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第43話

第43話



少年は、淡い光が滲み出る洞窟の奥深くで、

ついに探し求めていた鉱石を見つけた。


「……運が良かったですね。」


彼はすぐに鉱石を一つずつ採取し始めた。

手のひらほどのものから、前腕ほどの長さのものまで、

いくつかを慎重に集めて足元に積み上げた。


しかし少年は、それらを一つずつ手に取り、

軽く叩いて内部構造を確かめた。


「……この程度の質では、使い物になりませんね。」


結局、採集した鉱石をそっと地面に戻すと、

さらに奥へと歩を進めた。


「……無意味な行動だったのでしょうか。」


その瞬間だった。


少年の頭の中を、

正体の分からない声が貫いた。


―― 無意味な行動なんて、ひとつもないよ。


少年は息が止まりそうになるほど凍りついた。


「……記憶の残滓、でしょうか。」


彼は慌てて周囲を見渡した。

洞窟は静まり返り、

響くのは水滴の落ちる音だけだった。


「……空耳、ですか。

疲れすぎているんでしょうね。」


それでも、

胸は強く脈打ち、

理由もなく涙がこぼれ落ちた。


少年は震える呼吸を整え、

自分を無理やり落ち着かせようとした。


「……焦れば焦るほど、見落とすものです。」


そっと目を閉じ、

傷だらけの身体を押さえながら再び歩き始める。


「落ち着いて……

もう一度、探しましょう。」


少年はゆっくりと、しかし確かな足取りで

洞窟のより深い闇へと進んでいった。


そして――


遥か彼方、

揺らめく水の光の向こう側に、

一筋の銀色の輝きが見えた。


近づくにつれて、

その光は突然大きくなり、

洞窟の壁全体を照らし出した。


少年は息を呑んだ。


そこには、

これまで見てきたどんな鉱石とも比べものにならない、

巨大な鉱脈が荘厳な姿でそびえ立っていた。

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