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第4話:ギルドクエストⅱ

今回は戦闘描写が多めです。

 都市国家SCの南西に広がる、森。そこに強大な魔獣が出現したとの目撃情報がギルドに舞い込んだ。ギルドクエストとして討伐隊が組織され、ギルドメンバーは各々が準備を進める。それをよそにマサキは汚名返上を胸に秘め単身魔獣討伐へと繰り出した。



「こっちであってるよな……?」


 ギルドを飛び出したマサキは報告にあった森へと向かっている。


「霧が出ていて視界が悪いな……一応、この世界の一般常識はあのジジイ(神)にもらっているから大丈夫だとは思うんだが」


 都市国家SCは大雑把に川、山、森に囲われている。なので森と言えば一箇所を指し示す。


「ここは、最初ベルさんと会った場所だ!つまりここを進めばッ」



 目前に暗闇が広がった。霧に隠れ、その全貌が伺いしれない程の大樹が幾本もそびえ立っている。


「間違いないここが森だ。しかし霧も深いがそれ以上に馬鹿でかい木で光が遮られている。強い魔物が潜むにはもってこいだな……」


 ――引き返せ。そう本能が告げてくる。


「いや、強い魔物の方が好都合だ。俺は魔物を倒して汚名を返上するんだ!なんでもかかってこい!」


 そう自分を鼓舞し、マサキは森の奥へと進む。


「討伐隊が来る前に倒さなきゃいけないんだ、悠長にしてられない」


 深い森の中を足取り早くより奥へと進む。元の世界との差異に戸惑いながらも着実に歩を進める。


「ひぃ、やっぱり暗いなぁ。都会っ子には堪えるなぁ」


 気がつけば周りは整備されていた林道から、獣道へと変わっていた。


「色々と備えはしてきたけど、流石に遭難とかはシャレにならないなぁ」


 心の中の不安が声に漏れる。その足取りにも焦燥が伺える。


 だからであろうか、マサキは気が付かなかった。既に"それ"のテリトリーへと足を踏み入れていることに。



「へ?」

 

 丸い目、魔力を帯び逆立つ体毛、鋭い二本の牙。優に2mは超えるであろう体高を持った獣がそこにはいた。周囲には様々な生物の死骸や骨が転がっていることからその獣の強大さが伺える。


「ヴァルルルッ!」


 獣は低く唸りながらマサキを睨みつけている。


「へっ、へへ、見つけたぞこいつだな。ドラゴンみたいなのを思い浮かべていたが、まるでイノシシだ。大したっ、事はないな」


「今の俺にはアインさんに鍛えてもらった魔法がある。こんなイノシシ軽く踏み潰してやるぜ!」


「焼き尽くせ!火球〈ファイア・ボール〉!」


 ドガァン!!!


 大きな破裂音が周囲に木霊する。アインとの修行の効果か初めて盗賊に使用したときとは桁違いの音にマサキは驚きつつも安堵した。


「よし、実戦でも上手くいった。修行の効果は出てるな!油断は禁物だがこれなら魔獣もひとたまりもないんじゃないか?」


 マサキが注視する先には未だ煙が広がっており、魔獣の姿は確認できない。


「中々出てこないな、もしかして木っ端微塵にしちゃったかなぁ。それだと困るな、討伐した証明ができない」 


 そう考え、煙から意識をそらした瞬間――、何かがマサキの横を通り抜けた。その風圧によってマサキは尻餅をついてしまう。


「うわっ、なんだ!?」


 目線で確認すると、そこには魔獣の姿があった。体表には傷一つなく、旋回し再び突進を試みる様子だ。


「ノーダメじゃないですかヤダー」


 マサキは横に転がり突進を回避、しかし魔力を纏った魔獣が通り抜けた暴風はマサキの体を切り裂いていく。


「痛い痛い痛いっーー!!クソッタレ、喰らえ火球火球火球!!!」


 マサキは痛みを堪え、やけくそに火球を放つ。


 ドガァン!!!ドガァン!!!ドガァン!!!


 相変わらずそこに火炎は発生せず、再び破裂音と煙が爆風とともに広がった。


 同じやり取りを何度か繰り返したが、変わらず魔獣は無傷なことを誇示するかのように突進を繰り出してくる。


「こんなん、どうすればいいんですか!助けてアインさんーー!!」


 尻餅をついた上に先程よりも近距離、かつ魔法発動直後ということもありマサキの回避が遅れる。


 先ほどと同じならば必中の位置、ヤバイととっさに身構える。


 ビュオッ!

 

 先程と同じく暴風が通り抜ける。しかし、魔獣の軌道はマサキを大きく外していた。



「え?」


 魔獣の進路がそれたことでマサキは周囲の状況を再確認する猶予ができた。


 立ち込める煙、充満する異臭、小さいながら不規則にえぐれた地面。


 魔力量だけは超弩級なこともあり、がむしゃらに火球を連発した結果周囲の環境は大きく変化していた。


 未だ見当違いな方向を向いている魔獣についてもマサキは注視する。


 その体表は相変わらず傷の一つもついていない。しかしその四肢は重心を見失ったかのように乱れた足取りとなっていた。


「俺の魔法が効いたのか?」


 マサキは気づいてはいなかったが、魔獣に直撃した火球は元から低い威力の大部分を魔力を帯びた体毛に吸収されていたが、火球により発生した振動、破裂音が魔獣の内部にダメージを与えていた。

さらに煙などの環境変化が加わることで魔獣の方向感覚を失わせることに成功したのだ。


「なんか知らんが魔獣がふらついてる、稀代の天才魔術師の手にかかればこんなもんだぜ!」


「オラオラオラ、所詮獣なんてこんなもんか?火球!火球!火球!」


 魔獣が弱ったと見てマサキは猛攻を仕掛ける。


「ダメ押しだ!死に晒せ火球〈ファイア・ボール〉!」


 ――決まった

 

 マサキはそう確信した。事実、普通の獣ならば間違いなく倒れるだろう。


 

 そう、魔獣でさえなければ。


 ズオッ!


 魔獣を中心として、魔力の風が円形に広がる。


 勝ちを確信したマサキはその直撃をモロに受け、体ごと木に叩きつけられる。


「ガハッ」


 更に周囲に立ち込めていた煙は消え、体勢を立て直した魔獣はマサキを正面に捉えていた。


「ヴァルルルッ!」


 終わった……


 今のマサキでは回避できない。あぁ神様、はあのジジイだからベルさんに祈ろう。

 

 あぁベルさんあなたの笑顔をもっと見たかったです。




 ピチャン――


 静謐な音が波紋のように広がった。

 

「ほう、貴様の方だったのか」


 足元には先程の魔獣が倒れており、見上げると笠をかぶった男が立っていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

4話は戦闘描写が多めで、いつもと書きぶりが違かったと思いますがいかがでしたでしょうか?

これからマサキがどんどん活躍していくのでご期待下さい!

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