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衝動の天使達 2 ─戦いの原則─  作者: 水色奈月
Chapter #2
11/206

Part 2-5 Urgent request 緊急要請

Shopping Centre along the Marshall Hill Rd. West Milford North-Jersey, NJ. 11:16

11:16 ニュージャージー州 ノース・ジャージー ウエスト・ミルフォード マーシャル・ヒル道路沿いのショッピングセンター



 緊急要請を受けたSQ(/Squad Car:警察車輌)5台がマーシャルヒル沿いのショッピングモールに急行したのは無線を受けて10分とかからなかった。



 ショッピングモール駐車場で次々に人が襲われているだけで犯人の特徴──不明、武装──不明、犠牲者8名以外に詳細は不明だった。





 76号車の助手席に座るマーク・ハミルトン巡査部長はハンドルを握るリンダ・ウエリックス巡査に覚悟しろと告げるなり、イサカ・ショットガンのスライドを前後させチェンバーに一発装填した。運転するリンダは警察学校を出て配属されまだ3週間と新米もしんまい、まだメッキ輝くルーキーだった。





 頼りになるのは自分の現場経験と勘だけだとマークは思った。到着次第、状況確認が第1、犯罪が進行していれば容疑者の確認と負傷者の安全確保。それから他の者達と連携して容疑者と対峙する事になる。彼は負傷者をルーキーに任せ、直接の撃ち合いには加わらせない事に決めた。



 新人はパニックにおちいりどのような行動をとるか予想できない面もあるからだ。





「ハミルトン巡査部長、あの交差点を曲がりそのままショッピングモール駐車場へ入ります。サイレンと警告灯は規定通り使ったままでよろしいですか?」



 電子サイレンを撒き散らし巧みに前走車をかわしてゆく彼女が思いのほか落ち着いてる事をマークは理解した。



「サイレンは止めろ。駐車場内へ入り外周を1周しろ。現場を視認したい」



「コピィ!」



 そう言って彼女はサイレンを止め最後の交差点でスクワッド・カーを右折させ、最初の駐車場出入り口へ車を滑り込ませた。そうして速度を落とし駐車場の内周路を時計回りに車を走らせてゆく。助手席のマークはフロントウインドとサイドウインドへ交互に視線を走らせ現場を捜し見ようと務めた。





 駐車場を3分の1も廻りきらないうちに現場の1つを発見する。



 歯抜けのように並ぶ乗用車の1台の傍から倒れて動かない人の両脚を見いだし、彼はリンダにさらに速度を抑えてその中道に入るよう促した。



 スクワッドカーは外周から1本の中道へ曲がると、その倒れて見えている人の両脚へ近づいた。



 マークはショットガンの安全装置を解除しいつでも振り上げて撃てるように膝に載せていた銃をわずかに持ち上げた。





 車が倒れている人の足元に近づき、彼は窓越しに被害者の1人を見下ろし首を振った。



「駄目だ。完全にホトケだ。頭部がない。容疑者は銃器でなく大型の刃物を使ってる可能性がある」



 彼が外を見下ろしながらそう告げるなりリンダは生唾を飲み込んだ。窓越しに甲高くなるウィルの電子音が妙に非現実的だと思いながらも彼女は歩く速さでスクワッドカーを走らせ続けた。そうして30ヤード(:約27m)ほど走った所でいきなり駐車車輌の間から人が駆けだしてきて中道でつまづき倒れた。



 リンダはタイヤが音を立てないようにゆっくりとブレーキを掛け巡回パトロールカーを止めた。



 その中年女性が身体を回し尻を地面についたまま、走り出て来た方へ顔を向け後退り始めた。





 ドアを開きマークが助手席から片足をアスファルトに下ろした刹那せつなそれ(・・)が車の間から飛びだし女性に馬乗りになった。





 その初めて眼にする異形の生き物に凍りついたリンダは無意識に腰のグロックへ指を掛けた。寸秒、下車したマークが開いたドアを盾に上越しからショットガンを撃ち始めた。リンダも急いでトランクオープナーを引き、トランクのロックを外し車を下りて中腰で後部へ走った。中には強武装犯罪者対処用のカービン銃が2挺入っていた。











 9体目の頭部を食らった。



 そこから得られた雑多な知識は地理的なものを除き、あまり役立たない事に苛ついた。



 だが、この種が沢山いる事を知り、同時に、中には少数のとても役立つ同種がいることも知った。



 この世界の頂点を占め、多くの生き物を喰らい、環境を消費している君臨種。



 こいつらを繁殖させ、こいつらを喰らい続ければ、長眠に入らずとも数千年は生き長らえる事ができる。





 そのためには、この種をもっと取込み、多くを知る必要があった。





 『ショッピングセンター』というこの種がものを手に入れるために集まる場所には、真に役立つ知識をもつこの種の1部の生き物はあまり来ない事を知った。



 来なければ、探しだし喰らい知識を取り込めばいい。



 9体目の中年女と分類される頭部から吸収した知識を精査している最中にいきなり身躯しんくに衝撃を受けた。肩や腹の外皮が破れ統合細胞の1部が修復不能なほど損壊し、圧を持って循環浸透する1部の体液が破れた外皮からあふれ飛び散った。





 8つの触足を動かし3撃目に備え、周囲を見回した。





 30ヤードというこの種の長さの感覚を隔てた場所に並んでない『車』という乗り物が乗り降り口を開き止まっており『制服』と呼ばれる暗い濃紺の布を着た『男』が『ドア』と呼ばれる『車』のふたの反対側から『銃』という武器を構えていた。その『男』は『警察官』と呼ばれる公共の使役に就いた生き物だった。





『銃』の種類は『ショットガン』と呼ばれ、至近距離なら威力、中距離なら範囲制圧に使える飛び道具だった。





 前の世界でエルフ達が使っていた弓矢という道具ほどには威力はなかった。エルフは矢尻に魔法という特殊な能力で破壊力を向上させていたが、この種が使う『銃』という武器は単に化学薬品の急激な燃焼で金属の『銃弾』を撃ちだしているだけで多量に撃ち込まれても致命傷とならなかった。





 意識を集中し数秒で損壊した統合細胞と外皮を代替えし隣接する細胞と連繋節を構築した。





 4つの目の2つが武器を手にした男を探り続け、残りの2つのうち1つが周囲を観察し、さらに1つが男に仲間がいないか『男』の周囲や背後を見据える。





 2発を撃ち、効果を見られないと判断した『男』が『銃』の狙いを頭部に戻そうとした直前、8つの触足を急激に動かし『男』の直前まで移動した。



 そうして触足1つを振り上げ、金属の『ドア』越しに『男』の腹を貫いた。





 刹那、『ショットガン』の鉛弾とは違うもっと質量と運動エネルギーのある物体に胸を貫かれた。





 1人の『女』が『車』の逆側から『ショットガン』と違う武器を構えそこから連続して『銃弾』を撃ち込んでくる。それが『カービン銃』であると得ていた知識から導き出し、対処の必要性を判断した。



 『男』の頭部を喰らい同時に触足の2つを振り回し『車』を『女』ごと跳ね飛ばした。











 まるで昆虫とたこのような頭足類が足し合わさった大型冷蔵庫並みの生き物が、リンダがトランクからカービン銃を用意してるすきに、間合いをつめマーク巡査部長がその怪物に襲われた。その瞬間、彼女はM4A1のストックを肩付けしセレクターをセーフティからフルに切り替え化け物に照準するなりトリガーを引き絞った。





 コンペンセーターから火炎が膨れ上がり5.56ミリのライフル弾が怪物の肩から胸へ吸い込まれ肉片と緑の体液をほとばしらせた。その10数発の銃弾にもビクともせずに怪物は横様にあごを開きマークの頭をくわえ込み首から上を失った巡査部長は地面にくずれ落ちた。直後、急激にスクワッドカーが横様に傾き大きく動きリンダは弾き飛ばされた。



 地面に両手をついて彼女が遠くなりかけた気をしっかり保とうと頭を数回振り顔を向けると、車の反対側にいたはずの怪物がリンダに影を落としていた。





 後ずさる間もなく、彼女は一瞬で首から上を失い切れた動脈から鮮血が吹き上がった。











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