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異界の果て  作者: 蒼花
9/10

落ちてくるものと 狂った竜

「神域の大樹・・・この木こそがこの世界そのもの・・この木が枯れれば世界は終わる。この木によって我々は救われたのです。大きな過ちを犯したにもかかわらず・・・・・」


いつのまにか 恍惚状態から復活したオーリクが 先程までとは全く違う まさに長老という威厳と風格を滲みだす様な声で語り始めた。


「このフロウエンドが生まれてから2年目に 3人の人と1匹の魔物が 落ちてきたのです。3人は 魔物と戦闘中だったようで 手には剣を握っておりました。我々竜は、この神樹から見えたのですが、全力で飛んだとしても半日はかかる距離 もともと竜は長時間飛び続けることの苦手な種族なため 助けることは叶わず、 魔物は 羽のあるものだったのか 何処へともなく姿を消しました。

それからは、度々 落ちてくるようになったのです。。

 今我々がいる神域の大樹とそれを囲む森は タロス山の頂上にあります。 タロス山 そのほとんどが岩でできており 竜の棲みかに最適で 多くの竜が棲んでいます。我々竜が助けることのできるのは ここから近いフォレスタリア大陸に落ちてきた者達のみ、リュートリア大陸に落ちたものを救うことは叶わず 多くの竜が悪夢にうなされる日々を送る事に・・・私自身も未だに 間に合わず 落ちていく赤子が 魔獣の森へと消えていく様が 目に浮かびます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ん だめだ また 思考停止した。 あっ 涙が 鼻からも・・・


「申し訳ありません。きっと 親友のミロスのことを 思い出したのでしょう。

父にとってミロスは、親友でありながら兄のようだったと聞き及んでいます。体は一番大きく 地竜へと変化している途中だったようです。番のアメルは、それは美しく青く輝く姿で 珍しい水竜でした。ゆくゆくは ミロスが、竜の王となるはずでした。

 ところが あの’過ちの日‘に 生まれて間もない子を亡くし 悲しみにくれたアメルが 落ちてきた動物をわが子の様に想い危険地帯である岩峰山へ飛び誤って針岩に貫かれ亡くなってしまいました。 番を亡くした竜は たいてい悲しみのあまり眠りにつくのです。 そして そのまま目覚めません。 仲間もあえて起こすこともしないのです。  ところが ミロスは 眠れなかったのです。落ちてくる命を救わねばと来る日も来る日も 空を見上げ 飛び回り 助けることが出来なかった日には、夜が来ると 咆哮ををあげ続けました。  もう 誰も 慰めることはできませんでした。それもそのはずです、竜族のものすべてが 同じ気持ちでしたから。 皆も ’過ちの日‘に 竜族の半数以上を失っているのですから。その悲しい咆哮を聞くと このまま竜は滅びてしまうのではないかとさえ思ったと聞き及んでいます。

 20日間 咆哮をあげていたミロスは とうとう暴れ始めました。 岩峰山に行き 辺りを壊し始めましたが 誰も止めることは出来ませんでした。一番大きく一番強いミロスを止めることなど誰に出来ましょう。 まして 既に正気を失い 血を流し 死を求めているものを。 父は 近くで見守ることしか出来ず、 そして、父もまた 咆哮をあげ続けたそうです。 誰か ミロスを死なせてくれと、救ってくれと。

 そこへ 一人の人間の女性が現れました。 その姿は 美しく長い金髪 色が白く、目は瑠璃色で金粉がキラキラと光っていました。そして 小さな小さな瑠璃色の鳥がくるくると女性の周りを飛んでいました。 

 その姿を見て 父は思い出した事があったそうです。それは あの’過ちの日‘に 瀕死の仲間が「神に会った。瑠璃色の小さな鳥を連れていた。スピカという名前だ。『助けに行くから、スピカと共に。 金髪で瑠璃色の目をした我が子が』と だから 耐えよ。」 そう言って 仲間は亡くなった。

 それを思い出し ミロスを救ってほしいと願ったが、竜である自分は、仲間同士の様な念話では 願いを伝えられない せめて人間の姿に成れたらと考えていたら、人間の姿に変わったのだそうです。 そこで 父は ミロスを死なせてほしいとお願いしたそうです。神子様は、最初は首を縦には振ってくださらなかったそうですが、 竜は、番を失っては生きる気力を失って眠るはずが ミロスは眠ると アメルが 針岩に貫かれる夢 小さな動物が地面に叩きつけられる夢 人間の赤子が魔獣の森に落ちて食われる夢を見て 正気を失ってしまいしまった。例え 正気が戻ったとしても 長寿な竜は 苦しみが長引くだけ・・いっそこのまま正気を失ったまま楽にしてほしいと 必死になって 頼んだそうです。そうして気がつくと 番のテセラ もう一人の親友のゲイドとその番のモラ その3人までもが人間の姿になって 同じように跪いていたそうです。

 この時が 我々竜族が人化出来る様になった日であり 神子様との会合の日であり狂った竜ミロスが 神子様に救って頂いた日なのです。

 

 神子様が、 涙を流されると スピカがあっというまにミロスの心臓のある辺りを突き抜けていきました。 


 我々竜にとって神子様は 苦しみから解き放ってくださった救い主、そして 人族とともに生きる道を切り開いてくださった導き手なのです。

 

 お戻りになられて どれだけ歓喜に震えているのか、叫びだしたいのですが・・・・・我慢いたします。10日程我慢いたします。」


「10日って?」


「うーーん。10日咆えないでねーってお願いしてるの。それだけあれば 王都ヴァインズの王族への挨拶をして ノアの消息聞いて 探せると思う。」


あーー父さん探しに来たんだった。 色々盛りだくさん過ぎて 本来の目的忘れてたよ。

 

「ノアとは ミリュエル様の番のアレキサンダー様のことですね。」 


「ええ。もしかして 会った?」


「いえ、直接には。飛竜に乗って 飛んでいる姿を何度かお見かけしたのですが・・・ミリュエル様をお探しになられていた様でした。長老のゲイドとは 共に行動することもあったようですが・・・・ゲイドは ゼダを探していたので共にいたのでしょう。」


「ゼダ?神竜のゼダ?俺と同じ歳の? 探してたって いったい・・」


「はい。お恥ずかしいのですが、 あの子は8歳の時に 家出をしまして・・ずっと探しているのですが 未だに 見つかっておりません。・・・私が悪いのです。 気配の消し方など教えてしまったせいで、まさか 帰ってこなくなるとは・・・幼竜は、竜人の里までしか 出かけてはいけないという決まり事があります。それに不満があったことに気が付かなかったなんて・・・・父親失格です。」


「あら、ゼダは アルバのお子さんだったのね。 ふふっ きっと そのうちに 出てくるわよ。そんな気がする。もしかしたら ラウールに 会いにくるかもね。」


「んん? 俺? ふーーん じゃあさー 10日たったら 俺も叫んでみる。それで会いに来たら 面白そう!」 


なんか 微妙な顔をしたアルバに 苦労性なんだなあと、妙な親近感を覚えた。おちゃらけといてなんだが・・・たまには いいじゃんか。いつも苦労させられる方なんだから・・・・そのアルバに苦労をかけているオーリクの方を見ると 胸元が濡れていた。まだ目の涙と鼻の涙の制御不能のようだ。やはり 復活は あきらめた方がいいだろう。


「アルバ、私が、帰って来れなかったのには 色んな理由があるのだけれど、そもそもの原因は、私の弱さだった。神子になったのに 人に知られないように隠れることしか考えていなかった。 だから 不意打ちにのまれてしまった。 もう 同じ過ちは 繰り返さないわ。

 あと2,3年に迫って来てるよね。準備しないとね。」


「何? 迫ってるって?」


「’20年の災悪’ 」


「何それ・・・」


「20年ごとに 悪意が降ってくるのよ。 竜と人とが 手を取らないと 絶対に無理なくらいの 恐怖が降ってくるの」





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