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第50話 ― 爆心に立つ二つの影

第50話 ― 爆心に立つ二つの影



都市の破滅は、完全に始まっていた。


空は歪み、地はうめき、

黒紅の風が都市全域を荒れ狂った。


その気配はすでに都市の境界を越え、

近隣の都市国家にまで揺らぎを与えていた。

遠く離れた都市の塔が軋み、

空を裂くはずの金色の鳥たちですら方向を失い、虚空へと落下した。


暴風は息をすることすら困難なほどだった。

己の身体を支えることさえ難しい強風が、少年を襲った。


少年は倒れそうな身体をどうにか支え、

口元から流れた血を手の甲で拭った。


「……ぐっ……はぁ……もう少し……。」


崩れ落ちる肺の奥で、何かが裂ける音がしたが、

少年は顔を上げた。


「……あと少し。

発動……完全に起きてからじゃないと……。」


自分の身体などもはや構っていられなかった。

いまの瞬間を逃せば、すべての計画が瓦解することを

少年は分かっていた。


その時——


狂気の乱流の中で、

誰かが傍らに立っている気配を感じた。


少年は微笑み、そちらへ顎を向けた。


「そこの……お綺麗なお方。」

「初対面ですが、少し手伝っていただけませんか?」


隣に立つ者は、

いつからそこにいたのか分からないほど静かだった。


深くマントをまとい、

精巧な兜を深く被ったまま、

少年を見つめていた。


暴風の中でも揺らぎ一つない態度。

明らかに常人の域を超えた存在だった。


彼はしばらく少年を見つめ、

くつくつと笑って言った。


「おや、気づかれていたか? へへ……。」

「本当に普通じゃない美少年だね。

ここまでとは思わなかったよ。ははは。」


声には余裕と自信が満ちていた。


「まさかアラヤの友が

この程度……いや、このレベルだったとは……。」


彼は首をかしげ、問いを投げた。


「君は……何者だ?」


少年はその問いを聞き、肩をすくめるように笑った。


「おや?」

「貴族社会では、誰かの身分を問う前に

まず自ら名乗るのが礼儀ではありませんか?」


兜の奥で、

正体不明の者の口元が大きく吊り上がった。


「ははははは!!」


暴風のただ中でも響き渡る豪快な笑い。


「面白いね、坊や。」

「歳はそう離れていないようだけど……。」

「いいだろう。まずは“呼べる名前”くらいは教えておこうじゃないか。」


彼は手を上げ、

被っていた兜をゆっくりと外し始めた。


甲冑が外れる金属音——

黒紅の霧を貫いて差し込む光——


そして、露わになる素顔。


いま、都市の爆心で、

また一人の重要な人物が姿を現そうとしていた。

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