ポトスとスピカ
「 颯ちゃん今着てるセーターの下に着てるシャツ 胸ポケットある? そこに トゥールいれといて! あったかくて ちょうど良いと思う。 まだ 赤ちゃんだもんね。 家に 置いとく訳にはいかないからね。」
「でるの?」
「ん〜そう。 契約は、スピカの故郷のポトスでするから。 他のスピカと顔合わせしとかないとだめだし。
はあ〜 行きたくないけど がんばるー」
「ん ポトス? 観葉植物と同じ名前」
「ふふ 家にいっぱいあったからね。あれは神界と同じ名前の植物に 興味あったからね、生態調べてみたけど 唯の 丈夫な葉っぱだった… まあ 植物だらけの世界なんだけど」
トゥールをポケットにそっと入れたとたん 目の前の景色が、変わった。
「うあぁー!お願い! 住処の方に連れて行って!」
今 一瞬 目の前に 植物の緑が広がっていた様だったが、すぐさま転移したのか 今は 穴蔵の様なところにいる。
壁に 四、五十センチの丸い穴が開いていて そこから淡い光が差し込んできて 部屋の暗さを和らげている。
すぐ横に 流花さんが 青い顔して立っている。
「ここは?」
「はぁ〜ここはポトスで 今いるのは スピカ達の住処よ。ここは 安全だから」
「うん?危険があるわけ? 神界で 植物だらけの世界なんでしょ?」
「私の心の平和の為に、避難は最重要事項だから!兎に角、契約を済まそう!
あー 説明しないといけないんだった。
前任の現存神のジニア様から 聞いたこのポトスの成り立ちについて 話すね。
世界の神様の一人が 生き物の食料の確保の為に 成長が早くて 味も良い植物をお作りになった。 丹精込めて作ったから それは美味しい植物で 早速 ある 誰も住んでいない世界に植えてみた。 ところが 5日程して様子を見に行ってみたら その世界の半分は 埋め尽くされていました。
そこで 神様は 考えました。せっかく作った美味しい植物を失敗作として 破棄するのは惜しいので、植物を好む生き物を住まわしたらどうかと。そこで 七色に輝く 美しい蝶を放ちました。蝶の幼虫は どんどん食べ どんどん成長し 大型化したものまで現れました。
辺り一面の幼虫が食べ尽くしているのに 植物が、増えるスピードには追いつけません。
それどころか かえって 植物が元気になっている様です。観察を続けていると 幼虫の糞が、植物の養分になっていることが、解りました。 神様は、悩みました。
そんな時 他の神から 厄介者の引き取り手を探している神がいると聞き、事情を聞いてみる事にしました。 その厄介者は 大人しい草食の魔物なのだが、とんでもなく大食漢なのだそうだ。 この出会いはまさしく運命!
こうして 大食漢のベヒモスを住まわす事になりました。ベヒモスの食事量は絶妙で、植物が繁殖し過ぎない様 食べ尽くして絶滅させないよう ちゃんと加減していました。 見事な共存関係を維持している。感涙しました。
たが 神様は 一つだけ 気になる事があった。 それは 孤独です。 ベヒモスは、もともと珍しい生き物だ。 このベヒモスの様に 食べ物が無くて、厄介者になってしまった者なら兎に角、その土地に馴染んだ者を 勝手に連れて来る訳にはいかない。 移住しても良いと言うベヒモスが現れるまで、友達を連れて来たらどうかと考え、神自身の分身とも言える生き物と同じ者をたくさん生み出した。
それは、小さな鳥で、とても愛らしかった。名をスピカと言ったので、生み出した鳥達の種族名をその名をとって スピカにした。
スピカ達には 転移の力を与えた。そして自分達の様に 神か神子の分身となって共に生まれ、望まれた時は 身を守り 共に生きてほしい。 ベヒモスの仲間を探して神子とともに可能なら連れて来て住まわしてほしい。そして 永遠と言えるくらい長寿なベヒモスが もし 苦しんで暴れ、誰にも止められない場合は、その命を終わらせてほしい。 その為に 無敵の力を与えられた。 そして、植物の名前のポトスをこの世界の名前に決められた。
後に、神木を 植えられ、神気に満ちた世界にして 神界とし、人が入れぬ様にされた」
「えっと 無敵? 」
如何見たって、このピルピル鳴いてるちっこい生き物は、瞬殺されそうなんだが。
「そうよ、竜すら瞬殺。弾丸の如く 心臓を突き破るんだって。ジニア様の時代に病気で狂った子を死なせてあげたみたい。
ベヒモスは硬いから 目を突き破って脳を破壊すると 瞬殺させれるんですって。 ほら、今 私達が いる所 ベヒモスの脳があった所で あそこの窓が目があった所よ。」
「うぁ〜脳みそあった所に居るなんて、ここスピカの住処って〜」
「そりゃー外は 一面に青虫がいるんだから。外は悪夢!
あと ベヒモスが3体いるから。 ベヒモスの心配は いらないし、 スピカは神気さえあれば 生きられる。 ただ 神気のない所は 好きじゃないのか あまり姿を現さないわね。 なんか私達の体の中に隠れて同化してるみたい。
私も最初は、知らなかったんだけど スピカと私達は、一緒に生まれて来てて、成人が近くなると 必要とされてると感じると、望む姿になって 姿を現してくれるみたい。
実際、リルが現れた時って、図書室で 、世界の不思議っていう本を読んでいたの。そこに、 目に見えないくらい速く飛んで ぶつかるものを 突き破る甲鳥という伝説の鳥がいるって記されてて、かっこいいな〜見たいな〜って思ってたのよ。 他に キラキラ輝くスピカと言う不死鳥が どこかの世界には存在した。とか 行き場を無くした魂を導いてくれる導き手が居て 幻の鳥とか 魂の導き手とか 呼ばれてるとか。 全部 スピカの事だよね〜
その時は、会いたいな〜って思ったのよ!
そしたら リルが現れた。ロックの時も 燕に朝起こされて 結構嬉しそうにしてたよね。だから、 ロックの事望んでたんだよ! それを 契約する時 言ってほしいの。」
「分かった。どうすればいい?」
「ロックを手の平に乗せて、父親の名前、母親の名前、自分の名前を言って、ロックと共に生まれ、共に過ごすことを 望み、神の子となります。…って わぁぁ 本当の名前教えてなかったんだわ! じゃあ 復唱して 父の名は、アレックス・ノア・ランバート」
ロックを手の平に乗せ ジッと見つめ
「父の名は、アレックス・ノア・ランバート」
「母の名は、ミリュエル・ルカ・ランバート」
「母の名は、ミリュエル・ルカ・ランバート」
「汝、ラウール・ソウ・ランバートは、」
「汝、ラウール・ソウ・ランバートは、ロックと共に生まれ、共に過ごすことを望み、神の子となります。」
その瞬間、ロックのいる手の平から暖かい光が溢れ、そして急速に膨れ上がった。 一瞬浮遊感を感じ、何かが抜けた様に収まった。
「これで、完了。ロック、良かったね。」
ロックが、 飛び回るとリルまでもが一緒になって 踊る様に 飛び回り始めた。
「あー颯ちゃん、あのポトスを作った神様の話、ちゃんと覚えておかないとだめだよ。 次 誰か神子の誓いをする時、話てあげるのは 貴方だからね。 私は、16年前に聞いたから まだ何とか覚えていたけど、ジニア様なんて 2千年前に聞いたって顔歪めてたよ〜 仕事の引き継ぎ、申し送りは大事だって 麗花さん言ってたよ〜〜」