感覚が消える時
掲載日:2026/02/07
高速道路を快適に走行していたはずだった。
県境に差し掛かったころ、視界がうっすらと白くなった。
何かの煙だろうかと思った。
白はすぐに濃くなり、前方が消えた。
四方八方が見えなくなるまで、五分もかかっていない。
今、自分は高速道路を走っている。
止まれば追突される。
だが、走り続けるのも不安だった。
何も見えない。
せいぜい三十センチ先の、白い霧だけ。
前の車も見えない。
手だけが震えた。
それでもハンドルは握り続けなければならなかった。
止まれない。
しかし、走りたくもない。
――
ブラックアウトは、もっと簡単だった。
真っ暗な中で目を覚ました。
いつもそこにあるはずのパソコンの位置が分からない。
手探りで動き回るうちに、自分がどちらを向いているのかも分からなくなった。
何かにぶつかった。
確かだと思っていた感覚が、消えていた。
人は、こんなにも簡単に陥る。
その状態に。
平和な日常の中で、それは静かに始まる。




