2 カマキリ
あらすじ
転生ガイドを務める女性型オペレーターは、ラニアケア銀河団消失に伴う大規模な転生作業を予感し、逃げるに逃げられず悲鳴を上げるのであった。
計画は大事なものだ。
計画性があるオペレーターは、貴重なのだ。
最悪の状況に備えるオペレーターは、最悪の状況であっても、最悪に陥らなくてすむのだ。
「無理だわ」
オペレーターはカマキリ型生命体の魂を前につぶやく。
「無理って、なにがっすか?」
きょとんとした顔…をしたのであろう、カマキリの魂塊をじっとみて、深々と溜め息をつく女性型オペレーターに、カマキリが労りの気持ちが伝わってくる。
「自分で良ければお手伝いさせてくださいっす!
自分、女神様のお役に立てるならなんだってしまっすから!
あ、肩もみましょか!」
「いや、気持ちだけで結構。
首斬られそうだし」
「じゃあお話だけでもどっすか。
自分で良ければっすけど」
オペレーターが斯く斯く然々と、カマキリにイメージを植え付ける。
「おおう、これは大変でっすね…というかあたまがぐわーんってなるっす。
頭なんてもうないから大丈夫なんっすけどー」
「で、ここのラニアケア銀河団ってところが、まるまるぽしゃっちゃったの。
演算停めて、全部の魂を洗い出して、再利用できそうなものはデータセンターに一旦保存することになったのよ」
カマキリは、星の大きさ比較をテーマにしたメディアの試聴記憶を引っ張り出した。
「ラニアケア銀河団ってこれっすか、はえー…すっごい。宇宙ヤバい!
ここにあるデータ、全部女神様が処理するっすか。そりゃ大変っすよ」
「全部ってわけじゃない。ある程度は抽出できるけど、それでも膨大だから、先は長いわ」
話し相手のカマキリからすれば、永遠の時間を無限回繰り返したとしても終わりが見えないと思えるのに、できないとは口にしないオペレーターへ、更なる敬意を抱くのであった。
「女神様とお会いしてから考えてたんっすけど、異世界転生みたいっすね」
「いせかい、てんせい。
転生ガイドも業務なのだけれど。魂を別の領域に転写して行くのとは違うのかしら」
「ライトノベルとか、御存じっすか?
肉体が死んだあと、神様とか女神様に転生させてもらうっすけど、今まで生きていたのとは別の世界だったり、星だったり、次元だったりするっす。
登場人物はふしぎな力をもらって、その世界で生きたりするっす」
オペレーターはカマキリの記憶からイメージをすくい出して
「面白そうね」
と、つぶやいた。
そういうことになった。
未消化ネタキーワード
魂の状態
グレートアトラクタその他の影響
散逸と隔離と光速の壁