのSWAT隊員はM4A1のグリップをつかんでいる右手がひじと手首の中間から離れて血飛沫が弧を描くのを信じられないといった面持ちの眼で追った。



 その横で別な隊員がM4スーペル90ショットガンを至近距離で撃ち放った。その火炎と共に高速で飛び出したダブルOバックの散弾がそれ(・・)を捉えようとした寸秒上半身をひねかわしたクリーチャーは最上の左触足でショットガンを跳ね飛ばし、さらに右にいる隊員がカービン銃を振り向けきる前に首を切り落とした。



 ショットガンを跳ばされた巡査が顔をひきつらせスリングで胸に下げたカービン銃のグリッップへ手をかけたその時、眼の前で横に開いたあごが急激に迫った。











 ブラヴォー(B)・チーム4人とアルファ(A)3人を引き連れたバーニッシュ警部がショッピングモールの正面通路を駆け抜け、カービンを振り向けドットサイトで見た光景が信じられず裸眼の左眼で瞬間を眼にした。





 大きなムカデみたいなものが部下1人の首から上を喰い千切った。





「撃てェ!!」



 彼が怒鳴り化け物へ向け発砲し始めた横で回り込んだ7人が弾幕を広げた。



 その数発が怪物の緑色の血飛沫を後方へ吹き出し、残りの多くが飛び上がった足元を飛びすぎ奥の壁を穿うがち多量の壁紙とボードの残骸を撒き散らした。



 クリーチャーが天井の穴に入り込み、それを追い銃口を振り上げたSWAT隊員らは穴を中心に発砲し続けた。数秒の射撃でバーニッシュ警部は弾薬が無駄であると気づき怒鳴った。



「撃ち方止めェ!!」



 重なっていた爆轟が止み静かさが訪れた直後、照明器具が1つ落下し大きな音を立てその床へ2人の部下が銃口を振り下ろした。



「ありゃ、何なんですか!?」



 Bチームリーダーのジェンダー警部補がバーニッシュ警部に尋ねたが警部は無言で人差し指を立てた左手をうしろに向けた。そうしてM4A1の銃口を天井の穴の方へ向け倒されたDチームの隊員らの方へ足を繰り出した。



 残りの部下達も彼にならい穴の周囲へ火器を向けながらアパレルショップへと足を踏み入れた。



 バーニッシュ警部は眼にしたあれ(・・)が何であれ部下達を殺した何ものかには間違いなく、この場で仕留めないととんでもないことになると苛ついたが天井裏へ逃げ込んだあの怪物をどうやって探しだすのだと困惑にすり替わった。



 まさか穴からのぞくわけにはゆかない。



 待ち構えていたらその時点で1人命を失うことになる。



 体の上半分が大人の胴体より太いムカデで下半身がタランチュラのようなクモみたいな怪物。だが足は明らかに6本以上あった。ミリタリー・ボールを数発喰らいながらあれだけ動けるとなると油断ならなかった。



「セル・ブラヴォー、弾倉を入れ替えろ」



 警部は穴をXPS2オプチカルサイトで見据えながら、他の半数の者達へ命じて生唾を飲み込んだ。全員が弾倉を交換したら、順に穴の近辺からボードを撃ち抜くつもりだった。



 緑でも血を流すなら、殺せるし、銃弾が当たれば手応えがあるとにらんだ。



 彼らの一番外側にいたBチームのダリル・ゲイティスはM4A1の残弾の少ないマガジンをロアーレシーバーから抜き、プレートキャリアの表面に並べたパウチからフルロードのマガジンを引き抜きながら、服のハンガーラックの向こうにいたものの姿をまざまざと思い出して決めつけていた。



 あれは地上の生き物じゃねぇ!



 地獄から来たんだ!



 悪魔に銃弾が効くものか!



 5.56じゃあ役不足だ!



 彼は数ヤード先まで飛び散っている血糊ちのりを見つめ。もはや対処する部門が違うと思った。軍隊でも呼ばなきゃ俺達は全滅だ!



 彼は息も荒く手にした新しい弾倉を強く握りしめた。



 その弾倉をカービンに差し込もうとした刹那、彼の背後に2つの触足で天井ボードを左右から支えるそれ(・・)がゆっくりと降りてきた。それ(・・)は別な触足を天井から引き下ろすと、背を向けているSWAT隊員の後ろへ近づいた。







 視界の片隅で何か大きな影が縦に動いたような気がして、アルファ・チームの新人メンバー・タリア・メイブリックは顔を固定したまま眼だけを横へ流しハッキリと見ようとした。



 視界の先に信心深いダリル・ゲイティスがいる。



 その背後に大きなものがいた。



 咄嗟とっさに彼女はカービン銃のハンドガード下部ピクティニー・レールに付けたバーチカルグリップを振り回し一瞬でダリルの方へ銃口を向けると、彼の被るM88フリッツヘルメットの頭上越しに、ダットサイトの赤い光点を左右に開いたあごの中心目掛けエイミングしトリガーを引き絞った。



 3点射のミリタリー・ボールがクリーチャーの口に命中し、その射撃音にタリアとダリル以外の残り全員が振り向きカービンとショットガンの銃口を振り向けた。



 だがその瞬間に起きた事態に殆どの者がパニックになった。



 プレートキャリアの中心を鋭い爪がつらぬき、ダリルがり多量の血を吐き出した。



 素早く事態を理解した数人が狙い定めトリガーを引きかけた寸秒、怪物はつらぬいた触足を上げダリルを持ち上げたてとしながら広がるSWAT隊員らの中心へ突進した。



 胸を穿うがたれたダリルどころか、化け物を挟み反対側に立つチームメンバーが見えて誰1人引き金を引けず唖然とする中で、クリーチャーは2本の触足を水平に振り回した。そのリーチの内にいた2人が喉を欠き斬られバックリと開いた喉の切れ目から血飛沫を吹き上げ仰向けに倒れかかり、同時に怪物は次に近いSWAT隊員の方へ突っ走った。



 眼の前に迫る胸を穿たれたダリルに恐れその隊員は突撃銃の引き金を引ききった。フラッシュハイダーの前に爆炎が膨れ上がりフルオートで放たれたライフル弾のほとんどがダリルの防弾プレートに命中し、そのことに気づいたその隊員が、ダリルの肩越しにクリーチャーを撃とうとバレルガードを振り上げた時には相手はすぐ直前まで来ていた。



 ダリルの胸を穿うがった暗い斑紋の浮かぶ紫の爪が、その射撃した隊員の顔面を刺しつらぬいた瞬間、残りの男女4人が一斉にクリーチャーの側面や背面に銃弾を撃ち始めた。



 何発ものミリタリー・ボールや散弾が甲殻をつらぬき緑色の液体をき散らしてなおそれ(・・)は襲撃を終わらせなかった。







 倒すべき順位という概念を学習してしまっているそれ(・・)は、距離よりも破壊力のあるカービン銃を構え撃つSWAT隊員を優先しショットガンを連射する男の横を駆け抜け、奥に立つ隊員へと迫り串刺した男を振り回したてとしながら襲いかかった。







 バーニッシュ警部は眼の前でマジソン・ジェンダー警部補がカービンを撃ちながらヘルメットごと頭部を喰われるのを眼にし、自分の斜め後ろでバースト射撃し続けるタリア・メイブリックへ怒鳴った。



「逃げろ、タリア! 逃げるんだ!!」



 もはや逆転は望めなかった。



 2人でこの化け物をなんとかできるなんてまかり間違っても有り得ない。警部は新人だけでも生か残らせるつもりでそう怒鳴った。



 だが3バーストのリズミカルな射撃音が自分の撃つフルオートの射撃音に混じり聞こえ続けた。



 警部補の首を喰い千切り振り落とした怪物が向きを変え口を開きこちらへ突進して来る。



「タリア・メイブリック!!」



 彼が大声で名前を呼んだその時、バーチカルグリッップを握る左手の甲にこぶしを当てルーキーが彼の耳元で怒鳴った。





「逃げるもんですか!」





 そう新人が怒鳴りぶつけていたこぶしをクリーチャーへと振り回し指すべてを開いた。その先へTRMR E1 X4ーS遅延破裂音響グレネードが飛んでゆき、突進して来る怪物の顔面に当たった瞬間、セットした9ミリパラベラムがグレネードヘッドを撃ち砕いた。



 顔面で破砕した金属のほとんどが左右に開いたあごの上にある化け物の2組の目の間を打ち抜き、クリーチャーは咆哮ほうこうを上げ顔を振り回した。



 逃げるチャンスは今しかない!



 バーニッシュ警部がそう考え向きを変えた瞬間、バランスをくずし横様に倒れた。警部は何につまづいたのだと視線を下ろし、転がる2つのコンバットブーツが見え、そこにひざから下が切れ落ちた脚があるのが見え、誰のものだと自分の両足を見つめるとひざ下が無くなっていた。



 彼は激痛が襲い来る前に力を込めてもう1度怒鳴った。







「逃げるんだ、タリア!!」







 激痛に混乱する直前、彼はルーキーが2つの命令不服従を犯していることに気がついて視線を振り上げた。







 見上げた先でタリア・メイブリックが3バーストからフルオートに切り替え猛然と撃ち始めた。











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