がんばれよ
サマザンに優しく介抱されたティアは、
彼に恋心を抱くようなる・・・
「ハーマン!あんた気は確かかい!?」
マーリンは声を荒げて聞いた。
横の部屋にはわずか9歳の裸の子供の姿
その体には情事の後の赤い模様。
だがその模様が実の父に殴られた跡をかき消してくれていた。
「ハーマン!あんた、ガキは放っておけ!
なんて言っておいて!その子供になんて事するんだい!
もしもの事があったらどうしてくれるんだ!?」
サマザンはただ黙っていた。
隣の部屋で、ティアはかき消された父の傷跡を見て、満足そうにほほ笑んだ。
サマザンはちょこんとティアの隣りに座った
「がんばれよ、ティア」
そっ・・・とティアの髪をなでる。
「俺も子供の頃、親父に殴られ続けてここへ逃げてきた
その時、偶然マーリンがいて俺を拾ってくれたんだ。だからお前の気持は痛いほどよく分かる」
ティアは無言のまま聞いていたがハーマンの手にそっ・・・と触れた。
「ハーマン・・・ハーマン・・・ハーマン」
ティアは無邪気にサマザンの手をペチペチと叩いた。
サマザンはボーゼンとしていたがふっと笑ってティアの手に自分の手を重ねた。
「ハーマン!あんたまだティアの傍にいるたのかい!
この子にはもう手をださないでおくれよ!女好きだとは思っていたがね、子供にまで手をだすとは思っていなかったよ!このドアホ!」
「まだガキさ、すぐ忘れるだろ、じいさん」
「あたしが言ってることはそういう事じゃないんだよ!「もしも」のことがあったらどうするのかって聞いてんだ!」
「ガキがガキを産むわけないわけないだろーが!」
「あんたには恋人がたくさんいるだろーが!女好き!」
「わーった、わーったよ。うるせーな」
その時、ティアが起きてきた。
「・・・おお!ティア、お前・・・起き上がれたのかい!?体は大丈夫なのかい?傷は?痛みは?
何か食べるかい?」
「・・・・りんご・・」
「分かった。りんごだね。今とってくるからここでおとなしく待ってるんだよ。」
マーリンは畑にりんごをとりに行った。
サマザンもそれを手伝うはめになった。
「思い出すねぇ、ハーマン。あんたもティアくらいの時だっけか?ここに逃げて来たのは・・・」
「ああ、そうだったな。だがじじぃ、なんだ急に?」
「ただ思い出したんだよ、あんたも9つくらいの時にあたしの所へ来て「助けて!」って叫んでたなーと思って
だからあの子を放っておけなかったんだろ?
同情するのはおよしよ、あの子が大人になったら変な誤解をまねく」
「ふん!今は純粋でも、大人になったらそこいら辺のバカな女どもみたいに変に外見だけ着飾るようになるんだろ。
今だけさ・・・」
「あんた、女好きなのか女嫌いなのか分かりゃしないね。」
「・・・女は皆好きさ、どいつもこいつも同じで扱いやすいからな、とくにここ(スラム)の女達は格別に扱いやすいな。
寝ればそれで男は自分のモノになったと思いこむ・・・、バカな連中さ」
「屈折してるねぇ」
「お褒めの言葉として受けとっとくぜ」
サマザンはティアにりんごの切ったものを持っていった。
「ほらティア、りんごだ。この俺が持って来たんだ、心して食え」
ティアはそう・・・とサマザンの頬っぺたに触れた
「ハーマン、ハーマン!」
キャッキャッと嬉しそうに彼の頬をペチペチと叩いた。
「・・・・・お前、変なヤツだよなぁ。俺はお前を・・・もういいか!」
サマザンはティアのその手を嬉しそうに掴んだ。
サマザンとティアは町に買い出しに行っていた
「ガキと一緒に買い物してたら女が寄り付かなくなるぜ」
サマザンはぶつぶつと独り言をつぶやいていた。
ティアはまるで初めてみるような感じで町をキョロキョロと動き回っていたが
サマザンから離れる事はなかった
ティアはサマザンの手をじーーっと見つめ、手を握ろうとしたが
サマザンは片手に持っていた袋を握り返してしまった。
「・・・・っ」
ティアは残念そうに自分の手を見つめた
「おい、ティア。少し離れて歩け!俺のガキだと思われちまうだろーが」
「!?」
ティアはびっくりした
いくら流れでとはいえ、自分を抱いてくれた時は優しかったのに
今はまるで別人のようである。
「・・・・」
ティアは残念そうに少しだけ離れて歩いた
「ハーマン・・・」
「何だ」
「・・・手・・・・繋ぎたい・・」
「!?」
サマザンはびっくりしたが
照れたように頭をボリボリとかき
袋を持っていた手をしかたなくティアにさしだした
「ほら・・」
「!」
ティアは満面の笑みを浮かべた
そしてその手に飛びついて自分の手を重ねた
「おい、ティア」
「?」
「お前の父ちゃん何て名前だ」
「・・・ベン」
「犬みてーな名前だな」
「・・・・」
「・・・父ちゃんの事嫌いか?」
「ううん」
「お前を殴ったやつだぞ!なんで嫌いにならねぇ?」
「・・・悪かったの・・・私。父さん本当はいい人だった・・」
「何だそれ」
「父さん、私にとても優しかった・・・でも、お母さん死んでから・・お酒、いっぱい飲んで・・・私を、ぶつようになった・・」
「それでなんでお前が悪い事になるんだよ」
「・・お母さん、私をかばって死んだ。私のせい・・・・」
「なるほど、それで父ちゃん変わっちまったってわけか」
サマザンは足を止めた
ティアとの握った手に力が入る
「俺と同じだな、お前も」
「?」
ティアはきょとんとした
「なんでもねーよ、おら、ちゃっちゃと歩け」
サマザンは急に早足になった
ティアはそれについていこうと必至だったが足をとられ転んでしまった
「あーあ。これだからガキは・・・」
サマザンは呆れた
「おら、見してみろ」
ティアはあまり痛そうにしなかった
「ハーマン・・・かがんで・・・」
「?何だよ」
サマザンはティアの言うとおりしぶしぶかがんだ。
チュッ
ティアはサマザンの頬に小さくキスをした
ティアは満面の笑みを浮かべている
サマザンはキスされた頬に手をあて、顔を真赤にして言った
「お前・・・」