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何だか異世界。

何で、金髪?

とか、自分で聞いておいて何だけど、ここは「何で獣耳?」が正解なんじゃないだろうか。

まあ、どちらにしても「月狼族」という回答は得られたわけだけど。

というか、何で言葉通じてるんだろう。チート?言語チートなの?

いや、体縮んでる時点でチート機能ないよね。

幼女とか、あるとすれば「可愛らしさ」だけだよ。チート機能ってやつは。


「無属性の精霊とは珍しいな・・。いや、目の色からすれば『火』か?」


ぽつりと呟かれた疑問には返事をしない。

うかつに答えてやぶへびにはなりたくない。

というか、あれなんですよね。どうやら異世界から来たみたいなんです。とか言ったほうがいいの?

でも異世界トリップというのがこの世界に常識として蔓延しているとは思いづらい。

ソレならば、このまま、精霊の子どものフリしていたほうが怪しまれないんじゃないだろうか。

あ、でも。実は精霊の子じゃないってバレたときのほうが大変なのかな。


そんなことを考えている間にも、青年はさくさくと険しい道を勝手知ったるものと歩いていく。

やっぱり足が長いって特だよね。

私みたいな幼児の足では到底、人がいるところまでたどり着くことなんてできなかったよ。

人・・人で良いのかな。ちゃんと獣人って呼ぶべき?

まさかこの世界には人族なんて存在しないぞ的な展開?


「よー、ルシアン。何だソレ。精霊の子か?」


気づけば、木造の家が並ぶどこかの集落のような場所に出ていた。

その家の一つから出てきた、私を抱える金髪青年と同年代くらいの男性が近づいてくる。

そしてやっぱり、頭上には獣耳。

髪も多少ルシアンのほうが濃いが金色だ。


「ああ、ギルベルトか」

「どこに行ったかと思えば、精霊の子を連れ帰るとは。精霊の怒りを買うぞ」

「いや、連れ去って来たわけじゃない。拾ったんだ。迷子らしい」


私の頭上で何が何だか分からないやり取りがされていく。

返事とかしたほうが良い?でも、今の段階で私ができる返事とすれば「イエス」しかない。

ノーと言って墓穴を掘りたくないからだ。

「迷子?!親はどうした、親は!精霊が我が子を見失うはずがない」


迷子、という単語に思わぬ過剰反応を見せるギルベルト。


「どこかの森から飛ばされたらしい。自分のいた森の名前も分からないらしい」

「・・飛ばされたって、誰かが故意にやったってことか」


頭上で交わされる何が何だか分からない会話をただ聞き流す。

・・親って?精霊って親から生まれるの?初耳だ。

まあ確かに、親がいなければどうやって誕生するかって話だけど、精霊って誕生するのではなく発生するんだと思っていた。


「ヒト族が関わってるに違いない。この子からヒト族の臭いがする」

「何てことだ」


何てことだ。私から人の臭いが?

てか、当たり前じゃん。人間だからね。

そろそろ言うべき?私は精霊の子じゃないです、人間ですって。

でも、この感じだと人間に対して良い印象を抱いていないみたい。


「しかし、白い髪とは珍しいな」

「ああ、そうだな。まさか無属性ではないと思うが、長老に話しを通しておこうと思っている」

「それが良いかもしれないな」


私がぼんやりとしている間にどんどん話が進行していく。


「ところで、お前、名前は?」


私を抱えている金髪、ルシアンに聞かれて首を傾ぐ。

本名言って大丈夫?セオリー通りだと名乗ったら魂を縛られるとか、そういった厨二設定なんじゃないの?

訝しんでいると、


「俺の名はルシアンだ。こいつがギルベルト」


先に名乗られた。てか、知ってるよ。さっきから名前出てたもんね。それは本名?呼び名ですか?


「警戒してる」


ギルベルトが興味深そうに笑った。


「やっぱり精霊の子は聡明なんだな」


え、そうなん?!どういう設定なの、精霊の子・・

私、あんまり頭良くないんだけど。このままこの設定でいって大丈夫かな。


「お前の親はお前のことなんて言ってたんだ?」

ギルベルトが私の頭を撫でながら聞いてくる。優しい声音だ。

親、と言えば、母親か。

あの人、私のこと何て呼んでたっけ。ああ。確か、


「あんた」

「は?」

「あんたって言ってた」


うんうん、と一人納得しながら答えるとしんと静まり返る二人。

何?と顔を上げると、ルシアンは何だか悲しそうな顔をしていた。


「精霊が我が子に名を与えないなんて」

「何ということだ」


なんということだ(二回目)

名前がないという勘違いをされている?!


「・・いや、違うぞきっと」


ギルベルトがはっと息を呑んだようにして言った。

ルシアンは返事もしないまま、ギルベルトの言葉を待つ。


「きっと人族に親から引き離されたんだ」

「・・ああ、そういうことか。召還されてしまったんだな・・」


えーーー!そんな展開?!驚きすぎてもう言葉も出ないよ!

今更、訂正もできない気がする!

背中に汗が浮くのが分かった。このままじゃ私、ただのうそつきじゃない?!


どうしよう、どうしよう、と私が一人であわあわしている間にも、ルシアンとギルベルトの足は止まらない。

二人で色々、私についての推論を交わしながら、すごく同情的に話しを進めている。

ちが、違うよ!と何度か口をついて出そうになったのだが、二人の邪魔をするのも忍びなく(というのは言い訳)結局、口を噤んでいることにした。

やぶへび、やぶへび。


そんなこんなしている間に、集落の中でも一番大きな家に辿り着いた。

その間にも、色んな形の耳が付いた色んな人とすれ違ったのだけれど、皆、口々に、

「精霊の子だ」「精霊の子よ」って言っていた。

私、どんだけ精霊の子なの?


「あ、ルシアン様。ギルベルト様」


ヨーロッパ圏内で見かけるようなログハウスに似ている家だ。

玄関ポーチになぜか二人乗りくらいのブランコが設置されている。

子供用だろうか。

その木製の大きな扉に掛かる金属のノッカーにルシアンが触れようとしたとき、背後から女性の声が聞こえた。

私を抱えたまま器用に振り返るルシアン。


そこには、ふわふわのウサ耳を付けた若い女性が立っていた。

褐色の小さな顔に白い耳がよく生えている。

黒い髪からにょっきり生えているので目立ってしょうがない。そこは白い髪じゃないのね?

格好はいかにもなメイド服だ。可愛い。

そう、これ!これだよ。私が求めていたものは。

やっぱり獣耳と言えば、美少女に付いてるものだって!


「長老に会いに来たんだが」


ルシアンが淡々と答える。

美少女に対してちょっと冷たい気がする。


「あ、はい。ちょっとお待ちください。あの、中でお待ちしますか?」


シャラランという効果音がしそうな可愛い仕草で首を傾いだ美少女にルシアンは「ああ」とぶっきらぼうに答える。

何だよ、それ。もうちょっと愛想よくしろよ。と、思わず悪態つきそうになる。

そのとき、ふと、美少女と目が合う。


「まあ!何てお可愛いらしい!精霊の子ですね!」

「ああ、なるべく早く村長に会いたいのだが」

「かしこまりました!すぐ呼んで来ます!」


扉に鍵を差し込みながら元気良く答えるウサ耳美少女。

どうぞどうぞ、と言われて中に足を踏み入れると、

「誰もいないですけど奥の客間でお待ちください!」とどこかへ飛んでいくウサ耳美少女。

ウサギ属性だから?すごい素早い。

というか、勝手に部屋に入っていいのね。

比較的、治安は良さそうだ。


「でもさ、名前ないと不便だよね」

「確かに。ギルベルト、名付け親になるか?」

「まさか!精霊の名付け親になれるほどの器はないよ!そういうのはルシアン向きだって」

「俺だって、精霊の名付け親になれるほどは・・」


いかん、このままでは勝手に名づけられてしまいそうだ。

どうしよう。とりあえずあだ名みたいなの言っとけば大丈夫、か?

寿々音だから、スズとかスーちゃんとか?スズリン?

そういえばあだ名とかで呼ばれたことないかも。

うーん。そもそもあれか。名字さえ黙っとけば大丈夫じゃない?


「すずね」


思わず、口から零れた自分の名前にはっと息を付くと、


「スズネ?それがお前の名か」


一度口にしただけなのに聞き逃すことをしなかったルシアンがこちらに目線を合わせる。

肯くと、


「何だ、名前あるんじゃん。良かったー」と、ギルベルトが心底ほっとしたように笑う。

うう、罪悪感。ほんとすみません。


「誰が名づけ親だ?」


すとんと床に降ろされてルシアンが怪訝そうに首を傾ぐ。

名づけ親?多分、母親じゃない気がする。顔も知らない父親じゃないだろうか。でも、


「分からない」


正直に答えると、ますます渋面を作るルシアンとギルベルト。


「いかんな、このままじゃ」


再びルシアンに抱えられて、廊下を進んだ奥の部屋に通される。

間取りを知っているところから見ると、この家を訪ねるのは初めてではないのだろう。


「だいたい、その格好はなんだ。どこの国のものだ?」


ギルベルトに問われて自分の格好を改めて見下ろす。


で、ですよねー!






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