第4話 関ヶ原地下
関ヶ原の地下は、
地上よりも静かだった。
夜明け前。
町外れの雑木林に、
一台のワゴン車が止まる。
エンジンが切られ、
闇が戻る。
「……ここから先は、
公式の地図には存在しません」
懐中電灯を手に先導するのは、
関口直哉だった。
足元の鉄板を外すと、
冷たい空気が吹き上がってくる。
――地下へ続く、口。
⸻
階段を降りるにつれ、
壁のコンクリートが古くなっていく。
「戦後すぐ、
この辺り一帯は国主導で掘り返された」
直哉の声が、
低く反響する。
「理由は公表されなかった。
でも、工事に関わった人間は
口を揃えてこう言ってた」
足を止め、
振り返る。
「“地面が、おかしい”」
⸻
神谷圭吾は、
壁に手を当てた。
「……歪んでる」
肉眼では分からない。
だが、指先に伝わる感触が、
地層のズレを語っていた。
「これは、
自然に出来た空洞じゃない」
「人為的だな」
柴崎剛志が、
天井を見上げる。
「だが、
爆破の痕跡がない」
村雨玄蔵は、
持参した金属探知器を下ろし、
低く唸った。
「……鉄の密度が、異常だ」
⸻
最深部に近づいた時、
玲奈が立ち止まった。
「待って」
彼女は、
タブレットの数値を示す。
「ここ、
確率が歪んでる」
全員が顔を向ける。
「私のモデルだと、
この地点だけ
未来の分岐が増えすぎてる」
三枝美波が、
静かに言った。
「……選択肢が多すぎる場所は、
だいたい危険ね」
⸻
最深部。
そこには、
巨大な空洞が広がっていた。
天井には、
見覚えのない金属フレーム。
床には、
用途不明の基礎構造。
「これ……
戦後の技術じゃない」
柴崎の声が、
わずかに震える。
神谷が、
ゆっくりと答えた。
「いや……
戦前でもない」
全員が、
息を呑む。
⸻
その時。
玲奈のタブレットが、
警告音を鳴らした。
「……来る」
同時に、
地下全体が、
わずかに――揺れた。
地震ではない。
爆音もない。
“引っ張られる感覚”。
「上だ」
神谷が、
天井を見上げる。
「空から、
何かが……反応してる」
村雨は、
拳を握りしめた。
「鉄が、
呼ばれている」
⸻
三枝美波が、
皆を見回す。
「ここまで来て、
まだ言ってないことがある人」
沈黙。
だが、
誰も否定しなかった。
直哉が、
ぽつりと呟く。
「……この場所、
昔から“掘ると戻れない”って
言われてました」
その瞬間、
奥の壁面が、
低い音を立てて動いた。
隠されていた、
もう一つの空間。
そして、
そこにあったのは――
人類のものとは思えない、
巨大な金属構造体だった。
⸻
Project SEKIGAHARAは、
この瞬間、
未知の領域に足を踏み入れた。
そして、
6人はまだ知らない。
この地下構造こそが、
小惑星KA-47を
“地球と結びつけている”
本当の理由だということを。




