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第46話

第46話



少年は計画どおり、

伝令たちを各占領地へと走らせた。


彼らの手には、

少年が加工した正体不明の鉱石が握られており、


少年は短く、しかし鋭く指示した。


「指定された位置に正確に設置してください。

そして一定の半径の外へ――

絶対に内へ戻らず、そのまま逃げてください。」


伝令たちは彼の眼差しから、

冗談も曖昧さも一切存在しないことを悟り、

深く頭を下げると、素早く散っていった。


そしてしばらくして――


都市全体が震えた。


遠くから響く轟音、

大地の深層から這い上がる脈動。


これまでの炎、戦闘、混乱とは

まったく次元の異なる気配だった。


ロイドは一瞬、息を呑んだ。


「……何だ、この気配は……?」


少年の髪が揺れるほど強烈な波動が通り過ぎた。


少年は周囲を確認し、静かに言った。


「まずは……見通しのいい、この広場で一番高い場所へ上がりましょう。」


ロイドは無言で頷いた。


二人は瓦礫と灰を跳び越え、

赤い煙が渦巻く中で最も高い地点――

崩れ落ちた高塔の残骸へと到達した。


風が力強く吹き抜ける。


ロイドは計画上の重要拠点を眺めた。


「……他の者たちも、ほぼ準備を終えたようだな。」


しかし、すぐにその表情が硬直した。


少年の視線が一点に固定されていた。


「ご覧ください。」


ロイドがその視線を追うと、

指定区域の一部の隊員たちが

少年が定めた境界ラインの“内側”へ入っていた。


「確かに、できるだけ遠く外へ逃げろと言ったはずなんだが……」


少年は息を整え、言った。


「ロイドさん。

これからすべきことは三つです。」


少年の表情は幼さを脱ぎ、

専門家そのものの冷徹さを帯びていた。


「一つ目。」


「最重要地点――

私が座標で伝えた核心部へ、あなた自身が行ってください。」


ロイドは深く息を吸い込んだ。


「二つ目。」


少年はロイドを見据えた。


「ここみたいに一番高い地点から、

あの有名な《黄金の獅子の咆哮》を放ってください。」


ロイドは眉を寄せた。


少年は続けた。


「そうすれば、この領域内でまだ生きている者たちは

本能的に“避難信号”として受け取ります。

可能な限り外へ、危険区域から離れようとするはずです。」


少年の声は静かだが、確信を宿していた。


「被害を最小限にすることが最も大切です。」


「三つ目。」


少年は都市の外、地平線の向こうを指差した。


「彼らを導いて……できるだけ遠くへ逃がしてください。

援護してくれる協力者がいれば、もちろん理想的ですが

今はこれが限界です。」


少年は再びロイドを見た。


「まずは、一つ目の任務から始めましょう。」


ロイドは鉱石から広がる異様な気配と

都市全体を包む超現実的な波動を見つめ、


しばらく言葉を失っていたが……


やがて、静かに頷いた。


「……わかった。

今からお前の言うとおりに動こう。」


少年は静かに微笑んだ。


その微笑の背後で、

都市の地下深く――

巨大な何かが目覚めようと蠢いていた。

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