第42話
第42話
少年はふと足を止めた。
その眼前には、
化石なのか、骨なのか判別のつかない、
古びた“何か”が静かに横たわっていた。
少年は一瞬目を見開き、
衝撃を受けたように頭を押さえた。
「……妙ですね。
この感覚……“異質さ”というべきでしょうか。
どうにも胸の奥がざわつきます。」
彼は周囲を観察しながら、静かに言葉を続けた。
「誰かが……遥か昔、
この鉱石を掘りに来て、
後ろの岩が崩れて……
そのまま閉じ込められて死んだのでしょう。
この地下水は、そのずっと後に生まれたはず……。」
少年はもう一度、その骨を見つめた。
「この骨……
今の帝国史とは比べものにならないほど古い、
太古の遺骸……。」
そのとき少年は、自分の右手を見て動きを止めた。
気づけば、考え事をしている間に
無意識に力が入り──
手の中の骨を砕いてしまっていた。
少年は驚愕の表情で
指先と、砕け散った破片を見比べた。
そして、ゆっくりと水辺へ歩み寄り、
流れる水面に映る自分の顔を覗き込んだ。
「……私は、なぜこんな表情をしているのでしょう。
これは……悲しみ? それとも怒り……?」
少年は小さく息を整え、
乱れた心を締め直すように目を閉じた。
その後、再び骨があった場所へ戻り、
静かに頭を垂れてその魂に祈りを捧げた。
そして歩き出す。
遠くで──
淡く、美しい光がいくつも瞬いていた。
少年はその輝きへと歩を進める。
そこには──
彼が探し求めていた鉱石があった。




