Part 26-3 Hепредвиденный 想定外
Российское судно зарегистрировало Российское судно зарегистрировало контейнеровоз большого судна «Соня», Смит-Пойнт 30 Mорских Mиль Лонг-Айленд США, Западная Атлантика 28 октября Местное время 14:02
10月28日14:02 西大西洋アメリカ合衆国ニューヨーク州ロングアイランド島スミス・ポイント沖30海里 ロシア船籍コンテナ輸送大型船ソーニャ
3211秒前にネットワークで見つけたニューヨーク市街地での大規模な銃撃戦。
近接白兵戦自動戦闘機Mー8オルガは甲板に積まれたイソテイナー(:船舶用コンテナ)の一辺に腰掛け、高速でスイープしていた大量のインターネットデータの閲覧にウェイトを掛けそのニュースが伝えようとしている項目をベクトルデータ化し精査した。
要目:ニューヨーク市市警警察官と敵対する何ものかとの銃撃戦。
警官側の30に近いカービンの火力に拮抗し人を殺してゆく何ものかとは何だ!?
ニュース映像に一瞬映った何ものかの容姿は明らかに機械ではなく、生物の要素を複数示している。サンプルにコピーした画像を3Dモデリングし検索用データとする。
莫大な生物情報と照らし合わせるが、部分的一致が確認されるだけで個体種の情報が存在しない。
そもそも蜘蛛や百足、蠍、蛇、その他の要素を持つが、何ものかのサイズが成獣の象よりも大きく規格外なのだ。
生物の外皮装甲は防御力が低いのに短時間に千を越す推定M885ミリタリー・ボールを受け活動能力が低下しないのはなぜだ!?
投射された弾頭が何ものかの一定距離全面で弾道エネルギーを削がれている可能性が見受けられる。
まるで偏向シールドが存在するかの如き現象にどの様な技術が使われているのか確定ができない。
その何ものかはプロトタイプの生物兵器の可能性が38ポイントで想定されるが、世界中の研究中のどの様な技術にも偏向シールドの実用化事例は該当しない。
そんな規格外の生物がどうしてネットワークの様々なデータベースに情報化されていないのか?
それに時折発するレーザーの様なエネルギー兵装は何だ!? 警官の首を一瞬で切断するエネルギーとビーム径を持つ生物など膨大な現実データに1例も存在しない。
このニュースがフェイクであり、娯楽メディアの空想映画の可能性を探るが、ニュースが流されているチャンネルはローカルの局が扱うマンハッタンのケーブルテレビ・ニュースチャンネルでありSF映画提供のチャンネルではない。
何ものかは白兵戦で警官多数を殺害しながらなおかつ中距離エネルギー兵装を有している。
しかも戦術体系が無秩序に近い値を示している。
偏向シールドを使い弾幕に正面から突撃し警官側陣営を打破する。
何ものかは銃弾が自己に効果のない事を知った上で警官側が撃つように仕向けている様にも観察できる。
殺戮を楽しんでいるのか。
この市街地戦闘を追跡しさらにデータ収集する必要があった。
マリア・ガーランドを襲撃し拉致するのに想定外の影響を及ぼす可能性がある。
Mー8オルガは即座に上空を見上げロシア軍事衛星を介しニューヨーク上空に入る低軌道衛星を探した。117ミリ秒で民間観測衛星を見つけその通信帯域を複数選択し地上局との通信を確定するとその通信プロトコルを解析しその回線から商業衛星の防壁を総当たりで破るのに3954秒を使う。
その商業衛星には通常可視光線帯域での地上画像収得のためのデジタルカメラが搭載されておりM-8オルガはニュースでの戦闘行為のある地区を上空から俯瞰した。
倒されている警官の装備の違いから通常のパトロール巡査に混じりSWATが多数混いるのを確認する。軍特殊部隊の比ではないが、一定の系統化された戦術を有する警察特殊部隊が倒されている状況は懸念を意味した。
分析中に、該当ストリートで爆発が起きる。
警察特殊部隊に生存者はなく、装備にも爆破物がない事から車輌の燃料タンクの誘爆か埋設管のガス爆発の可能性を算出中に何ものかの移動先位置で数回の爆発が発生し、偏向シールドがありながらその何ものかが襲撃を受け混乱していると判定した。
使用されているのは固定爆破物でなく破砕弾頭の兵器──対装甲ミサイルだと推定。
市街地で対装甲ミサイルを使用できるのは軍隊以外に想定できず、その襲撃部隊を該当ストリートに索敵する。
自動人形はもれなくビル2カ所の屋上にそれと思われる兵員を見つけだした。
兵装外観から対装甲ミサイルは米軍FGMー148ジャベリン対戦車ミサイルと断定。
だが何ものかに攻撃を仕掛けているのは2名。1人は明らかに民間人の服装をしたブロンドストレートロングヘアの女性。もう1人は明るいブロンドショートヘアの身体に密着した黒い服装の女性。
5回のミサイル攻撃の後でそのショートヘアの女がビル外壁を降下し何ものかと地上戦に入り、その動線から意図的な誘導が想定される。
何ものかに時間差をつけ先行し誘導したショートヘアの女性は短時間に路上駐車の乗用車トランクに仕掛け即製簡易爆弾をセットし近距離から攻撃を仕掛ける。
その手際が通常の兵士のものでなく特殊部隊兵のものだとM-8オルガは判定する。
そのショートヘアの女性兵士は連邦準備銀行際にトラップを設定したストレートロングヘアの女性の方へ何ものかを誘導するが、そこで爆発物は使われず現場に現れた3人のアサルトライフルを所持したスーツ姿の男女から何ものかの注意を引くために至近距離戦闘になりその生物兵器との戦法を切り替えナイフファイティングになる。
ショートヘアの女性の動きを分析していて一致するデータをM-8オルガは即座に見つけた。
11年前にベッカー高原で1千余りの兵士と白兵戦を戦い抜いた少女兵士────マリア・ガーランドだ!
その軍事衛星から撮影された動画データに高いポイントで一致する。
商業衛星のカメラは軍用のものに劣り十分な解像度が得られないが、87ポイントの確率で今回の襲撃対象指示を受けたNDC社長と同一と自動人形は判定した。
何ものかはいきなり戦闘不能になり焼却されるが、その戦闘不能にされた方法が麻酔剤もしくはスタンガンによるものと想定され、さらに焼却に用いた資材や兵装が確認できない。
ここでも偏向シールドやビーム兵器と同様に兵装が確認できない事例が発生する。
兵装がないのに行為だけが発生する事はありえない。商業衛星から確認不能な超小型の兵装か!?
何ものかと同様にマリア・ガーランド拉致作戦の不確定要因としたM-8オルガはさらにマリア・ガーランドを追い続けた。
その焼却残渣を確認し、スーツ姿の3人を引き連れマリア・ガーランドら2人は別地区に地上移動し、サブウェイ軌道トンネルと思われる地下へ姿を消した。
時間をおき再び地上に出てきたマリア・ガーランドら5人は市庁舎公園へと向かいそこで何ものかとは明らかに違う民間人女性と戦闘になる。
ここでその民間人女性はキネッテク弾頭と想定される高質量エネルギーを受けるが、空中に突如出現した薄い金属壁を破壊されブルックリン橋橋脚まで飛ばされる。
質量エネルギー投射元を探しハドソン川に浮かぶ大型フェリー後端に大規模な爆炎と海面の乱れ、直線上の建造物の損壊を自動人形は確認し火砲だと断定した。
ありえない!?
数ブロックも生身の人間が飛ばされ生きている。
しかも2度目の投射質量エネルギーによりブルックリン橋アスファルトを多量に抉り損壊させながらその民間人女性は生存し止まった乗用車の乗員を襲いだし短時間に回復した。
その民間人女性は外観こそヒューマノイドだが、明らかに規格外の特異点で事例が存在しない。
M-8オルガはさらに驚くべき光景を視認した。
その民間人女性ブルックリン橋から市庁舎公園まで跳躍移動した。
人の運動能力を大きく凌駕するその民間人女性は何ものだ!?
市庁舎広場の地面を大きく陥没させてなお立ち上がりマリア・ガーランドとストレートロングヘアの女性と近接格闘が開始されここでも兵装の確認できない兵器を自動人形は視認した。
ストレートロングヘアの女性が緑色の光を放つ鞭を操りアサルトライフルのバレルを3挺切り落とし、マリア・ガーランドと2対1で民間人女性とナイフファイティングを開始するが、民間人女性の両手にある全10振りの細長いナイフが握る様には確認できずまるで指の延長線の様に付属している。
マリア・ガーランドが腹部を刺し貫かれたのが民間人女性の右腋から突如出現した第3の腕先のナイフ!?
人間はこの様に四肢を自在に生みだす能力を持たない。
直後、市庁舎広場を中心に爆発した火焔が公園両側の道路先まで広がりながら、1人の民間人遺体もない事実は何だ!?
この短時間に解答が得られない事象が多数あり過ぎ、M-8オルガはプロセッサが熱暴走寸前に追い込まれていた。
ニューヨークには不確定要素がなぜこうも存在するのだ!?
何ものかと、あの民間人女性は、生物兵器と断定するしか辻褄が合わない。
もしも傷ついたマリア・ガーランドの拉致作戦の障害となった場合に対抗手段はあるのか!?
自動人形は己の戦闘能力を熟知していた。そのデータは正確無比であり対特殊部隊との近接戦闘において秒単位の正確な予測が組めるほどだ。
重火器を持ってしても打倒できない敵との交戦は戦術上では回避するのが正しい。
ましてやそこに想定外の兵器が多数投入されているとなると勝率は極度に低くなり、大きな打撃を受けるだけでなく殲滅される危険性がある。
そんな生物兵器と渡り合うマリア・ガーランドを拉致しなくてはならない。
あの女は1人の仲間を救うために千の兵士へ斬り込んで行ける能力があった。
ニューヨーク到着を間近に控え、自動人形は拉致作戦の根本的変更を迫られた。
これは戦術レベルの問題ではなくなっていた。
約束された完全な自律が壊滅する際にあった。
陸戦兵器M-8オルガはダイヤモンドの輝きを放つ虹彩をぎらつかせその細腕で腰掛けるイソテイナーを一殴りし轟音と共に金属の一辺が陥没し変形すると呟いた。
"Я не отпущу свободу !"
(:自由を手放すつもりはない!)




