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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #39
194/206

Part 39-1 Grim Reaper's Hammer 死神の鉄槌

NDC-SSN001 DEPTH ORCA(/National Datalink Corporation Sub Surface Nuclear), Central Atlantic Ocean Time 19:46 GT-20:46/

USS Connecticut SSN-22 Seawolf-Class Submarine Development Squadron 5 Navy U.S., 14 Nautical Miles North-Northeast of Ohio-class Maryland Middle of the Atlantic Local Same time/

Ticonderoga-Class Guided Missile Cruiser Philippine Sea (CG-58) USNAVY-CSG(/Carrier Strike Group)2 USFLTFORCOM, 28 Nautical Miles to battle area with Maryland, Strategic Nuclear Submarine 3 nautical miles northeast of Maryland Same time


グリニッジ標準時20:46 現地時刻19:46 大西洋中央海域NDCーSSN001型原子力潜水艦ディプスオルカ/

同時刻 大西洋中央オハイオ級メリーランド北北東14海里(nm) 合衆国海軍所属第5潜水艦開発隊潜水艦 シーウルフ級攻撃型原子力潜水艦コネチカット/

同時刻 戦略原潜メリーランド北東東3海里(nm)アメリカ海軍総軍隷下第2戦闘打撃群(C S G T) タイコンデロガ級CGー58ミサイル巡洋艦フィリピン・シー



 浮上した弾道ミサイル原潜メリーランドへ向かうディプスオルカのセイル艦橋(ブリッジ)から視線を上げ星空の垂れ込め消える水平線の一点を見つめるマリア・ガーランドの視線の先を見つめダイアナ・イラスコ・ロリンズは接舷のために発令所(C R)にいる副長(X.O.)ゴースにインカムで連絡を入れながら不安半分、残りは好奇心で何があるのだと落ち着かなかった。



「────接舷とうちの部隊、テロリスト収容に10人甲板(デッキ)へ」



 マリーが言うように東西の艦隊が本格的な交戦に雪崩込めなかったのがまだ眉唾で、艦載機や対艦ミサイルすべてを封じた方法が端直的なのに、なぜマリーが魔法ですべての武力を消滅できないのかが理解できない。



「ヴィクがやってくるから彼女の海上収容を部下に命じて────」



 視線も向けず社長が告げた事の理由をつかみかねて、ルナは問い返した。



「ヴィクが──ですか!? 本艦にどうやって戦闘機を下ろさせるのですか!? ウエット甲板(デッキ)に戦闘機どころかヘリすら着艦は不可能────」



 彼女そう言いながら、マリーが海上収容と言った事に気づいた。その戦闘機に着水を試みさせるつもりなのだ。



「──セイルの途中サイドからウエット甲板(デッキ)に出れます。セイル内にライフベストやロープ・ラダーと収縮爪竿(つめざお)もありますが」



 ルナが説明するとマリーはさっさと開いたままのハッチからセイル内に下りて必要なものをつかむと横のハッチを開いた。彼女は暗がりの中、セイル横の狭いウエット甲板(デッキ)に出ると用心しながら艦首の方へ足を運び出た。シルフィー・リッツアもマリーについて来たが、ルナはセイル艦橋(ブリッジ)に立ったまま彼女達を見下ろし警告した。



「マリー、気をつけて下さい! 暗闇の海中に落ちると艦を見失います」



「大丈夫よ。シールズのアザラシだったから」



 そう返した彼女にハイエルフは中途半端な知識から困惑し尋ねた。



「シールズとはこの世界の海の軍隊の特殊兵の集団なのだろう? アザラシ族の獣人もいるのか? お前、獣人からジョブチェンジしたのか?」



 マリーは短く笑うと説明した。



「獣人はこの世界にいないわ。シール兵の事を俗称でアザラシと云うのは作戦の多くが水中に関わるからよ。あなたの故郷ベルンフォート周辺には獣人がいるの?」



 気になったのでNDC社長は異邦人に問いかけた。



「ああ、沢山いる。知ってる種族だけで300以上はある」



 スラッと言うシルフィーにマリーは一瞬眉根をしかめ彼女に翼や角のある種族でなかった事を安堵あんどした。耳が長いだけであれだけ眼にしたものが動揺したのだ。だがどんな種の獣人が、と人との異なり様が気になり後をいた。



「なあ銀髪、お前がこの海の地域で人の戦舟いくさぶねが一戦を交えるのを止めたのなら、どうしてあの大きな街に戻らない?」



 NYの事だと思いながらマリーは救命具を握りしめたまま閃光の見えなくなった暗い水平線を見つめ続け直ぐに応えなかったが気になり続ける不安を吐露とろした。



「敵が我が国の艦隊の5倍規模の艦船を送り込みながらめが甘いからよ。形振なりふり構わぬ手段を講じながら、証拠隠滅に走りどさくさに紛れこちらの艦隊にやいば抜いたのに────その痕跡を中途半端に残している」



「我が国というのが西? 東の舟もお前がすべて無力化したではないか。敵陣のしょうが愚鈍だからじゃないのか?」



 そんな事はない。馬鹿が艦隊の指揮を任されたりしない。洋の東西に関係なく軍には典型的な競争原理がある。艦隊指揮官にまで登りつめたものが状況の推移に判断を誤る事は確率と統計的に極めて低い。それに機能を殺したのは水上艦のシステムと乗員が気絶してるだけだわ。まだ互いの国の水中艦──原潜がうろつき回ってる。



 1度の対艦ミサイル飽和攻撃でどうしてあきらめたのかしら?



 集結していた艦艇以外に策はないの?



「何か来るぞ!」



 シルフィー・リッツアが水平線を指さし声を上げた。



「大丈夫よ。仲間の航空機だから」



「う、うう──」



 シルフィーがうめいた様に聞こえマリーが暗闇のウエット甲板(デッキ)で顔を振り向けた。



「どうしたの?」



「初めて乗った日に空から落ちたので、また乗るのかと腰が引けただけだ」



 それを聞きマリーはハイエルフでもものにじるのだと驚いた。冷徹で動じにくい性格づけはこの世界のオリジナルな認識なのだわ。いいや、初めての搭乗日に墜落に近い軟着陸した経験は十分な心的外傷(トラウマ)なのね。



「大丈夫よシルフ。飛んで来るのは1人乗りの純粋に戦闘する航空機だから──」



 マリーが説明する合間に水平線からほのかに青くかがやく光体が急激に拡大して飛来するとディプスオルカのセイル高と倍の抵高度でローパスしたマリーがイメージしか知らぬ風の精霊シルフィードの具現化した戦闘機が空気をつらぬき爆轟を撒き散らしローアングル・キューバンを行うと減速しながら戻ってきた。



 その見たこともない青い光を放つ戦闘機をセイル艦橋(ブリッジ)で顔を巡らしルナは大きくターンして戻ってくる間中、眼を見張った。



 既存の戦闘機とは異質のデザイン──先下がりのノーズコーンに流体デザインのアンダーレールの極度に低い30度と後方に大きく傾斜したパイロットの腰から上にかけて丸見えのキャノピィ下から大きく張り出したストレーク(L E R X)から主翼を構成するウイングレットボディは理解できるが、エリアルールを無視する様なくびれと複雑な曲線からなる極度に上下半角を持つX翼と──機が急半角で引き起こした瞬間見えた主翼が直線のない曲線からだけで成る────ステルス性の微塵も感じさせないアーキテクチャ・デザインにルナが呆れかえっている刹那せつな、あろう事かその未知の戦闘機が機首を星空に向けたまま垂直にバランスを取り四方に揺れながら降下してきた。



 サイドスラスターもなさそうな機体がどうやって垂直を巧妙に維持してるのか!?



 その疑問にルナの観察眼は解答を得た。



 双発のジェットノズルが左右差動し動き続け様々な向きに排気する事でバランスを得ている!



 武装は翼下にストアラックもなく機内収納式なのかと彼女は思ったがマリア・ガーランドの言っていた事を受け入れるならロシアと合衆国の艦載機と一戦を交えて兵装を使い切って──そんな事はないわ! 1機が交戦できる機数は多くなく機内兵装だけでは堕としても3、4機。兵装を使い切りパイロンやラックを切り離し(パ ー ジ)したのかも。



 ルナがそう考えた矢先にメリーランドに接舷するために減速したディプスオルカのウエット甲板(デッキ)上でマリア・ガーランドがその戦闘機へ右腕を振り上げた寸秒、機体が旋風つむじかぜを放ち黄金色に発光する鱗粉りんぷんを撒き散らすとヴィクトリア・ウエンズディが海上に落下した。



 ジェットの轟音がなくなったセイルから見下ろすルナはマリーが誤りながらヴィクの方へハンド・サーチライトを照らしライフベストを投げ、ウエット甲板(デッキ)サイドに強力な磁石でロープ・ラダー一端を固定し舷側げんそくへ垂らしているのが暗闇の中で辛うじて見えた。



 だが一旦は止んだジェットエンジンの音が再び空から聞こえだしルナは星空にシルエットが見えるかと顔を上げた。



 エンジン音は微妙に重なる複数の低い周波数の音に混じり高音が聞こえだした。多発のターボファンエンジンだわとルナは判断し西のそう高度のない範囲を漠然と見ていると航行灯のストロボが見え彼女はウエット甲板(デッキ)で周囲を見回すマリーらに報せた。



「マリー、大丈夫です! 我が社のC-17がレスキュー潜行艇を空輸してきたんです!」



 それを聞いて社長(COO)が問い返した。



「潜行艇だけを!? 水上の対応船の現着はどれくらいなの!?」



「取りあえずは大丈夫です! 潜行艇は自立型で着底し動けない潜水艦を探し出しドッキングし救命後、水上でライフラフト(救 命 ボ ー ト)を展開し人が移動すればさらに捜索に潜ります!」



 そう説明した寸秒、飛行灯が海面高度近くまで下りてくると星空の下でもわかるパラシュートが後部で広がり潜行艇を引き出すと立ち上がった海水の水飛沫みずしぶきがジェット噴流にさらに瀑布に広げ激しい音が伝わってきた。



 それをウエット甲板(デッキ)で見ていた指揮官がルナへ命じた。





「ダイアナ! その救命艇を接舷させて!」





 一瞬で理由を思い当たり、自立型だとわざわざ説明したのにと即座にルナは言い返した。



「救護は救命艇に任せて下さい!」



 刹那せつな、マリア・ガーランドの意識がルナの頭に入り込んできた。





────潜行艇の詳細スペックを! ロシアはまだ諦めていないわ!





 ウエット甲板(デッキ)のハッチが開き次々に乗員が出てきて海軍原潜に接舷する準備を行う中、NDC副社長(V P)ダイアナはセイル艦橋(ブリッジ)で顔を引きらせた。



 こ、この人は救命潜行艇で水中戦闘を行うつもりなの!?











「005(方位)─2900(距離(フィート:約884m)─1930(深度(フィート:約588m))20ノットでなおも深度下げ」



 そう告げるコンソールの上下のモニタに視線を動かすソナー・スーパー・バイザーのクライヴ・ダリモア中尉(LTJG)を見つめていたラッセル・プラント大佐(CAPT)はシーウルフ級でも大型自立魚雷ポセイドンを追いかけるのが危険だと考えた。非公式に安全潜行深度は2400、圧壊あっかい現界は2660だと云われるこの艦を持ってしても全幅の遥かに小さな自立型原子力魚雷の方が応力限界では有利。



 それに圧壊あっかい深度に迫れば近傍での爆発によるバブルパルスにひとたまりもない。



 ましてや潜水艦での深々度設計の多くのノウハウを持つ技術者がいる国の兵器だった。余裕のある内に潰しておくべきだと艦長は考えた。



「15秒で雷撃をかける。魚雷命中座標(A O B)を算出しタイミングを知らせろ」



「アイサー」



 ソナールームから発令所(C R)に戻るなりプラント大佐(CAPT)発令所当直士官(C O D)へ命じた。



「方位、速度そのまま。降下トリム維持。1から4番雷管──CBASS(Mk.84Mod7)を用意。諸元入力を待て!」



 発令所当直士官(C O D)が大声で復誦ふくしょうするのを聞きながら彼が電子海図台へ向かうと指揮を彼に戻すことを宣言し副長(X.O.)のジョスリン・スラットリー中佐(C D R)が近寄ってきた。



「やはり空母打撃群(C S G)ねらっている様です。3度()れ回り込む様に方位を修正し的確に距離を縮めています」



「ああ、色々と憶測を生んでる新型だがどこまで潜れるかわからん。ここで叩いておかないと失探すれば厄介やっかいだ。それに弾頭が通常とは限らんなら余計にここをキルボックスにすべきだ」



 艦長がそう言い切ると、スラットリー副長(X.O.)が恐ろしい事をらした。



「艦長、ポセイドンはトマホークの様に攻撃を回避する能力があると──」



「どこで聞いた?」



「Mk.48のファームウェア更新に来たハネウェルのSEが」



 プラント大佐(CAPT)は眉根をしかめた。彼はタクティカル・トマホークの試験ファイルを軍のデータベースで眼にした事があった。複数の撮影された試験ファイルの中に航空機による機銃掃射での撃墜試験があった。低高度のスースキミングを行う巡航ミサイルを後方上空から接敵するFー16ヴァイパーが機銃掃射で撃墜を試みるが、トマホークは左右に切り返し攻撃を巧みにかわし続けた。



 腐っても魚雷のたぐいだ。いくらポセイドンが20ノット以下で航行しCBASS(Mk.84Mod7)のアップグレードされたソナー・システムをあざむいても、潜水艦の様に魚雷対抗手段(T C M)まで搭載してるとは思えなかった。対抗魚雷を撃ち出す潜水艦の大型ハルソナーから逃れられず最終的には有線誘導された従来の魚雷の餌食になる。



 現に下層へ潜行し続ける大型魚雷は、その深海音響特性ゆえに上層へノイズを伝達してしまう。



 深度潜行能力が優勢に働くとは限らない。



 対抗攻撃プラットフォームが失探せずに上層で追い続ければ、雨のように降ってくるMk.48の新型は深度3000フィートより下の層まで食らいつく。



 大型だろうが、人工知能だろうが、所詮しょせん無人機──バブルパルスに傷つけば機能を失う。



 そう思い、反して彼は軍人の常で、冗長性が意識の隅に居座り続ける事を否定しなかった。ロシア人はこちら側のエンジニアが思いもしないものを考えつく。空中を飛来するミサイルに対しての防衛手段に比べ魚雷対抗手段(T C M)の能力は天地ほども引き離されている。





 ポセイドンの案があの共産圏で生まれたのは60年ほども前なのだ。





 20ノット(:約37km/h)──ロシア海軍新型魚雷2M39のその雷速での合衆国海軍のシーウルフ級搭載第5世代ソナー統合システム(BQQー5E)感知処理限界は900メートルだった。



 シーウルフ級コネチカットの2900(距離(フィート:約884m)先でポセイドンはステルス・モードにシフトし雷速をさらに落とした事にソナーマンらが気づくのにコンマ2秒も必要とせず彼らは苛立つ事になるとは想定していなかった。











 大型トラック2台分に満たない全長。人の身長ほどの直径をした黒に近い暗灰色の頑強な金属のそれがその前面投影面積の少なさの流線型で0℃に近い冷たい海水を20ノットで掻き分けてゆく。



 静かに、それは海流のグラウンドノイズに埋没まいぼつしていた。



 大西洋中央海嶺(かいれい)近隣の上層から深層にかけての海流はおおむね西から東へ流れ速く大きな河並みの水流を持つ。その中で前面投影面積の小さな流線型の生むキャビテーションは無視できるほど小さい。



 A.P.アレクサンドロフ研究所によりSVBRー10をベースに開発された共晶鉛ビスマスの液体金属を熱媒体とする新型液体金属原子炉はアクラ級のOK650ーB加圧水型原子炉の100分の1のサイズで同等以上のメガワット出力を生み出し発電した電力のモーター動力で12枚のスキュードプロペラを持つシュラウド・ポンプジェット推進の非効率さでも60ノット以上の最大速度を出せる。



 最大出力を抑えたのはあえて液体金属原子炉特有のノイズの発生の少なさとの相乗効果により大型原子力潜水艦の水中排水量で80分の1に満たない軽量船殻となる魚雷を十分に高速化し、なおかつ水中放射雑音で高い低雑音性2桁中間値のSN比を達成するために原子炉の小型化がステルス極遠距離魚雷として最優先条件であったからに他ならない。



 その事実を隠蔽するために、政府はあえて大統領声明で新型魚雷を公表し、大都市を壊滅できる大津波を生む100メガトンの核弾頭、それを確実に目的地まで移送できる巧妙さで非常に強力な前型原子力潜水艦の原子炉の十数倍の出力を持つ超高速魚雷でだと西側を脅した。蓋を開ければ超長距離を低速で巧みに隠れ迫る10メガトン規模の核弾頭を搭載するシェイプアップした大型魚雷だった。



 ロシアが西側のあらゆる防衛手段を確実に乗り越える手段を模索し始め、空中を高速で射程を大陸間弾道弾並みに移動できる巡航ミサイルと大型ステルス魚雷に辿たどり着いたのは当然の帰結だった。



 どんな防衛手段もすべての3次元面を網羅し感知する事はかなわず、それが水中となると防衛手段は皆無となるのは古くから戦術研究で知られていた。



 ロシア軍製品の命名慣例と異なり西側での憶測をあおる目的でギリシャ新話のポセイドンから命名された大洋間巡航魚雷2M39はその開発段階からロシア政府の情報操作により西側諜報機関の耳目を集めた。



 高さ数百メートル級の大津波で沿岸大都市だけでなくそのさらに奥地までもを打撃する。



 既に知れ渡っている超高速魚雷シクヴァル(VAー111)の雷速と同等の水中速度とアクラ級の最大潜行深度を上回る潜行性。



 原子炉搭載ゆえ10年単位でのスネーキングを可能とする隠密性。



 軍事力のプロパガンダの意義は相手国に捕らえ所のない漠然とした不安をあおる事で対抗意識を削ぐ事にある。



 実際は小型化に成功したとされる搭載動力炉の大きさと長距離巡航で100mの命中範囲(C E P)維持ために必要な海底地形測探の合成開口ボトム分類サイドスキャン・ソナーシステム、高度な人工知能の搭載スペースにより弾頭は縮小せざるをず最大で10メガトン規模となる。それでも沿岸部大都市や空母打撃群(C S G)を一撃で粉砕するには十分だった。



 外殻にチタンを使い磁気探知機(M A D)の感応を下げたポセイドンは戦闘海域である大西洋中央海嶺近辺の最深度層までは潜行できない。中間層までの1000メートルへ15分かけ緩やかに下りる。



 その場合慣性誘導による長距離誤差を減らすために急激な操舵を行わず。また対潜水上艦や攻撃型原潜の統合ソナー・システムのモニタ画面──レイン・フォール上に横方向に多数の揺らぎを残さぬ様に緩やかに行う。







 ゆっくりと穏やかに、戦略核弾頭を搭載した大型兵器が水中の暗闇のベールに逃げ込んだ。











 取り囲んでいた天球のかがやくドームが水平線で接したエリアから急激に消え始め、入れ代わる様に星空の闇が広がってゆく。



 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦フィリピン・シーのモーゼス・ハンフリーズ大佐(CAPT)を始めとする艦橋(ブリッジ)全員が驚くのも隠せずに普通に見える夜の海上を見渡していた。



艦長(スキッパー)戦闘指揮センター主任(C I C O)からです。ラブーン、コールと第2空母打撃群(C S G 2)、さらに対潜ヘリ3機とEー2Dホークアイ、それに民間トランスポッターを発信する大型機が低空に感あり。2艦のアーレイ・バーク級とさらに1艦リンク回復。方位350─3海里(nm)洋上にメリーランドと所属不明1艦。浮上し停船しています。依然、方位100─30海里(nm)に多数の停船した艦影。ロシア北方艦隊です!」



 艦長のハンフリーズ大佐(CAPT)は状況が好転しているのを直感的にさとった。



 何ものかがロシアの対艦ミサイル群を堕とし、我が艦と随伴艦を光の檻に閉じ込め、さらに事態が落ち着くのを見計らい解放したのだ。その間に状況は大きく変わっていた。



 神の意志を感じながら彼はおくびにも出さずに、発令所当直士官(C O D)へ命じ戦闘指揮所(C I C)に問い合わせた。



「CSGの艦載機はどうなった!?」



「航空阻止作戦中の空母(CVNー77)の艦載機は?」



 寸秒、間があり発令所当直士官(C O D)が聞いた内容を艦長に伝えた。



「レーダーに1機がアヴェンジャー上空を周回。他の航空機はあらず。それと艦載機乗員のものの航空機用救命無線機(E L T)の信号を受信!」



 ロシア側の戦闘機群をも謎の中立艦がすべて堕としたとは考えにくかった。空戦でAー18Fが堕とせたとも考えにくかった。



「ラブーンを艦載機乗員の洋上収容に向かわせろ。コールは当艦とメリーランド臨検りんけんに────」







 モーゼス・ハンフリーズ大佐(CAPT)は言いかけた最中にロシア北方艦隊の原潜がポセイドンでアヴェンジャー(CVNー77)を攻撃する事を思い出し命令をくつがえした。







臨検りんけんは後回しだ! コールのトバイアス(:トバイアス・レストン大佐(CAPT)艦長)へロシア原潜のアヴェンジャーへの攻撃を阻止に向かう! 回頭しろ!」











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