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第1話:全裸、盗賊に襲われる

 俺、六万 マサキは、風俗店で6万円かけてテクノブレイクで死亡。その後、神様を名乗るクソジジイに爆笑され、金と魔力をもらい、剣と魔法の世界に転生したのだった。全裸で。


「…………なんで全裸なんですかねえ」


 確かに死んだとき全裸だったけども。そんなとこ再現しなくてもいいじゃんよ。


 誰かに見られたらどうしよう……。なんかここ街道の真ん中だし。


 

 ここで状況を確認しよう。


 どうやらここはどこかの街道の真ん中のようだ。かm……クソジジイからもらった一般知識によって、ここがライン大陸のどこかだということはわかってるんだが……。


 ちなみに、この世界の文明レベルは中世程度だ。お決まりだね。


 街道は森まで続いているようだ。ということは、反対に歩けば街があるだろう。しかし、全裸の男がいきなり行ってなんと説明するのか。即衛兵にしょっぴかれるだろう。


 かといって、森に行くのも危険だ。魔物とか出るに決まっている。全裸の男に何ができよう……。


 そして何より、


「どうしたものか……。これ」


 俺が立っている直ぐ側に、金貨の山があった。


 いや、確かに金をくれとは言ったけどさ……。これはないでしょう。どうやって運ぶのさ。それに何枚あるんだよ……あ、6万枚か。クソっ!!



 俺が無駄に憤っていると、森の方から悪い笑みを浮かべた大漢が、下っ端らしき数人を引き連れて現れた。


「ほう……。報告を受けて慌てて来てみれば、マジでお宝が転がってるじゃねぇかぁ」


 どう見ても盗賊です。本当にありがとうございました。


「僕は悪い全裸男じゃないよ」プルプル


「あ?何言ってんだ?……まあいい。剥ぐものもないし、ここで立ち去れば命だけは助けてやる。どっかいけ!」


 どうやら死んでも滑舌は治らなかったらしい……。いや、そんなことよりどうするこの状況!?全裸の男にできることは少ない。とりあえず金貨の山で俺の凶悪なファイナルウェポンは隠しておこう。切り札だからね。


 金貨の山に足から突っ込む。これで安心だ。


「どうやら逃げる気はねぇみたいだな。覚悟はいいな?」


 大漢は持っていた斧を構える。


 マズい!ふざけている場合じゃないぞ!このままでは殺される!


 しかし、この状況でも俺は比較的落ち着いていた。なぜかって?だって俺には神からもらった膨大な魔力があるんだぜ?魔法についての知識もバッチリ覚えている。全裸だろうが魔法なら関係ない。ぶっつけ本番だが、ぶっ放してやるぜ!


「命乞いをするのはお前の方だぜ?――焼き尽くせ!火球〈ファイア・ボール〉!!」


 ボンッ!


 大漢の斧の表面が爆ぜた。……とても小さく。


「……」


「アヒャヒャヒャ!何だ今の?ファイア・ボールって言ったか?デケェ口叩いた割にしょぼすぎだろう!」


 失敗した失敗した失敗した失敗した


 何今の?膨大な魔力って?ポップコーン作ってんじゃねーんだぞ。


「魔法ってのはな、こう使うんだよ!――礫よ穿て!石弾〈ストーン・バレット〉!」


 なんと!盗賊は魔法を使ってきた!


 もうダメだ!



 そう思ったその時――


 ザシュッ!


 眼の前の盗賊たちが、突然血しぶきを上げて倒れた。


「――大丈夫?」


 振り向くと、そこには明るいブロンドの長い髪をした、気の強そうな美少女が立っていた。


「今のは……?」


「風刃〈ウインド・カッター〉よ。あんな下級魔法なんてことないわ。それより、怪我はない?」

 

 キ、キ、キターーーーーーーーーー!!!


 これは来ましたよ!異世界で美少女!これはハーレムへの第一歩!!のはず!


「あ、ありがとうございまふっ!」


 マぢゅい!噛みまみた!女の子と話すって緊張するな~。絶対聞き取れてないぞこれ。


「(何言ってるかよく分かんないわね……)そう、まぁ大丈夫そうね。危ないところだったけど、こんなところで裸で金貨ぶちまけてどうしたの?」


 マジ天使!普通に会話してくれる上に、道端で全裸の男を助けてくれるなんて!普通見ないフリするか通報だろ。


「助けていただきありがとうございます。俺は六万マサキって言います。東方の出身で、言葉が通じづらいと思いますがご容赦ください」


「ふうん。ま、分かってれば聞き取れないこともないわね。私はベル・フルール。都市国家SCで冒険者ギルドの受付嬢をしているわ。で、その金貨は?」


 よし、今度は通じたぞ。咄嗟に出た言い訳だがなかなか良いんじゃないだろうか。


「旅の商人をしていましてね。盗賊に襲われていろいろあってこのザマなんですよ。いや~災難でしたよ。ハハハ……とりあえず服着ますね」


 俺は盗賊の亡骸から無事な衣服を剥ぎ取っていく。まだ生暖かい死体に少しえずきそうになるが、グッと堪える。FPSで血には慣れてるからね!余裕だぜ。まさか自分が剥ぎ取られる側になるとは思わなかっただろ。ザマァ


 着替え終わると、ベルさんに話しかける。待っていてくれたのだ。マジ天使。


「金貨なんですが、どうしましょうかね……。馬車もなにもないので、全部運搬できないし……」


「あら?商人なのに収納魔法は使えないの?」


 収納魔法か。闇の上級魔法"影納〈シャドウ・インベントリ〉"だな。


 魔法には、地水火風に加えて光と闇の6属性がある。さらに威力によって下級、中級、上級に分類されており、さっき俺が使おうとした火球なんかは下級魔法に分類される。あと、ユニークと呼ばれる特殊な魔法もあるようだ。


「実は魔法はあまり得意じゃなくて……収納魔法なんてとても……」


「そう。ま、収納魔法持ちは珍しいからね。そんなに金貨を持ってるからどこかの大商人かと思ったわ」


「まあ、一人でやってる割にはそこそこ頑張ってると自負してますがね」


「その金貨だけど、私が運んであげてもいいわよ。収納魔法が使えるの。報酬は3割でどう?」


 収納魔法使えるんですか!?さすがですね。でも3割か……命も助けてもらったし、むしろ安いと思うべきか。他に選択肢もないし、そもそもこの状況で奪われないだけで奇跡だ。ベルさんマジ天使。


「そういえば行き先は?この街道にいるってことは、SCでいいのよね?」


 都市国家SC、ライン大陸の都市国家連合TCUに属していたはずだ。SCはサウスコスタリカの略らしい……絶対地球人がつけたろ!異世界人って結構いるのかな?


「ええ、SCで間違いないです。お願いできますか?」


 これでしばらくベルさんと一緒だぜ。


「わかったわ。――影納〈シャドウ・インベントリ〉」


 ズズ……金貨の山が地面に吸い込まれていく。


 すげえ。実際に見ると本当に魔法の世界に来たんだと実感するな。


「金貨5万9900枚、すごい大金ね……」


 数まで分かるのか。便利だな。適正があればいつか覚えたい。


 手持ちに100枚袋に入れて持ったので合計6万枚だ。……やっぱり6万枚か。クソっ!


 この世界の貨幣は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨がある。日本円に換算するとそれぞれ十円、百円、千円、一万円、百万円って感じだ。わかりやすい。


 金貨6万枚ということは6億円か。遊んで暮らせるやん。ここは6万円使った自分にグッジョブというべきなのか……


「いや、たまたま仕入れのために現金を運んでいるところでしてね。迂闊でした……。それでは行きましょうか」


 こうして、冒険者ギルド受付嬢のベルさんに助けられた俺は、彼女とともに都市国家SCを目指すのだった。

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