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異界の果て  作者: 蒼花
3/10

弾丸が飛び交うとこじゃないんだね

 「終わったなー」


 「ああ」


 「あっけなかったよなー」


 「ああ」


 「もう あそこには 行かないんだよなー」


 「ああ、そう言えばそうなるんだな」


 卒業式の帰りといえども 男二人の会話など こんなもんだ。

 特に隣にいる幼馴染の冬彦とは 要点だけというのが多い。

 だから 休学のことはこいつにだけ 打ち明けてある。

 同じ高校だし。 


 「後のことは 頼む」


 「ゲームよろしく」


 簡単だった。

 感謝 感謝!!  流石幼馴染!



 頼り甲斐のある冬ちゃんと別れ1人いつもの通学路を行くと 森の中に入る。

 ここは 途中分かれ道があって 上へ行くと神社の参道  真っ直ぐ行くと自宅へと続く。

 

 参道の方へ行き、10分程坂道やら階段を登り、見晴らしのいい処にたどり着く。ここに着くと いつも清々しい気持ちになる。

 大きく深呼吸をして呼吸を整える。

 その先に 小さな鳥居があり 一般の人は立ち入り禁止になっているのでここで 柏手を打って礼をする。


 「卒業式 終わりました」

 

 頭を上げようとした時、 俺の腹から何かが飛び出してきた。

 どうやらそれは 黒い小さな鳥で 尾羽が燕みたいだ。

 そいつはすぐさま向きを変え 今度は俺の顔を目掛けてすごいスピード突進してきた。

 そのあまりのスピードに目をつぶることしかできずにいた。



 なんの衝撃もないので恐る恐る目を開けてみたら そこは知らない森の中だった。

 先程通った参道に 樹木の高さとかが似てはいるが、坂道や階段がない。

 勿論鳥居もない。

 そしてかなり奥深くまで続いている様子で 空気が今まで感じたことのないものだった。

 湿度があるというかなんかこうねっとりとまとわりつく様な それでいて体は軽い。

 気温が低いのか?

 神社のご本尊の山にでも来てしまったのか それとも狐に化かされたのか 右に行くべきか左に行くべきか せめて高低差があれば下るのに  ってそもそも山ん中むやみに歩き回らないほうがいいんじゃ・・・

 自分がどこにいるかわからない事への不安を感じ 自分を落ち着かせるために 大きく深呼吸してみた。


 「あっっ」


と ここへ来る前の状況を思いだし  慌てて腹を見た。


 特に異常はない。


 「見間違いだったのか? 確かに腹の辺りから飛び出してきたよなぁ」


 「で 何処いった?」


と 辺りを見回してみるが、なんの気配もなく ただ 木々の間から注ぐ木漏れ日が 柔らかく、 そろそろ夕暮れ時に差し掛かってきているのを告げる。


 「なんか ここにいるのヤバくないか?」

 

 そう言えば ラノベ異世界ものって いきなり森とか草原とで目が覚めて 移動始めたらイノシシみたいな奴とかゴブリンに襲われるんだったよな。


 「異世界だったりして・・・ 」


 まさかね。  


 「とにかく  暗くなる前に安全なところを・・・」


 そこで俺は 視界に動くものを捉えた。

 なんの音もしなかったのに 5メートル程先にそいつはいた。

 まず目に付くのはその眼光の鋭さだ。

 敵意は感じない。

 こちらを観察するように じっと見ている。 

 俺は 息を潜め 逃げたほうがいいのか それともこのまま息を潜めたまま相手の出方を待つべきなのか迷う。


 見たところ 体は馬のようだし さほど大きくない。

 人間の子供なら乗せれるか位だ。

 光の加減なのか白ではなく薄いグレーに水色がかかったような色・・ブルーグレイ・・・そんな色の馬っていたっけ??

 首をかしげたので 頭に角があるのに気付く。

 伝説の生き物の一角獣? ん? ユニコーン? 


 「えっっっ」


 と 思わず声を出してしまっていた。

 すると ふいっと横をむき 走り去ってしまった。


 「あーあ 道聞けばよかった。」


 「てか やっぱ 異世界?」


 「やば! 流花さんとの約束 守れないんじゃ。」


 「・・・・・・」


 「ともかく 歩こう。」


 と 振り向いた。


 と そこには


 いた。


 それも 木の根に腰掛け 自分の足に肘をつき いかにも待ちくたびれたと言わんばかりの態度で。


 「やっと 気付いてくれた。」


 ご丁寧に 言葉まで発した。


 「なぜ 声をかけない?」


 「うん? 落ち着くのを待とうかと」


 「ここは異世界?」


 「はーい 正解!」


 「異世界に母親が付いてくるなんて 考えたことなかった。」


 「うーん  テンプレ? 味わいたいかなーと思って 声かけなかったのよ。

 この辺には 危険な魔物いないから 遭わせてあげれなかったけど、ユニコーンの子供は 可愛いでしょ。

  ユニコっていうのよ。

 あっ、 ついてきたんじゃなくて 一緒に来る予定だったの。

 本当はね ちゃんと説明してからの予定だったんだけど イワトビツバメちゃんが フライングしたのよ!!

 もう 大変だったんだから。」




 「予定だった?・・・・ つまり? 」


 「この異世界にお父さん いるのよ。」


 「この世界に 銃はあるの?」


 「ないなぁ」


 「それじゃあ 魔法は?」


 「あるよ!! ドラゴンもいるし神獣もいるし!怖くないよ!」


 「それじゃあ 弾丸が 飛び交う世界じゃ なかったんだ。」


 ホッとしたのか 力が抜けるような気が・・・・・


 「魔物はいるから 危険あるよ。」


 「ここは?」


 「ここは 神獣の森でね、彼らは私達には襲ってきたりしないから。

 颯ちゃんは この森で2,3日待ってて欲しいのよ。

 多分  動けないと思うから。

 私 急がないとそろそろやばいかも。 

 さっき ユニコーンが行った方角に湖があるから そこで待ってて。」


 そう言って 指を差す。


 「もし 迷ってもイワトビツバメちゃんが 案内してくれるから。

 あっ 名前つけてあげてね。

 あなたの パートナーなんだから。」



 そう言った瞬間 流花さんの懐から小さな光が飛び出した。

 そして フラフラとユニコーンが行った方へ飛び始めた。


 「あーっ 迷子になっちゃう!」


 そう言うと 追いかけて走り始め、


 「颯ちゃん ジャンプしてごらん!」


 と 笑いながら走って行ってしまった。




 「なっ・・・・・・・・・・・・・・・・・ なんだってー!

  魔法! ドラゴン! 神獣! 」



 「え゛ 待ってて?? え??  危なくないのか!・・・って 襲ってこないって言ってたな。

 でも それ以外は??・・・

 動けないって言ってたけど・・・

 なんで?・・・・

 はーぁ! 説明しろよな!

 なにが  ジャンプしてごらんだーーー!!」


 「って!!!!! 」


 こけました。


 ホップ ステップ で 思ってるより 飛んでる。

 その場でジャンプ!したら すごく飛んでる。普通に木の枝に飛び乗れるレベルだ。忍者か!

 走りだしてみると 5歩目で 足が縺れる。

 この世界では、以前と身体能力にかなりの齟齬があるようだ。

 確かに これは動けない。

 走ったら絶対コケる。

 2,3日と言うのもそういう意味もあるのか。

 仕方ないので 追いかけるのは諦めて、その湖のある方へゆっくりと歩くことにした。



 

 少し上を見上げ目をつぶる。


 そして 深呼吸をする。


 森の空気を目一杯吸う。


 何とも言えない 充足感。


 なぜか心が軽くなった気がして、歩き出す。


 5分と経たないうちに 水の匂いがして、我慢出来ずに小走りで駆け出していた。




 そこには 湖が広がっていた。


 湖の中程には 枯れた大木が何本も立っている。


 木の幹は 白っぽく 白樺みたいだ。


 「かなり古いんだろうな。」


 そして その向こうにはずっと森が広がっていて、先は見えない。


 「やばっ 見とれてる場合じゃないかも」


 白く霧が立ち込めてきている。

 

 右の方へいくとその森へと続いているようで、そちらから霧と共に冷気もやってくる。


 とその中から 先程見たユニコと同じ色で薄いブルーグレイのユニコーンが こちらを見ていた。


 そして ついてこいとでも言っているように歩き始めた。


 そっとついていくと 建物のシルエットが見えた。


  「やった。よかった。」


 が 近くまで来て 驚愕することになった。


 「なんで うちがあんの????」


 「なんでやねん!!」



 


 


 

 

 


 

 

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