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Butterfly Effect.  作者: 木星本棚
2/2

第一頭 一羽

 欧州のカフェの席で


「最近また物騒な事件が増えてる気がしな」


 と言うのは二十代前半の大学生と思しき女性だ。


「そう?よくわかんないけど」


「あんた呑気過ぎだって。この間テレビでも言ってたじゃない。世界から言葉の壁が無くなってからもうすぐ10年経つけどそれによる弊害が出る頃だって」


「その番組明らかに合成な心霊映像とか特集してるやつでしょう?信憑性欠けるって。あっ事件といえば、黒い噂があった政治家とか社長とかが同じ様な死に方してるってゆうのは聞くなー」


「それね!現代の義賊ってやつ?ターゲットに悪い噂があること以外共通点ないってね。それこそ国とか人種とか関係なく殺されてるって」


「うーん、悪どい人が少なくなるのはいいけどちょっと怖くない?」


「何でー、その殺し屋のことSNSで話題だしファンサイトもあるのに。世界一の殺し屋だって」


「えー・・・・


 そんな女子大生二人の隣の席に一人の男性がいた。

 女性達に背を向けスマホを片手にコーヒーを飲んでいるのはこの話の主人公の一人。


 その男、殺し屋である。




 俺の名前はダイン・ディメンス、殺し屋だ。自己紹介するとしたらそのくらいしかない特徴の無い男、中肉中背で顔はそこそこ整っていると自負している。しかし世界一の殺し屋ではない。さっきの会話に出てきたような義賊ではないのだ。


「そもそも殺し屋ならターゲットとか殺害方法特定されちゃダメじゃない?ましてやファンサイトだなんてっと」


 スマホでそのサイトに打ち込む。そうして数分待っていると。


「確かに仕事のリスクを上げるだけだね。でもそうゆうのもカッコよくない?」


 と返事が変えてっきた。お前までそう言うのかと今節丁寧に殺し屋の美学を説明しようとすると。


「それに今度のターゲットはその殺し屋さんかもしれないよ?」


 そのメッセージを読んだ時にスマホに通知が来た。手に持っているのとは違う仕事用のやつだ。それを取り出して見ると


『仕事の依頼です。ターゲットは最近話題になっている殺し屋です。私は依頼主ではありません。請けるのでしたらご返事ください』


 そのような内容が書かれていたと思う。しかし俺はその依頼よりもサイトの管理人の方に興味があった。まるで預言者の様な自らを情報屋と呼ぶ管理人に。



 結局、依頼主に会うのに二、三日掛かった。その過程で大体の予想がついた。仲介人を四人挟む事と今回のターゲット、それと段々と深まってゆく闇の深さでかなりの大物である事が推察出来る。場所はフランスのビル街。


「トミー様、入室する前に武装解除をお願いします、それと電子機器をこちらに預けていただきます」


 高層ビルの未来的な外見とは違う中世の館の様な内装の扉の前でそう言われた。トミーというのは大物用の俺の偽名の一つでる。どこにでもいて特徴がないのが個人的にたまらない。背筋の真っ直ぐに通っている白髪の紳士の要求に承諾しかねる点があった。


「おいおい、これまで散々たらい回しにされてそちらさんの指示に従っただろう?武装解除はともかくスマホもダメかい?」


 スーツ姿から一流のホテルマンにも見えるが目に光がない。


「すみませんが、主人との会談は音声、映像、画像、その存在に至るまで隠蔽しなければなりません。ここまでの三日のアリバイもこちらで用意さしていただきました。ですからご容赦を」


 言葉遣いとは対照的な強制的な雰囲気にこちらも少し警戒を強める。全くこのタイプはやりづらい。


「ならここで返させてもらおうか」


 ここまで言ってしまったら引き返せない。依頼者との関係は対等では足りない、こちらが折れるなんて事はしてはいけない。


「入室しろ、電子機器は携帯を許可するそうだ」


 扉の中から見るからに屈強な男が出て来て入室を催促する。部屋の中に入ると数人の護衛と壮年の男性がいた。


「私の事はご存知かな?」


「仮に依頼主があなただと知っていたらここには来ませんでしたよ。CONECTにより言語の壁がなくなり情報のやりとりが活発になった。それに伴い増える欧州全土の物流を掌握しているマリオネット社の会長、イヴァン・マリオネットさん」


 そう言うとイヴァンは感情の読み取れない笑みを浮かべた。


 マリオネット社は元々欧州外との貿易を主に扱っていたっフランスの会社だが、CONECTが発表されてすぐその価値を見出し事業に取り入れた。言語の壁がなくなり輸入品に対してのハードルが小さくなり需要が増えた。その状況に対応しきれなかった既存の運送会社を尻目に、マリオネット社は輸入先とのパイプを武器に一躍欧州全土での物流を牛耳った。しかしマリオネット社にはいつもある噂がつきまとった。


「あなたは貿易相手であるアフリカ各国や中南米、アジアに渡って人身売買まがいの商売をして、テロ組織との関係も持っているとの噂は本当で?」


 俺の言葉に護達の緊張がました。


「噂に惑わされるとは、評判の殺し屋にしては些か愚かではないかね?あの噂はうちに潰された者共が腹いせに言ってるだけに過ぎないよ」


「ほう、どの様な評判なのか気になりますが。しかしですね、日本のことわざに”火の無いところに煙はたたぬ”とありますが?」


「日本のことわざか、CONECTにより日本の文化も欧州にも流入しているよ。しかし格言通りにいかないのが現実だ。”事実は小説よりも奇なり”とも言うだろう」


「これは一本取られましたか。まあ自分には噂の真偽は関係ありませんので。それでターゲットの殺し屋との関係を聞いても?」


「何、予告状が届いてね、私の命を頂戴すると記してあったよ。全く濡れ衣で殺されてはたまらんからな」


「予告状ですか・・まあ条件を決めていきましょうか」


 これ以上口を出したら藪蛇だと感じたので依頼に話を戻した。それから30分後。


「それでは報酬は80万ユーロ(日本円で約1億円)で、期限は六月の十日までで。期限の理由はなんですか?」


「何、そろそろ政界にも上がらないといけないのでね。フランスの国民議会の選挙がその時期なんだよ。」


「でしたら期限に余裕を持って仕事を終わらせた方が良さそうですね。それではもうお開きにしましょうか」


 そうして話を切り上げた。








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